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114 パワーが欲しいなぁ
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「明日で告知期間が終わるわけだが」
訓練の休憩時間にブライト王子がやって来た。
「この後のことは具体的に何か考えてるのか?」
それ、俺の方でも訊きたいことがあったんだよな。
「結婚に関して、この国ならではのしきたりみたいなものってあるんかな?」
「他の国の結婚式をよく知ってるわけじゃないが、ごく普通だと思うぞ。特にこれをしなきゃならんってこともないし」
「それを聞いて安心した」
まだ具体化してはいないが、青写真の一枚や二枚はある。シルヴィアにも相談しながら詰めていくとしよう。
ちょうどそこで休憩終了の声がかかった。この後は個人の模擬戦の予定なのだがーー
なかなか勝てない。
自分でも情けなくなるが、パーティメンバーの中で俺が一番弱い。元々召喚勇者としては低いステータスだったが、召喚勇者ではないブライト王子にもいい勝負をされてるようじゃ話にならない。
「さすがにどうなんだよ……」
はあー、と落ち込んでたら、ツブラに怒られた。
「何してんの。コータローの戦い方はそうじゃないでしょ。何でパワーファイターみたいな戦い方しようとしてんの」
「いや、でもさあ……」
やっぱりパワーには惹かれるんだよな。
「でもさあじゃないの。コータローは、コータローにしかできない戦い方を極めた方がいいの」
「そうなのか?」
「あたりまえじゃない。皆で同じ戦い方したってしょうがないでしょ。その戦い方が通用しない敵が出てきたら、それで詰んじゃうでしょ。引き出しは多いにこしたことはないのよ」
「なるほど」
「シルヴィアとミネルヴァのフォローがあることを考えれば、コータローは今のままスピードを活かした戦い方を伸ばすべきだと思う」
向いてる戦い方については正直俺にはよくわからんが、ツブラがそう言うのなら間違いないんだろう。素直に言うことを聞いて、修行に励むことにしよう。
次の模擬戦の相手はリョウさんだった。模擬戦ではまだ一度も勝っていない。
「いい、コータロー。スピードで翻弄するの。絶対に足を止めないっていうのを意識して」
「了解」
ツブラの助言を胸に刻んで、リョウさんと相対する。
「いきますよ!」
「よしこい!!」
こちらから間を詰める。これはいつものこと。
最近は、ここで力任せに剣を叩きつけていたのだが、それをスピード重視で手数を出すようにした。狙いも身体の中心から手や足など防御しにくいところにしてみた。
絶対に足を止めるな、との助言に従い、剣を振るったらすぐに移動し、二秒と同じ場所にはとどまらないように心がける。
すると、リョウさんは明らかに戸惑った様子を見せた。瞬間的にこっちの姿を見失うこともあった。
最終的には時間切れ引き分けということになり、勝利こそ掴めなかったものの、手も足も出なかった今までとは違い、手応えを掴むことができた。
「いい感じだったんじゃねえか。こっちはすげえやりにくかったぞ」
リョウさんのお墨付きももらい、これで俺の方向性は定まった。
…それでもパワーは欲しいけど……
訓練の休憩時間にブライト王子がやって来た。
「この後のことは具体的に何か考えてるのか?」
それ、俺の方でも訊きたいことがあったんだよな。
「結婚に関して、この国ならではのしきたりみたいなものってあるんかな?」
「他の国の結婚式をよく知ってるわけじゃないが、ごく普通だと思うぞ。特にこれをしなきゃならんってこともないし」
「それを聞いて安心した」
まだ具体化してはいないが、青写真の一枚や二枚はある。シルヴィアにも相談しながら詰めていくとしよう。
ちょうどそこで休憩終了の声がかかった。この後は個人の模擬戦の予定なのだがーー
なかなか勝てない。
自分でも情けなくなるが、パーティメンバーの中で俺が一番弱い。元々召喚勇者としては低いステータスだったが、召喚勇者ではないブライト王子にもいい勝負をされてるようじゃ話にならない。
「さすがにどうなんだよ……」
はあー、と落ち込んでたら、ツブラに怒られた。
「何してんの。コータローの戦い方はそうじゃないでしょ。何でパワーファイターみたいな戦い方しようとしてんの」
「いや、でもさあ……」
やっぱりパワーには惹かれるんだよな。
「でもさあじゃないの。コータローは、コータローにしかできない戦い方を極めた方がいいの」
「そうなのか?」
「あたりまえじゃない。皆で同じ戦い方したってしょうがないでしょ。その戦い方が通用しない敵が出てきたら、それで詰んじゃうでしょ。引き出しは多いにこしたことはないのよ」
「なるほど」
「シルヴィアとミネルヴァのフォローがあることを考えれば、コータローは今のままスピードを活かした戦い方を伸ばすべきだと思う」
向いてる戦い方については正直俺にはよくわからんが、ツブラがそう言うのなら間違いないんだろう。素直に言うことを聞いて、修行に励むことにしよう。
次の模擬戦の相手はリョウさんだった。模擬戦ではまだ一度も勝っていない。
「いい、コータロー。スピードで翻弄するの。絶対に足を止めないっていうのを意識して」
「了解」
ツブラの助言を胸に刻んで、リョウさんと相対する。
「いきますよ!」
「よしこい!!」
こちらから間を詰める。これはいつものこと。
最近は、ここで力任せに剣を叩きつけていたのだが、それをスピード重視で手数を出すようにした。狙いも身体の中心から手や足など防御しにくいところにしてみた。
絶対に足を止めるな、との助言に従い、剣を振るったらすぐに移動し、二秒と同じ場所にはとどまらないように心がける。
すると、リョウさんは明らかに戸惑った様子を見せた。瞬間的にこっちの姿を見失うこともあった。
最終的には時間切れ引き分けということになり、勝利こそ掴めなかったものの、手も足も出なかった今までとは違い、手応えを掴むことができた。
「いい感じだったんじゃねえか。こっちはすげえやりにくかったぞ」
リョウさんのお墨付きももらい、これで俺の方向性は定まった。
…それでもパワーは欲しいけど……
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