71 / 89
71 カリスマ
しおりを挟む
「魔物が襲って来たってどういうことなの!?」
さすがの皇女将軍も冷静ではいられなかった。情報をもたらした使者に詰め寄ってしまう。
「理由はわかりません。ただ、突然数千に及ぼうかという魔物が国境を越えて来たのです。国境警備隊は奮戦空しく壊滅。魔物は国内で暴れ回っております」
「ケント」
フローリアは悲壮な顔でケントを振り返った。
「わかってる。魔物相手なら俺らの方が経験豊富だ。緊急クエストを発令する」
「ありがと」
「すぐに出られるように準備だ」
全員が慌ただしく動き始めた。
「帝都に行くより現場へ直接向かった方がいいだろうな。フローリアがいてくれれば咎められることもないだろうから」
帝都は魔物が侵入してきた国境地帯からは遠く離れている。わざわざ挨拶などをしていたら、救える命も救えなくなってしまう。
速度重視で編成した部隊を率いて、ケントとフローリアは急ぎ帝国へと向かった。
情報を収集しつつ強行軍を続けた一行は、本来三日かかるところを二日で戦線に到着した。戦闘の最中であるが、形勢は思わしくないように見える。
「ギリギリ間に合ったってところかな」
もう少し遅かったらまずかったかも知れないが、帝国軍はまだ戦線を保っていた。
「さあ、狩りの時間だ! 一匹残らず狩り尽くせ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
ケントの号令一下、一行は魔物の群れに対して強烈な横撃を加えた。先頭に立つのはもちろんフローリアである。怒りのオーラと風魔法をを身に纏った戦女神は、一刀の下に魔物を斬り伏せていく。
突然の乱入に驚いた帝国軍だったが、すぐに敬愛する皇女将軍の姿に気づき、奮い起った。
「姫様が来てくださったぞ! 無様をさらすなよ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
ケントの目から見て、帝国軍の士気の上がり方はすさまじかった。戦場の空気がガラリと変わったのがはっきりとわかった。
「やっぱり人望あるんだなあ」
戦局全体を見渡せるよう後方に位置したケントは感心しきりであった。こういうのをカリスマっていうんだろうな、としみじみ思う。
フローリア参戦後は、傾けた流れのままに魔物を一掃することに成功した。
掃討戦に移ったところで、ケントとフローリアは帝国軍の指揮官と合流した。
「よく粘ってくれたわね。ご苦労様」
「もったいないお言葉です」
指揮官は感激の面持ちである。
「状況を教えてもらえる?」
「はい。数日前に突如大量の魔物が国境を越えて来ました。これまでは単発、散発の侵入ばかりだったため、こちら側の備えが足りず、このような深い地点まで侵入を許してしまいました。誠に申し訳ございません」
「原因はわかってるの?」
「それが……まだ何も……」
「そう……」
「とりあえず原因究明は後回しだ。戦場はここだけじゃないんだろ」
ケントが言うと、フローリアはハッとした。
「そうよ、次行かなきゃ」
慌ただしく補給を終え、一行は次の戦場へと向かうのであった。
さすがの皇女将軍も冷静ではいられなかった。情報をもたらした使者に詰め寄ってしまう。
「理由はわかりません。ただ、突然数千に及ぼうかという魔物が国境を越えて来たのです。国境警備隊は奮戦空しく壊滅。魔物は国内で暴れ回っております」
「ケント」
フローリアは悲壮な顔でケントを振り返った。
「わかってる。魔物相手なら俺らの方が経験豊富だ。緊急クエストを発令する」
「ありがと」
「すぐに出られるように準備だ」
全員が慌ただしく動き始めた。
「帝都に行くより現場へ直接向かった方がいいだろうな。フローリアがいてくれれば咎められることもないだろうから」
帝都は魔物が侵入してきた国境地帯からは遠く離れている。わざわざ挨拶などをしていたら、救える命も救えなくなってしまう。
速度重視で編成した部隊を率いて、ケントとフローリアは急ぎ帝国へと向かった。
情報を収集しつつ強行軍を続けた一行は、本来三日かかるところを二日で戦線に到着した。戦闘の最中であるが、形勢は思わしくないように見える。
「ギリギリ間に合ったってところかな」
もう少し遅かったらまずかったかも知れないが、帝国軍はまだ戦線を保っていた。
「さあ、狩りの時間だ! 一匹残らず狩り尽くせ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
ケントの号令一下、一行は魔物の群れに対して強烈な横撃を加えた。先頭に立つのはもちろんフローリアである。怒りのオーラと風魔法をを身に纏った戦女神は、一刀の下に魔物を斬り伏せていく。
突然の乱入に驚いた帝国軍だったが、すぐに敬愛する皇女将軍の姿に気づき、奮い起った。
「姫様が来てくださったぞ! 無様をさらすなよ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
ケントの目から見て、帝国軍の士気の上がり方はすさまじかった。戦場の空気がガラリと変わったのがはっきりとわかった。
「やっぱり人望あるんだなあ」
戦局全体を見渡せるよう後方に位置したケントは感心しきりであった。こういうのをカリスマっていうんだろうな、としみじみ思う。
フローリア参戦後は、傾けた流れのままに魔物を一掃することに成功した。
掃討戦に移ったところで、ケントとフローリアは帝国軍の指揮官と合流した。
「よく粘ってくれたわね。ご苦労様」
「もったいないお言葉です」
指揮官は感激の面持ちである。
「状況を教えてもらえる?」
「はい。数日前に突如大量の魔物が国境を越えて来ました。これまでは単発、散発の侵入ばかりだったため、こちら側の備えが足りず、このような深い地点まで侵入を許してしまいました。誠に申し訳ございません」
「原因はわかってるの?」
「それが……まだ何も……」
「そう……」
「とりあえず原因究明は後回しだ。戦場はここだけじゃないんだろ」
ケントが言うと、フローリアはハッとした。
「そうよ、次行かなきゃ」
慌ただしく補給を終え、一行は次の戦場へと向かうのであった。
0
お気に入りに追加
4,506
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。



冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる