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32 迷子の仔猫(とある薬師のひとりごと)
しおりを挟む気まぐれに請け負った薬師ギルドの仕事も、もうすぐ満了
あと1週間で終わりを迎えようとしています
1ヶ月の間、街道の中間地点にある公共休憩場にて、駐在薬師として赴任するという仕事
特にやりがいがあるとはいいがたいけれど、
ちょっとした気分転換だと思えば、それなりに悪くはないと思えます
寿命が長めの私達種族にとっては、
1ヶ月程度の仕事など、ほんの一瞬の暇つぶしなのですから
そんなある日の午後、仕事場である管理棟が少し騒がしくなりました
またお貴族関連の揉め事かしら? と覗いてみると、なんかカワイイものがいます
同僚の駐在員と話しているそのカワイイお客さんは、
会話の途中、事あるごとに、ひとりでわちゃわちゃ百面相しだして、
はたから見ていて目が離せなくなる、とても愛くるしい存在でした
例えるなら、そう、
鏡に映った自分に驚き、やんのかステップで臨戦態勢をとる仔猫を見ているような
鏡の中の生意気なヤツに一撃を入れるべく、
近寄っては逃げ、近寄っては逃げ
そんな激闘の末、なぜか負けてしまうような
みぃみぃ(この辺で勘弁してやるっ!)と捨て台詞をはきながら、
そそくさと退散していくような
そして、お手手ペロペロお顔ぐしぐしして、
最後には何事もなかったかのようにケロッとしているような
そんな光景
ずっと見ていられる
思わず頬を緩めてしまう
彼女の様子は、その仕草は、
そんなのカワイイにまみれていたのです
(これはずっと愛でていたいわね)
そう思っていると、彼女の方から私にアプローチしてくれました
どうやら着替えをしたくて、同性の私に話しかけてきたようです
了承して自室に迎え入れると、そこからは怒涛の展開でした
カワイイ彼女が可愛らしい衣装に着替え終わったとき、
彼女の脱いだ衣類に興味がわき、試着させてもらいました
そして、そのジャージなるモノの着心地を楽しんでいたら、
なんと、とても驚きのプレゼントを貰ってしまったのです
それは、他人より割と長めに生きている私の人生でも見たことがないモノで、
しかも、体調不良だった自分にはとてもありがたいモノで・・・
その後もアレコレあって、彼女とお部屋を一緒にすることにしました
(いろいろと不思議な能力を持っているようね)
(とても興味深いわ・・・)
(知りたい、もっと知りたいけど・・・)
(でもダメね、きっとヒミツなんでしょうね)
見たこともないモノを次から次へとポンポンと出して見せ、
それでいて何事もなかったかのようにケロッとしている
収納系の能力なのか、モノを創生する能力なのか
しかし魔法を使った様子はないようです
(彼女の能力は、世間一般には決してありふれていないことは確実ね)
(何の能力なのかしら?)
(教えてくれるかしら?)
(それにはまず、仲良くしなくっちゃだわね)
(教えてくれるまで、焦らず気長に待ちましょう)
(焦って、構いすぎて、嫌われないようにしないとね)
仔猫の扱いはちょっと気を遣います
こちらからグイグイ行ってはダメ
それはむしろ、逆効果
はじめは、こちらからは最小限のアプローチしかせず、
むしろ「興味はないですよ~」と少し放置気味の方がいい
向こうから近寄ってくるまでは辛抱、じっと我慢するとしましょう
今はただ待つだけ
そう、
いつか彼女が自分から話してくれるまで
彼女の持つ、かなり変わった能力のお話を
そして何より、彼女自身のことを
(彼女の人生に、ちょっと付き合っちゃおうかしらね?)
(人ひとりの人生なんて、私にとってはわずかな時間、ほんの暇つぶしなのだしね?)
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