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80 ぶっつけ本番

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「さあ、今度はあたしが相手よ!」



 最初の威勢は良かった。気後れすることなく、果敢にヴァンパイアに挑んでいく。

 だが、子供とは言えドラゴンを圧倒する相手にフローリアではいささか荷が勝ちすぎていた。いくら剣を振れども当たらず、いたずらに体力を消耗していく。

「このおっ!」

    仮にも皇女将軍と呼ばれる武人である。剣技だって一般兵が追随できるものではない。それでもヴァンパイアの圧倒的身体能力の前にはまるで通じなかった。

「くっ」

 しかし、フローリアの瞳が曇ることはない。ますます闘志を高め、ヴァンパイアに挑んでいく。

 その努力を嘲笑うかのようにヴァンパイアはフローリアをいたぶる。わざと小さな傷をつけ、それを徐々に増やしていく。

 それを見せつけられながら、ケントは歯を食いしばっていた。

 何もできないもどかしさに苛まれながら、必死の思いで回復を図る。

 中途半端な回復で魔法を放っても意味はない。やるなら最大火力でぶっ放さないとヴァンパイアには通じないとわかっている。が、そこまでの回復が容易ではない。

 ふとケントの視界に倒れたドラゴンが映る。

 気のせいではなく、ケントとドラゴンの目が合った。

 ドラゴンの目には強い意志の光があった。

 本来言葉が通じる相手ではないのだが、この時は共通認識があったせいか、ドラゴンが何を言いたいのか理解することができた。奇跡的に意思疎通ができたのだ。

「…力を、貸せ……?」

 半信半疑の呟きに、ドラゴンが頷く。

 この際、助けになるのであれば何にでもすがりたいケントである。倒れているドラゴンとの距離を詰め始める。

 フローリアが奮闘し、ヴァンパイアの気を引いている間にケントはドラゴンと合流した。

「何をどうするって?」

 訊かれたドラゴンは、ケントの右手に自分の前肢を添えた。

「…さっきの光魔法をもう一度撃てってか?」

 ドラゴンが頷く。

 ピン、とケントに閃くものがあった。

「ブレスを合わせられるのか?」

 もう一度ドラゴンが頷く。

 もしそれが本当に可能なら、自分一人でやるよりも格段に破壊力は上がるだろう。

 賭ける価値はあるかもしれない。

「よし、やろう」

 一人と一匹は自らの極限を引き出すべく集中力を高めていく。

 集中集中集中集中しゅうちゅうしゅうちゅうしゅうちゅうしゅうちゅうしゅうちゅうーー

 急速に魔力が高まっていく。

 ヴァンパイアが異常に気づいた。焦った様子でケントたちを振り返る。

 その時にはケントたちの準備は整っていた。

「やるぞ!   拡散させるなよ。全部の威力を一点集中させるんだ」

「ギャ」



「食らえ!   『プロミネンス・レイ』」
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