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169 魔法対策
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「一度状況を整理しておこうか」
ブライト王子の言葉に、俺はため息混じりに頷いた。
「俺の目にはおまえが魔族の標的としてロックオンされたように見えたんだが?」
「ああ。それで間違いないだろうな」
ため息しか出てこない。何だってこんな訳のわからんことになってるんだか……
ふと右腕に重みを感じた。見ると、シルヴィアが今にも泣き出しそうな顔をしている。
「そんな顔すんな。もうみんなが狙われることはなくなったんだから」
「それは間違いないのか?」
「処女性が重要みたいだからな」
あの魔族の絶望を見れば、そこは間違いないはずだ。
ブライト王子がしみじみ言う。
「おまえのナチュラルな行動が魔王復活を邪魔してたとはな。ある意味大手柄だな」
「やめてくれ」
狙ってやったわけじゃないし、俺は純粋に三人の ことを好きになったんだ。誤解されるようなことはないと思うが、要らん心配をかけたくはない。
「まあ、魔族の出方がわかった分やりやすくはなったかな」
「それは確かにそうかもしれないけど、今のままじゃコータローまずくない? 今日だって結構ギリギリじゃなかった?」
「…今日以上のヤツが来ると、正直厳しいな……」
変に強がってもしょうがない、素直に力不足を認める。
「いつの間にかコータローが対魔族の最先鋒になっちゃってるね」
カズサさんの言葉には苦笑するしかない。
他の召喚勇者と違い、俺は魔王討伐のために喚ばれたわけじゃないんだよな。それが今や魔族の憎悪を一身に集めてるって……
我ながら何やってんだと思わなくもないが、シルヴィア達と共に歩く未来のためだと思えば、後悔など微塵もない。むしろドンと来いだ。
ただ、それで死ぬのは絶対なしだ。俺が戦うのは世界のためなんかじゃない。あくまでもシルヴィア達と楽しく暮らすためなんだから。
そのためには、もっと強くならなきゃならん。今更リタイアは許されそうにないから、何としても生き残るんだ。
「コータローを強化するのは決まりとして、方向性はどうする?」
「魔法対策を考えた方がいいと思う」
そう言い出したのはツブラだった。
「これからは魔物を相手にするのとは訳が違って来るわ。今のままじゃ魔法に対して無防備過ぎると思うの」
「それを言い出したら、そもそも対策できてるヤツなんていないんじゃないか? 攻撃魔法なんて使うヤツがいなかったからな」
「これまではね」
ツブラは重々しい口調で呟いた、
「でもこれからはそういう訳にはいかないわ。むしろ肉弾戦より魔法を駆使した戦いがメインになると思った方がいいわ」
「マジか……」
げんなりしてしまう。
自分が一番わかっているが、俺は器用なタイプではない。今更戦い方を変えるなんてできるはずがない。
「まあそうよね。とりあえずいい魔石が手に入ったから、これを使って何か役に立つもの作ってみるわ」
「そんなことできるのか?」
「これだけいい魔石なら何かしらできると思うわーー任せてくれる?」
そう言われれば、全面的に任せるさ。
「頼んだ」
「頼まれたわ」
ツブラは魔石を持って部屋から出ていった。
「さて、どうなるかな……」
不安は完全には拭いきれなかった。
ブライト王子の言葉に、俺はため息混じりに頷いた。
「俺の目にはおまえが魔族の標的としてロックオンされたように見えたんだが?」
「ああ。それで間違いないだろうな」
ため息しか出てこない。何だってこんな訳のわからんことになってるんだか……
ふと右腕に重みを感じた。見ると、シルヴィアが今にも泣き出しそうな顔をしている。
「そんな顔すんな。もうみんなが狙われることはなくなったんだから」
「それは間違いないのか?」
「処女性が重要みたいだからな」
あの魔族の絶望を見れば、そこは間違いないはずだ。
ブライト王子がしみじみ言う。
「おまえのナチュラルな行動が魔王復活を邪魔してたとはな。ある意味大手柄だな」
「やめてくれ」
狙ってやったわけじゃないし、俺は純粋に三人の ことを好きになったんだ。誤解されるようなことはないと思うが、要らん心配をかけたくはない。
「まあ、魔族の出方がわかった分やりやすくはなったかな」
「それは確かにそうかもしれないけど、今のままじゃコータローまずくない? 今日だって結構ギリギリじゃなかった?」
「…今日以上のヤツが来ると、正直厳しいな……」
変に強がってもしょうがない、素直に力不足を認める。
「いつの間にかコータローが対魔族の最先鋒になっちゃってるね」
カズサさんの言葉には苦笑するしかない。
他の召喚勇者と違い、俺は魔王討伐のために喚ばれたわけじゃないんだよな。それが今や魔族の憎悪を一身に集めてるって……
我ながら何やってんだと思わなくもないが、シルヴィア達と共に歩く未来のためだと思えば、後悔など微塵もない。むしろドンと来いだ。
ただ、それで死ぬのは絶対なしだ。俺が戦うのは世界のためなんかじゃない。あくまでもシルヴィア達と楽しく暮らすためなんだから。
そのためには、もっと強くならなきゃならん。今更リタイアは許されそうにないから、何としても生き残るんだ。
「コータローを強化するのは決まりとして、方向性はどうする?」
「魔法対策を考えた方がいいと思う」
そう言い出したのはツブラだった。
「これからは魔物を相手にするのとは訳が違って来るわ。今のままじゃ魔法に対して無防備過ぎると思うの」
「それを言い出したら、そもそも対策できてるヤツなんていないんじゃないか? 攻撃魔法なんて使うヤツがいなかったからな」
「これまではね」
ツブラは重々しい口調で呟いた、
「でもこれからはそういう訳にはいかないわ。むしろ肉弾戦より魔法を駆使した戦いがメインになると思った方がいいわ」
「マジか……」
げんなりしてしまう。
自分が一番わかっているが、俺は器用なタイプではない。今更戦い方を変えるなんてできるはずがない。
「まあそうよね。とりあえずいい魔石が手に入ったから、これを使って何か役に立つもの作ってみるわ」
「そんなことできるのか?」
「これだけいい魔石なら何かしらできると思うわーー任せてくれる?」
そう言われれば、全面的に任せるさ。
「頼んだ」
「頼まれたわ」
ツブラは魔石を持って部屋から出ていった。
「さて、どうなるかな……」
不安は完全には拭いきれなかった。
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