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「これ以上話すことはないな」
穏やかな顔に戻ったケントは、もう何の興味もないと言うようにアルミナに背を向けた。
これから忙しくなるぞぉ。
二人を娶るとなれば、準備も大がかりになるはずだ。
この時点でケントは未来しか見えていなかった。
だから、背後の危険に気づくのが遅れた。
ケントが気づいた時、短剣を腰だめにして突っ込んできたアルミナはすぐ手の届く距離にいた。
ヤバい!?
かわせないと悟ったのが先だったか、身体が硬直したのが先だったかは判然としなかったが、その瞬間ケントは完全に無防備だった。
ケントは痛みに備えて全身を力ませた。
キインッ!
鋭い金属音が響き、アルミナの短剣が弾き飛ばされた。
「わたしの目の前でそんな暴挙を許すと思うか?」
神速の剣撃を披露したフローリアは、剣を収めず、アルミナに突きつけた。
「…どこまでも邪魔を……」
常人なら向けられただけで気死しそうな、狂気じみた憎悪に晒されても、フローリアには怯む様子はない。逆にアルミナを気迫で圧倒する。
「ケントを道連れにされては困るのでな」
油断なく剣を突きつけたまま、フローリアは涼しい顔で言った。
「いい加減に諦めたらどうだ?」
敗北感にまみれながらもアルミナの目にはギラギラした光が宿っている。それが見てとれるので、フローリアも剣を引けずにいた。
「ケントォッ!」
突然アルミナが吼えた。
「あんたは絶対に幸せになんかなれないわ! 未来永劫呪われるのよ。あたしが呪うわ。幸せになんかさせやしないから!!」
よくもここまで、と思わせるレベルの憎悪。その負の感情は強烈な感染力を秘めていた。
「このっーー」
憎悪にあてられたフローリアも冷静さを失った。突きつけた剣を振り上げる。
「フローリア、待って!」
刃を止めさせたのは、アリサの声だった。
「アリサ?」
「殺しちゃうのは簡単だけど、それだとアルミナの思うツボだと思うわ。アルミナを手にかけたことがしこりになっちゃいそうな気がしない? それこそ呪いのようだわ」
「むむ……」
フローリアは眉間にシワを寄せた。アリサの言うことはもっとものような気がしたのだが、じゃあどうすればいいかがわからなかったのだ。
「ではどうすると?」
アリサはにっこり笑った。
「幸せになろうよ。三人で。それをアルミナに見せつけてやろうよ」
「「なるほど」」
フローリアとケントは揃って頷いた。確かにそれが一番効果的な気がする。
アリサは更にアルミナに対して言葉をかける。
「わたしたちはあんたの呪いになんか負けない。三人で幸せになるところを見せつけてあげる。だから、処刑なんてしない。死にたければ自分で死ねばいいーーでも、それを選んだらあんたの負けだからね」
「……」
アルミナは反論できなかった。憎々しげにアリサを睨むばかりである。
その表情を見れば、アリサの提案がアルミナにとっては一番キツいものだと言うことは明らかだった。
「じゃあ、そういうことで」
と言いつつ、また二人にいいところを持っていかれた点に情けなさを覚えるケントであった。
穏やかな顔に戻ったケントは、もう何の興味もないと言うようにアルミナに背を向けた。
これから忙しくなるぞぉ。
二人を娶るとなれば、準備も大がかりになるはずだ。
この時点でケントは未来しか見えていなかった。
だから、背後の危険に気づくのが遅れた。
ケントが気づいた時、短剣を腰だめにして突っ込んできたアルミナはすぐ手の届く距離にいた。
ヤバい!?
かわせないと悟ったのが先だったか、身体が硬直したのが先だったかは判然としなかったが、その瞬間ケントは完全に無防備だった。
ケントは痛みに備えて全身を力ませた。
キインッ!
鋭い金属音が響き、アルミナの短剣が弾き飛ばされた。
「わたしの目の前でそんな暴挙を許すと思うか?」
神速の剣撃を披露したフローリアは、剣を収めず、アルミナに突きつけた。
「…どこまでも邪魔を……」
常人なら向けられただけで気死しそうな、狂気じみた憎悪に晒されても、フローリアには怯む様子はない。逆にアルミナを気迫で圧倒する。
「ケントを道連れにされては困るのでな」
油断なく剣を突きつけたまま、フローリアは涼しい顔で言った。
「いい加減に諦めたらどうだ?」
敗北感にまみれながらもアルミナの目にはギラギラした光が宿っている。それが見てとれるので、フローリアも剣を引けずにいた。
「ケントォッ!」
突然アルミナが吼えた。
「あんたは絶対に幸せになんかなれないわ! 未来永劫呪われるのよ。あたしが呪うわ。幸せになんかさせやしないから!!」
よくもここまで、と思わせるレベルの憎悪。その負の感情は強烈な感染力を秘めていた。
「このっーー」
憎悪にあてられたフローリアも冷静さを失った。突きつけた剣を振り上げる。
「フローリア、待って!」
刃を止めさせたのは、アリサの声だった。
「アリサ?」
「殺しちゃうのは簡単だけど、それだとアルミナの思うツボだと思うわ。アルミナを手にかけたことがしこりになっちゃいそうな気がしない? それこそ呪いのようだわ」
「むむ……」
フローリアは眉間にシワを寄せた。アリサの言うことはもっとものような気がしたのだが、じゃあどうすればいいかがわからなかったのだ。
「ではどうすると?」
アリサはにっこり笑った。
「幸せになろうよ。三人で。それをアルミナに見せつけてやろうよ」
「「なるほど」」
フローリアとケントは揃って頷いた。確かにそれが一番効果的な気がする。
アリサは更にアルミナに対して言葉をかける。
「わたしたちはあんたの呪いになんか負けない。三人で幸せになるところを見せつけてあげる。だから、処刑なんてしない。死にたければ自分で死ねばいいーーでも、それを選んだらあんたの負けだからね」
「……」
アルミナは反論できなかった。憎々しげにアリサを睨むばかりである。
その表情を見れば、アリサの提案がアルミナにとっては一番キツいものだと言うことは明らかだった。
「じゃあ、そういうことで」
と言いつつ、また二人にいいところを持っていかれた点に情けなさを覚えるケントであった。
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