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70 3人の夢

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舟に荷物を置きっぱなしにして、そのままパクられてしまったと思しき、

ちょっと残念系な感じのお姉さん3人組

対岸まで送ってほしいという彼女たちのご要望にはお答えできませんが、

今晩一緒に野営することを提案してみました


「それじゃあ、明日の朝まで、一緒に野営、しませんか?」

黒茶金「「「いいの(ですか)?」」」

「もちろん。でもタダって訳にはいきませんよ?」

黒「い、いくらなの?」

「いいえ、お金はいりません」

茶「え? それじゃ、物納?」

「いいえ、ワタシが欲しいのは情報です」

金「情報?」

「ですです」
「町のお話とか、いろいろ教えてくださいな?」

黒茶金「「「そんなのでいいの(ですか)?」」」


そんな感じで、合同キャンプ開催です

大柄なお姉さんたち3人

3人とも、ジェニー姐さんよりもちょっと背が高い感じです

(これはきっと、たくさん召し上がることでしょう)
(ということで、お夕飯は、安くて、簡単なモノにしましょう)

そんなことを考えていると、ジェニー姐さんがヒソヒソと話しかけてきます

「スキニー、今晩は私の持ち合わせで夕食にしましょ?」

「え? ジェニー姐さんがお食事を準備するのです?」

「そう。彼女たちの人となり、まだ判断できないでしょ?」
「だから、もう少し彼女たちの様子を見たいのよ」
「まあ、大丈夫だとは思うのだけど、念のためね?」

「様子見です?」

「ええ。あなたの持ち物を見せても問題ない人物か確認しましょ?」
「その辺の判断は、しばらく雑談をしていれば分かるでしょうから」

「了解なのです」



ということで、今晩のお夕飯は、ジェニー姐さんが用意することになりました

何気にワタシ、自分以外のひとが用意した食べ物、初体験です


ジェニー姐さんが用意してくれた食べ物は、

手のひらサイズの薄い乾パンにプロセスチーズと厚切りベーコンのようなお肉、

そして葉野菜を挟んだサンドでした

飲み物はちょっと薄めのコーヒー的なモノ

(これは、タンポポコーヒーに近い、かも?)


乾パンはちょっと歯ごたえがアレでしたが、お味はまずまず

チーズは少し香りに癖がある感じで、厚切りベーコンは黒コショウがいいアクセントになっています

葉野菜が意外とシャキシャキとしていて、美味しくいただくことができました

ワタシ以外の皆さんも、静かに黙々と食べています

(野菜が新鮮なのは、魔法的な何かなのかな?)
(意外と美味しくて、ペロっと食べちゃった)
(でもちょっと物足りない感じがするかも)
(ワタシ、朝昼晩の食事の中で、特にお夕飯を一番重視していたからなぁ~)
(まあ、今晩だけだし、しょうがないよね)

そんなことを考えていると、ジェニー姐さんと目が合いました

その眼差しはちょっと寂しさというか、もの悲しさというか、

少なくとも、嬉しさや満たされたような感情は感じられません

(あ~、これはアレですね~)
(ジェニー姐さんが一番、お夕飯にご不満なんだね~)

自分で用意した夕食に一番失望している感じのジェニー姐さん

まるで、食後に上目使いで物足りなさをアピールする大型わんこのようです

(ワタシ、ちょっと姐さんを餌付けしすぎてしまったかもです)
(う~ん、しょうがないから、こっそりデザートでも用意しようかな?)
(もちろん、ワタシの分も)
(普通にありそうで目立たない食べ物なら、大丈夫でしょ?)


そんなことを考えていたら、サービス満点、営業のスズキさんがチョイスしてくれました

『お客様すいませ~ん』
『こんなのいかがでしょ~』



【焼き芋 紅〇ずま 50円】


これはアレです。いつも行くスーパーの閉店時間間際のディスカウント価格の焼き芋です

定価はたしか、1本198円のはずのヤツです

駄菓子菓子だがしかし、売れ残りだと甘く見てはいけません

焼き芋専用の石焼ガマに一日中入れっぱなしだった【紅〇ずま】

ほどよく焼けて、更に加熱され続けることにより、

外は香ばしく、中はとろっとろでアッツアツに

むしろ定価より値段を上げてもいいんじゃない? と思わせるような逸品です

(お芋さんって、長時間温めると、本当にとろっとろになるよね~)
(もう、はちみつなんじゃない? って思うぐらいには甘トロなんだよね~、これ)


そんな感じで即購入

もちろん、3人の残念系お姉ちゃんズの分もご用意です

「ジェニー姐さん、これ、デザート食べましょ?」
「もちろん、そちらのお三方の分もありますよ?」

そう言って、茶色い紙袋に入った、アツアツの【紅〇ずま】を手渡していきます

「ん? なあに? これ」

「焼いたお芋さんです」
「甘くてアツアツとろとろで、おいし~ですよ?」

黒茶金「「「甘いもの!」」」

ジェニー姐さんよりも早く、お姉ちゃんズが反応します

そして、ソッコー食べ始める3人

黒茶金「「「ハフハフハフ・・・」」」
黒茶金「「「あっま~~い!」」」

どこかで聞いたことがあるセリフを絶叫するお三方

ん?
お笑い?
いとだ?


黒「うっひょ~、うんまいっこれ!」

茶「おいし~、あま~い! もう、ほんとおいし~!」

金「すっご~い! いくらでも食べられる!」


先程までのお夕飯の時とは打って変わり、急にきゃぴきゃぴし始めたお姉ちゃんズ

ジェニー姐さんも

「なにこれ? こんなに甘いお芋、食べたことがないわ」
「はちみつでも練り込んだあるみたい」
「それにあなたの言うとおり、とろっとろで口の中で溶けてしまうわ!」

「でしょでしょ? ワタシ、これ、大好きなんです」


そんな感じで、急遽焼き芋パーティーが始まりました

デザートとして1本ずつでいいかな? と思っていたのですが、

皆さん、キャッキャしながら食べる食べる

結局トータル15本購入しました

(ワタシは1本で十分満足です)



そんなこともあり、場が温まったところで、いよいよ情報収集開始です

お姉ちゃんズのお話を聞くと、お三方は小さい頃からの幼馴染のようです

ちなみに3人の自己紹介をまとめると、こんな感じ


黒髪:クロエ(17歳)ちょっとボーイッシュな感じです
 ワンちゃんの獣人族さん
 捜索系がお得意(特にニオイ系)
 5人兄弟の次女(第4子) 兄2人と姉と妹がいる


茶髪:ケイト(20歳)言葉遣いは丁寧です
 メガネな人族さん
 実家は商店を営んでいる
 3人兄弟の次女(末っ子) 兄と姉がいる


金髪:プリシラ(19歳)お嬢様チックな口調です
 女性騎士っぽい人族さん
 実家は騎士爵家の筆頭従士
 3人兄弟の長女(第1子) 弟が2人いる



更に身の上話を聞いてみると、

彼女たち3人は現在、商業ギルドに加入するための資金を稼いでいるとのこと

商業ギルドに加入し、商会を設立するには、最低小金貨8枚が必要で、

そのためにいろいろな依頼をこなしている最中、

そんな感じなお話でした


クロエ「個人が商業ギルドに加入するには、登録料小金貨1枚とられるんだ」

ケイト「商会の設立には、その届出料として、小金貨5枚なんです」

プリシラ「合計で小金貨8枚ということなの」


それを聞いて、ワタシは素朴な疑問を聞いてみます

「そもそもなぜ、商業ギルドに加入するんです?」
「商業ギルドに加入しないと、商売できないんです?」

ケイト「いいえ。そうではないんですけど、実質的に無理って感じかな?」

「実質的に?」

ケイト「そう。商業ギルドに加入していないと、商業ギルドに加入しているお店と取引できないの」

「なるほどです。つまり、ハブられるわけですね?」

ケイト「そうなの。だから実質的に商業ギルド加入は必須なの」

クロエ「アタイたちは自分たちのお店を持つのが夢なんだ」

プリシラ「そう、ケイトを商会長にしてね」


(仲良し3人組でお店を持つ)
(その目標に向かって力を合わせてガンバっている)
(なんだか楽しそうというか、夢があっていいですね~)


そんなことを思いながら、港町に着いてからのことが気になったので、

ジェニー姐さんに確認してみることにします

「ところでジェニー姐さん、港町に着いたら、また薬店やるのです?」

「いいえ、やらないわよ。というより、できない、と言った方がいいのかしらね?」

「できない、です?」

「そう。薬師は街ごとに営業登録しているの」
「私は聖都の登録薬師だから、聖都以外の町中では営業できないのよ」
「まあ、野外なら問題ないのだけれどね」

「そうなんですね~」
「港町ではワタシ、薬店の助手、できないんですね~」
「それじゃあワタシ、港町に着いたら、なにか別の時間つぶし的なこと、探さないとですね~」
「でもしばらくは体を動かす系はダメだし、なにか商売的なこと、してみようかなぁ~」

そんなことをわざとらしく独り言ちながら、ジェニー姐さんのお顔を伺います

ワタシの視線の意味を理解してくれたのか、ジェニー姐さんが大きくうなずいてくれました

(ジェニー姐さん的にもOKかな?)
(それじゃあ、いっちょ、お誘いしてみましょう!)

ということで、3人の残念系お姉ちゃんズに視線を向けて、勧誘です

「突然ですが、お姉さんたちのそのお話、ワタシにもお手伝いさせてくださいな?」


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