母乳スキルって何なのよ?

オフィス景

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9 恩返し

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「そのあたりをもう少し詳しく聞きたいわね」

 由真はニマニマしながら青木との距離を詰める。

「な、何の話だ?」

 視線を合わせないようにしながら青木は逃げようとしたのだが、由真がそれを許すはずもなかった。

「あんなわかりやすい反応しといて、今更ごまかせると思わないように」

 由真の目は完全に青木を獲物としてロックオンしている。

「……」

 こんな時、男は弱い。青木のように生真面目な男なら尚更だ。

「ちょ、ちょっと由真」

 見かねた美南が止めようとするが、由真のブレーキは完全に壊れていた。

「もうバレたようなもんなんだし、ハッキリさせちゃえば?」

「う、うう……」

「この機会を逃したら、もうチャンスは来ないかもしれないわよ」

「……」

 青木は苦悶の表情を浮かべている。

「……う…だよ……」

 無理矢理絞り出したような掠れた声。

「え?」

 由真はわざわざ耳に手を当てて訊き返す。わざとらしいことこの上ない。

 「そうだよ!  栗原のことが好きだよ!  悪いか!?」

 完全にやけくそな口調で青木は叫んだ。

「悪いわけないじゃない。素晴らしいわ」

 由真は満面の笑みで言った。意外にもそこにからかうような色はなかった。

「あれ?」

 青木が意外そうに首を傾げる。

「どうしたの?」

「いや、その、なんつーか、もっとおちょくられるのかと思ってた」

「そんなことするわけないでしょ。中学生じゃないんだから」

 由真は頬を膨らませた。

「そういうレベルだと思われてたっていうのが地味にショックだわ」

「いや、でも今の話の流れなら普通はそう取るんじゃないかな」

 何となく会話に加わりかねていた美南がやっと口を挟んだ。

「そうかな?」

「あたしもからかわれると思ったわ」

「だからそんなことしないって。ちゃんと祝福するわよ」

「祝福ってーー」

「あたしの知る限り、美南ちゃんの初彼だもん」

「は、初彼……」

 その言葉に、美南だけでなく青木まで顔を赤くした。

 …からかうつもりはないんだけど、普通に話すだけでからかう形になっちゃうんじゃないかしら。

 由真的には苦笑を禁じえない。

 二人して中学生みたいよね。

 それだけに、自分が変な煽り方をしたら、上手くいくはずのものが壊れてしまうかもしれない。

 責任重大? 

 かと言って放っておいたらまったく進展しないような気がする。根拠のない勘だが、間違ってはいないだろう。

 何しろこの親友は生来の委員長体質というのか、自分のことは常に後回しで、人の世話ばかり焼いているのだ。由真もクラスの中でイジメに遭いかけた時に助けられたりと色々世話になっていた。

 だから今は恩返しのまたとないチャンスなのだ。

「美南ちゃん、青木くんがお返事待ってるよ」

 意図的に事実を曲げる。青木は「好きだ」とは言ったが「つきあってくれ」とは言っていない。そして、返事を迫ってもいない。

 美南はわちゃちゃととっちらかったが、ややあって立ち直ると、うつむき加減ではあるものの、青木に向き直った。

「…お、お友達からでよければーー」

「も、もちろんいいよ!」

 青木の声が弾む。怒濤の超展開で気づいたら告白させられていたのだが、これこそ結果オーライだろう。こんなきっかけでもなければ、ヘタレな自分は告白などできなかったであろうから。

 そういう意味では由真に感謝しなくてはいけないのかと目をやれば、由真は実にイイ笑顔でサムズアップしていた。

 青木は感謝の意を込めてサムズアップを返すのであった。

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