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第一章 初戦

第一章 初戦 4

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「そいつは確かに気になるな。どれ、俺たちも見させてもらうとするか」

世璋たち4人は人混みの中へと分け入り、通りの様子に目を向ける。

通りでは、がっちりとした体格の髭面の男と幼い小柄な少年が、地面に置かれた深緑色の大きな風呂敷を挟んで対峙していた。

髭面の男は黒髪をカタカシラに結っており、縦縞模様が入った萱草かんぞう色の着物と同色の細帯を身に着けている。

幼い少年は黒髪をカンプーに結っており、柿色の着物と同色の細帯を身に着けていた。

広げられた風呂敷の上には、白を基調として青い双魚文様が描かれている陶製の小さな壺が、割れた状態で放置されている。

髭面の男は割れた壺を指差しながら、幼い少年を睨み付けていた。

「おい、このくそガキ。どうしてくれんだ、これよぉ? てめぇの責任で弁償できんのか? あ?」

「ご、ごめんなさい」

幼い少年は今にも泣きそうな表情を浮かべ、ただただ俯いている。

すると、そこへ黒髪をカタカシラに結った別の若い男が現れた。

若い男は白茶色の着物と同色の細帯を身に着けており、髭面の男に向かって恐る恐る声を掛ける。

「あ、あの……うちの息子が何か……?」

「おう、お前がこいつの父親か。このガキが後ろから俺にぶつかってきたせいでなぁ、大事な壺が割れちまったんだよ。この壺、いくらしたと思ってんだ? 4円だぞ。こうなった以上は、きっちり弁償してもらわねぇとなぁ」

「も、申し訳ございません! わたしがこの子から目を離してしまったばっかりに……! どうか、お許しください! 今すぐに全額お支払いすることはできませんが、必ず弁償させていただきますので、どうか今日のところはご勘弁を……!」
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