異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー

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57 出発前の儀式?

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そして翌朝、出立の日

早朝から意気込んで、なんてことはありません

朝のルーチン(レディオ準備体操)をこなした後、

早朝から出発していく馬車を横目に、ワタシとジェニー姐さんは優雅に朝食です


ワタシの今朝のメニューは【磯辺焼き】、つまり、おもちです



【磯辺焼き 4個 300円】


これはアレです

この公共休憩場に来た時、似ていると思った「富士山麓のキャンプ場」

その近くにあったドライブインで買ったヤツです


子供の頃、連れていってもらった富士山近傍の高原のキャンプ場、

その帰り道に寄ったドライブイン

そこはおもちが名物らしく、施設の名前もそののまんま、そんな所でした

(なぜ、こんな高原でおもち?)

そんな疑問をいだきながら、その施設の敷地を散策していると

ちょっと小ぶりな海苔が巻いてある焼きもちを売っている露店をみつけて、

お小遣いで買った、そんな薄ぼんやりした記憶があります


普段自宅で焼きもちといえば、醤油におかかをちょっと混ぜて味付けしていたワタシ

この施設で食べたおもちの、甘じょっぱい砂糖醤油味は、カルチャーショックでした

爽やかな高原の空気の中で食べたおもちの味は、とても印象的で、

ぼやけたワタシの記憶の中でも、わりと鮮明に思い出せます

(あのドライブイン、まだあるのかな? まだおもち売ってるかな?)

(ていうかワタシ、朝食だけで、結構熱く語ってしまいました・・・)



ついでといってはアレですが、ジェニー姐さんの朝食は、いつものヤツ


【コンピニせぶん ふんわりたまごサンドイッチ】

【コンピニせぶん しゃっきりサラダサンドイッチ】

【コンピニせぶん セルフサービスなコーヒー】

【桃の缶詰 プルタブ式】


一度朝食に出して以降、毎朝これを要求されます

「他にもいろいろ美味しいのあるよ?」

と、ワタシが他のモノを勧めても、ジェニー姐さんは

「朝はこれがイイの」

と、かなりお気に入りのご様子です

(まあ、本人が気に入っているのなら、いいんですけどね)

(でもこれって、一番最初に食べたモノが大好物になっちゃうパターンのヤツだよね)

(それって、異世界のお食事処のお話の定番だよね)

ん?
土曜日?
ネコの扉?



何はともあれ、朝からふたりでゆっくりまったり、お食事をモグモグ楽しみます

ゆっくりのんびり、ふたり旅

急いで出かける用事ではありません

そんなに慌てて出発する必要はないのです



ちなみに今日のワタシの旅装束は、ジェニー姐さんのお下がり

洗濯・乾燥で縮んじゃったヤツです

(もちろん、下にはスキニーですよ? これはワタシ的に外せません)

そしてジェニー姐さんは、ワタシがあげたジャージ上下

(まあ、これから歩くわけですし、いいんじゃないでしょうか)



そんなこんなでいよいよ出発の時

ちなみにクレイマーの新任薬師さまは、ザックさんたちがクギを刺してくれたおかげか、

今朝は姿を現していません


ユニットハウス等を【インベントリ】に収納し、

見送りに出てきてくれたザックさんたちと別れの挨拶をしようというタイミングで、

ジェニー姐さんから話しかけられます

「これはね、私が身に着けていた精霊のお守りよ」
「願いを込めれば、その願いを精霊が叶えてくれるわ」
「あなたに精霊のご加護がありますように・・・」

そう言って、ジェニー姐さんが、

茶色い木のような紙のような材質のミサンガのようなモノを

ワタシの左手首に付けてくれました

(え? これって、プレゼント?)
(なんかワタシ、はじめてプレゼント貰ったかも)
(ひとから何かを貰うって、なんだか新鮮・・・)

ワタシがそう思っていると


「かわりにあなたが首にかけているそれ、私にくれない?」

ジェニー姐さんが指さしたのは、ワタシの唯一の装飾品?

体育教師御用達のアルミ製ホイッスルでした

「え? このホイッスルです?」

こんなモノでいいのかと疑問に思いますが、

「そう、それを私の首にかけてくれると嬉しいわ」

まあ、本人の希望ですのでワタシに否はありません

少しかがんだジェニー姐さんの首にホイッスルのひもを通します

(ジャージ姿で首にホイッスルって、ホントに体育教師みたい)


「これは装飾品じゃなくて、笛なんですけど、ホントにこれでいいんです?」

「ええ。身に着けていたモノを交換したいのよ」
「家族で旅をするとき、昔からやっていたのよね」
「旅立ち前の願掛けみたいなものかしら」
「まあ、一緒に旅をする仲間の証とでも思ってちょうだい」


旅の仲間の証として、お互いが身に着けていたモノを交換する

どうやら、この国ではなくて、ジェニー姐さんの一族? の習慣らしいです

その話を聞いて、何だか嬉しくなります

ジェニー姐さんと、より親密に、身内になった気がして、とても素敵な気分です



気分が良くなったところで、いよいよザックさんたちとお別れのご挨拶です

「それではザックさん、みなさん、お元気で!」

ザック「おお! ってちょっと待った。最後に、オレ達からも贈り物させてくれや」

そう言ってザックさんが差し出してきたのは、こぶし大の薄水色をした水晶みたいなモノ

カルロ「これはリザルドンという魔物の魔石です」

マックス「俺たちが倒した中では今までで一番のヤツだね」

ジャン「良いモノであろう?」

レオ「昨夜は徹夜・・・」


最後の最後に、何だか凄いモノをプレゼントされちゃったみたいです

(約一名、【キュービックるーぶ】にやられちゃった人がいるようですが・・・)


「そんなに凄そうなモノ、も、貰っちゃって、いいんです?」

ザック「あったりめーよ! 随分とご馳走になっちまったしよ!」

カルロ「個別にプレゼントまで頂いてしまったしね」

マックス「いろいろご馳走様。あのワインは忘れられないよ」

ジャン「かれえらいす? あれは最高だったぞ」

レオ「眠い・・・」



「そ、それでは遠慮なく」

そう言って、魔石に触れた時でした


『魔物の魔石からMPを自動的にチャージします 含有魔力量【1000000】』


頭の中に、以前聞いたことがあるような声が響き渡りました

その瞬間、ザックさんから受け取ったはずのこぶし大の魔石が、

跡形もなく消え去ってしまいました


「え?」

(あれれ? ワタシってば、魔石に触れると自動でチャージしちゃうの?)
(それって、ワタシが魔石に触れると、魔石を消しちゃうってこと?)

ワタシがひとり、今の状況を整理していると


ザック「お? 早速収納したのか?」

カルロ「やはり収納のスキルは便利ですよね」

マックス「お金に困ったら、それ、売っちゃってもいいからね?」

ジャン「その魔石は結構な金になるぞ」

レオ「zzz・・・」


どうやらザックさんたちは、ワタシが魔石を収納したと思っているようです

すかさずその話の流れに全力で乗っかるワタシ


「しゅ、収納スキルがあって、ほ、ホントよかった!」


きっと、ザックさんたちにとって、あの魔石はとても大切な宝物だったはず

そんな大切なモノを、故意ではなかったとはいえ、もらった瞬間に消し去ってしまったワタシ


(さすがに、大事なプレゼントを、貰った瞬間消し去りましたなんて、)
(そんなこと、口が裂けても言えませ~ん!)


お別れの最後の最後で、笑顔が引きつるワタシなのでした

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