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2 俺が料理人になった理由
しおりを挟む「ごちそうさまでした」
きれいに手を合わせて、少女は大きく息をついた。
「お粗末さまでした」
こっちの挨拶も満面の笑みになる。これだけ美味しそうに食べてもらえれば、料理人冥利に尽きるというものだ。
「素晴らしかったです。この世界で醤油ラーメンを食べれるとは思いませんでした」
大満足感溢れる言葉で、少女の身分と言うか、正体に見当がついた。
「勇者様の口にあったようで良かったよ」
そう言うと、ちょっと驚いたようだったが、すぐに笑顔を見せた。
「わかります?」
「この世界でなんて言い方したらわからないヤツはいないだろ」
「あー、なるほど、そうですね」
屈託なく笑う少女の顔は、かなり可愛かった。
この世界には勇者という存在がいる。その多くは原因不明の現象によりやってきた異世界人だ。
異世界人は体力や魔力など主に戦闘能力に秀でている。そのため、魔獣退治などを生業とする冒険者になることが多い。そんな強者揃いの異世界人の中でも勇者認定された者は一線を画した強さを誇っている。異世界人が全員勇者というわけではないが、とりあえず勇者と言っとけば無難かなと思ったのだ。
「マスターはよくラーメンなんて思いつきましたね。誰かに教えてもらったんですか?」
「いや、それなんだけどねーー」
実は、俺がラーメンを売り物にしようと思ったのにはそれなりの訳がある。
「おもしろくはないと思うけど、聞く?」
「ぜひ」
勇者様は即答した。
そういうことなら、別に秘密にしている分けでもないし、少し語らせてもらうとするか。
俺は元々冒険者だった。自分で言うのもなんだが、そこそこいい線はいってたんだ。個人ランク、パーティーランクともBまでいった。Aランク以上はほとんど異世界人であることを考えると、まあ立派なもんだろう。
割と順調な冒険者生活だったのだが、一年ほど前に発生したスタンピードの際に魔獣に膝をやられてしまったのだ。復帰を目指しリハビリに励んだのだが、元の動きを取り戻すことはできなかった。日常生活には影響ないレベルまでには戻ったのだが、第一線の冒険者としては使い物にはならなかった。
落ち込んだが、これはどうしようもない。この稼業、平穏な終わりを迎えられる方が圧倒的に少ないのだ。俺は幸運な方だろう。
ただ、どうしても未練はあったので、最後にケジメをつけるためのダンジョンアタックをすることにした。
俺が最後の舞台に選んだのは、出てくるお宝の割に癖の強い敵が多いということで不人気をかこっているダンジョンだった。
癖が強いとは言っても、滅茶苦茶強いということではない。対処法を知っていて対策をしっかり取っていれば、怪我をした俺でもどうにかなるレベルだった。
俺はこれまでソロでダンジョンを攻略したことがなかったので、記念のつもりだったんだ。
それなりに苦戦はしたが、何とかボス退治まで完了できた。
ダンジョンクリアの報酬として現れたのが【異世界食材アイテムボックス】だった。
検証の結果、これは勇者様方の元世界の食材が無限に手に入るという優れものだった。
元々パーティーでも料理は俺の担当で好きだし得意でもあったので、第二の人生を料理人とすることに迷いはなかった。
あれもこれもと手を広げすぎるよりメニューを絞った方がいいと考え、異世界料理の中で最も可能性を感じたラーメンを看板メニューにした。
ところがこっちの世界ではなかなかこれが受け入れてもらえなかった。
そろそろラーメンをあきらめて、別のメニューを考えようかと思い始めた矢先の勇者様の来店。
これで潮目が変わるんじゃないか。
正直、期待しかなかった。
きれいに手を合わせて、少女は大きく息をついた。
「お粗末さまでした」
こっちの挨拶も満面の笑みになる。これだけ美味しそうに食べてもらえれば、料理人冥利に尽きるというものだ。
「素晴らしかったです。この世界で醤油ラーメンを食べれるとは思いませんでした」
大満足感溢れる言葉で、少女の身分と言うか、正体に見当がついた。
「勇者様の口にあったようで良かったよ」
そう言うと、ちょっと驚いたようだったが、すぐに笑顔を見せた。
「わかります?」
「この世界でなんて言い方したらわからないヤツはいないだろ」
「あー、なるほど、そうですね」
屈託なく笑う少女の顔は、かなり可愛かった。
この世界には勇者という存在がいる。その多くは原因不明の現象によりやってきた異世界人だ。
異世界人は体力や魔力など主に戦闘能力に秀でている。そのため、魔獣退治などを生業とする冒険者になることが多い。そんな強者揃いの異世界人の中でも勇者認定された者は一線を画した強さを誇っている。異世界人が全員勇者というわけではないが、とりあえず勇者と言っとけば無難かなと思ったのだ。
「マスターはよくラーメンなんて思いつきましたね。誰かに教えてもらったんですか?」
「いや、それなんだけどねーー」
実は、俺がラーメンを売り物にしようと思ったのにはそれなりの訳がある。
「おもしろくはないと思うけど、聞く?」
「ぜひ」
勇者様は即答した。
そういうことなら、別に秘密にしている分けでもないし、少し語らせてもらうとするか。
俺は元々冒険者だった。自分で言うのもなんだが、そこそこいい線はいってたんだ。個人ランク、パーティーランクともBまでいった。Aランク以上はほとんど異世界人であることを考えると、まあ立派なもんだろう。
割と順調な冒険者生活だったのだが、一年ほど前に発生したスタンピードの際に魔獣に膝をやられてしまったのだ。復帰を目指しリハビリに励んだのだが、元の動きを取り戻すことはできなかった。日常生活には影響ないレベルまでには戻ったのだが、第一線の冒険者としては使い物にはならなかった。
落ち込んだが、これはどうしようもない。この稼業、平穏な終わりを迎えられる方が圧倒的に少ないのだ。俺は幸運な方だろう。
ただ、どうしても未練はあったので、最後にケジメをつけるためのダンジョンアタックをすることにした。
俺が最後の舞台に選んだのは、出てくるお宝の割に癖の強い敵が多いということで不人気をかこっているダンジョンだった。
癖が強いとは言っても、滅茶苦茶強いということではない。対処法を知っていて対策をしっかり取っていれば、怪我をした俺でもどうにかなるレベルだった。
俺はこれまでソロでダンジョンを攻略したことがなかったので、記念のつもりだったんだ。
それなりに苦戦はしたが、何とかボス退治まで完了できた。
ダンジョンクリアの報酬として現れたのが【異世界食材アイテムボックス】だった。
検証の結果、これは勇者様方の元世界の食材が無限に手に入るという優れものだった。
元々パーティーでも料理は俺の担当で好きだし得意でもあったので、第二の人生を料理人とすることに迷いはなかった。
あれもこれもと手を広げすぎるよりメニューを絞った方がいいと考え、異世界料理の中で最も可能性を感じたラーメンを看板メニューにした。
ところがこっちの世界ではなかなかこれが受け入れてもらえなかった。
そろそろラーメンをあきらめて、別のメニューを考えようかと思い始めた矢先の勇者様の来店。
これで潮目が変わるんじゃないか。
正直、期待しかなかった。
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