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商会として王都方面の情報収集を強化することになった。これまでは自分たちの商圏に入っていなかったため、流行りもの等最低限の情報しかチェックしていなかったのだが、あの話を聞いた以上、悠長なことは言ってられない。どこに商機、あるいはピンチが転がっているかわからないからだ。
「準備を疎かにする者は勝利者にはなれない」
初めて聞いたんだが、家訓だそうだ。
で、情報収集に注力した結果わかったのは、あまりよろしくはない現況だった。
「お父様がーー」
話を聞いたセレーネの顔からは血の気が退いていた。
無理もない。勘当されたとは言え実の父親が国を二分する争いの当事者になっていると聞かされて冷静でいられる者はそうはいないだろう。
今、国内には戦の気配が急速に広がりつつあった。
発端は言わずもがな、バルディンの婚約破棄自爆である。それによって権威や信用の失墜したバルディンに代えて、病弱故に次期国王レースから外れた第一王子ガルベスを再び担ぎ出そうとしているというところまでは聞いていたが、その動きが想像を越えて広がっているのだ。
そして、ガルベスを担ぐ一派の首魁と目されているのがセレーネの父親、グッドリッジ侯爵であったのだ。
「まあ、グッドリッジ家としてはバルディンに味方するわけにもいかんよなあ」
娘を捨てた王子を担ぐってのは風聞が悪いよな。ってか、娘を勘当した時点で風聞を気にする段階は通り過ぎてるか。
「戦争になっちゃうのかしら?」
心配そうにセレーネは眉根を寄せた。
「そこまで短絡的ではないと思うけど、対応策は準備しといた方がいいだろうな」
「そうね……」
セレーネの表情は晴れない。縁が切れたとは言え、気にはなるのだろう。
「よし、行商するか」
「え?」
きょとんとされてしまった。ちょっと唐突過ぎたか。
「行商って?」
「うん。バルディンよりガルベス王子が王様になってくれた方がいいのは間違いないだろ。じゃあ、ガルベス王子の不安点が何かって言えば、健康状態なわけだ。んで、俺たちの手元にはその不安点を解消できるかもしれないブツがある。だとすれば、それを売りに行かない手はないと思わないか?」
「ああ、なるほど。そういうことね」
セレーネは納得して頷いた。
「で、そのブツって、もしかしてーー」
「ポーション野菜だよ、もちろん」
イモの成功に味をしめた俺たちは、ポーション栽培の野菜を増やしつつあるところだった。
「あれ上手く使えばガルベス王子にハマるんじゃないか?」
最近判明したのだが、ポーションを使って栽培した野菜には滋養強壮の効果があるようなのだ。ウチの野菜を食べたら病気が治ったなんて手紙が届いたりもしていた。
病気が治ったっていうのは大袈裟だと思うが、食べた人が元気になるというのは間違いないらしい。
だとすれば、ガルベス王子に食べてもらえばいい結果が出る可能性がある。
行く価値はあるだろう。
「じゃあ売り込む方法考えましょうか」
笑顔のセレーネに頷きを返し、俺たちは販売戦略を練り始めた。
「準備を疎かにする者は勝利者にはなれない」
初めて聞いたんだが、家訓だそうだ。
で、情報収集に注力した結果わかったのは、あまりよろしくはない現況だった。
「お父様がーー」
話を聞いたセレーネの顔からは血の気が退いていた。
無理もない。勘当されたとは言え実の父親が国を二分する争いの当事者になっていると聞かされて冷静でいられる者はそうはいないだろう。
今、国内には戦の気配が急速に広がりつつあった。
発端は言わずもがな、バルディンの婚約破棄自爆である。それによって権威や信用の失墜したバルディンに代えて、病弱故に次期国王レースから外れた第一王子ガルベスを再び担ぎ出そうとしているというところまでは聞いていたが、その動きが想像を越えて広がっているのだ。
そして、ガルベスを担ぐ一派の首魁と目されているのがセレーネの父親、グッドリッジ侯爵であったのだ。
「まあ、グッドリッジ家としてはバルディンに味方するわけにもいかんよなあ」
娘を捨てた王子を担ぐってのは風聞が悪いよな。ってか、娘を勘当した時点で風聞を気にする段階は通り過ぎてるか。
「戦争になっちゃうのかしら?」
心配そうにセレーネは眉根を寄せた。
「そこまで短絡的ではないと思うけど、対応策は準備しといた方がいいだろうな」
「そうね……」
セレーネの表情は晴れない。縁が切れたとは言え、気にはなるのだろう。
「よし、行商するか」
「え?」
きょとんとされてしまった。ちょっと唐突過ぎたか。
「行商って?」
「うん。バルディンよりガルベス王子が王様になってくれた方がいいのは間違いないだろ。じゃあ、ガルベス王子の不安点が何かって言えば、健康状態なわけだ。んで、俺たちの手元にはその不安点を解消できるかもしれないブツがある。だとすれば、それを売りに行かない手はないと思わないか?」
「ああ、なるほど。そういうことね」
セレーネは納得して頷いた。
「で、そのブツって、もしかしてーー」
「ポーション野菜だよ、もちろん」
イモの成功に味をしめた俺たちは、ポーション栽培の野菜を増やしつつあるところだった。
「あれ上手く使えばガルベス王子にハマるんじゃないか?」
最近判明したのだが、ポーションを使って栽培した野菜には滋養強壮の効果があるようなのだ。ウチの野菜を食べたら病気が治ったなんて手紙が届いたりもしていた。
病気が治ったっていうのは大袈裟だと思うが、食べた人が元気になるというのは間違いないらしい。
だとすれば、ガルベス王子に食べてもらえばいい結果が出る可能性がある。
行く価値はあるだろう。
「じゃあ売り込む方法考えましょうか」
笑顔のセレーネに頷きを返し、俺たちは販売戦略を練り始めた。
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