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78 光魔法

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 ヴァンパイアがゆっくりと近づいて来る。

 くそったれ、ここまで差があるんかよ……

 ケントは唇を噛んだ。悔しいが、それは認めざるを得なかった。

 ドラゴンの子供を助けに入ったのは間違いだったのか。そんな考えが頭をよぎる。

 諦念に気持ちが傾く中、ケントの目に倒れ伏したフローリアが入った。

「諦めるわけにはいかねえだろうが」

 ここで自分が倒れたら、フローリアも助からない。それだけは許容できなかった。

 フラフラになりながらケントは立ち上がった。

「ほう、しぶといな」

 嗜虐的な笑みを浮かべたヴァンパイアが言う。

「まだ楽しませてくれるのか?   その様子では期待はできなさそうだが」

「うるせえよ。てめえなんぞの物差しで俺を測れると思うなよ」

 ありったけの気迫を目に込めて、ケントはヴァンパイアを睨みつける。

 実は、ケントには後ひとつだけ手があった。

 けど、あれの成功率、まだ三割にも満たないんだよな。

 今練習中の魔法ーー光魔法であった。

 ヴァンパイアが相手なら、多分一番有効なのって光魔法なんだよな。さっき野郎が使ってたのは闇魔法だろうし、この推測は当たってると思うんだけど。

 一か八かだけど、やるしかない。

 光の魔石を握りこみ、ケントは魔力を練り上げる。

「何をするつもりか知らんが、やってみるがよかろう」

 余裕をかましてくれるのがありがたい。一気にたたみかけられたら、今のケントでは為す術がないところだった。

 集中集中集中集中集中ーー

 魔力と同時にイメージを練り上げる。

 イメージするのは光の槍。闇を貫く一筋の光。

 イメージに魔力を重ねる。

 行ける!

 いまだかつてないくらいしっくりくる感覚に、ケントは成功を確信した。

 見れば、ヴァンパイアは薄笑いを浮かべてケントを見下している。

「その思い上がりが命取りだぜ、ヴァンパイア!」

 練り上がった魔力を掌に集中。成功だけをイメージして、ケントはヴァンパイアに向けて魔法を放った。

「食らえ!   ライトニング・スピア!!」

 放たれた光の槍がヴァンパイアの右肩に突き刺さり、爆発した。

「ぐわあっ!?」

 今度は確実にダメージが通った。

「よっしゃ!」

 狙い通りの展開にケントが快哉を結ぶ。成功するかどうか分の悪い賭けであったが、何とか上手くいった。

「ざまあみろ」

 呟いて、ケントはその場に大の字になった。もう指一本も動かすのが億劫だった。

「やってやったぜ、ちくしょうめ」

「ーー何をやったというんだ?」

 地獄の底から響いてきたかのような声に、ケントは凍りついた。

「…まさか……」

 ボロボロになってはいたが、しっかりした足取りのヴァンパイアが、憎悪に燃えた目をケントに向けてきていた。

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