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16 大事な時間
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結論から言えば、セレーネは大ヒット作品を生み出した。
揚げたイモは瞬く間に町中に広まり、市民権を得た。おかずとしては言わずもがな、街中で歩きながら食べるファストフードとしても、飲み屋におけるツマミとしても需要は高く、凄まじい勢いで売れに売れまくった。
作り方は簡単だったので、真似するところも現れたのだが、ポーションで栽培したイモで作る方が味がよく、ウチの優位は動かなかった。
「ホントにいい人がお嫁に来てくれたわ」
いまやセレーネはウチの商会のVIPとして一目置かれる存在になっていた。
そう言われる度に本人は顔を真っ赤にして否定するのだが。
「全部ザイオンくんのポーションあってのことですから」
「それはそれで認めてるから、あんたは謙遜しなくてもいいよ」
姉さんにそう言われて、セレーネはやっと称賛を受け入れる。
「セレーネはもっと自信持っていいと思うんだけどな」
「いえいえ、あたしなんて」
これは性格と言ってしまえばそれまでなのだが、個人的には残念なことだと思ってる。自信を持っていろんなことにチャレンジすれば、もっとすごいことができるんじゃないかと思うんだよな。
ま、こういうのは焦ってもしょうがない。とりあえず俺が褒めまくって自信をつけさせるとしよう。
「セレーネと一緒になれた時点で勝ち組決定だよな」
「なーー」
ちょっと唐突すぎたかな? セレーネは真っ赤になって固まっちまった。
一日の仕事を終えて、二人でくつろぎながらお酒を飲んでいたのだが、いい感じに酔ってきたら、つい本音がダダ漏れてしまった。
そんなにおかしなことを言ったつもりはないんだが、セレーネは口をパクパクさせてパニクってる。
「ど、どどどーー」
スタート直後のマラソン大会のような声を発するセレーネ。落ち着こうとしたのか、手にしていたグラスの中身を一息で乾してしまった。
「あーー」
飲んでいたのはそれなりにアルコール度数の高い酒だ。それをそんな飲み方しちゃったらーー
「きゅう……」
可愛らしい声を発して、セレーネはテーブルに突っ伏してしまう。
「おい、大丈夫か!?」
のぞきこんだセレーネの顔はーーこの上なく幸せそうに蕩けきっていた。
「あれ?」
「うふ」
にまあっとセレーネの表情が更に崩れる。
「えへへ、ホントの勝ち組はね、あ・た・し。にゃははー」
「セレーネ?」
完全にキャラが崩壊していらっしゃる。酒で箍が外れたな。
「ザイオンくんはそう言ってくれるけど、あたしにとってはザイオンくんにもらってもらえたことが全てなんです。こんな傷物女をもらってくれる人なんてそうはいないですよ」
「その言い方はやめようぜ。傷物だなんてことは絶対ないから」
「そう言ってくれるザイオンくんだから、あたしが勝ち組になるんですよ」
セレーネの手が伸びてきて、優しく抱きしめられた。
「ザイオンくん、大好きです」
「ああ、俺も大好きだ」
「うふ」
微笑んだ次の瞬間、セレーネは寝息をたて始めた。
ほんわかと温かい気持ちになった。
忙しくなると、ちょっとした会話もなくなりがちだ。そこからすれ違いが生じて駄目になってしまう関係があるというのもよく聞く話だ。でも、それって悲しいことだと思うから、そんなことにならないよう、俺はセレーネとの時間を大事にしようと思う。
俺にとってセレーネ以上に大事なものなどありはしないのだから。
揚げたイモは瞬く間に町中に広まり、市民権を得た。おかずとしては言わずもがな、街中で歩きながら食べるファストフードとしても、飲み屋におけるツマミとしても需要は高く、凄まじい勢いで売れに売れまくった。
作り方は簡単だったので、真似するところも現れたのだが、ポーションで栽培したイモで作る方が味がよく、ウチの優位は動かなかった。
「ホントにいい人がお嫁に来てくれたわ」
いまやセレーネはウチの商会のVIPとして一目置かれる存在になっていた。
そう言われる度に本人は顔を真っ赤にして否定するのだが。
「全部ザイオンくんのポーションあってのことですから」
「それはそれで認めてるから、あんたは謙遜しなくてもいいよ」
姉さんにそう言われて、セレーネはやっと称賛を受け入れる。
「セレーネはもっと自信持っていいと思うんだけどな」
「いえいえ、あたしなんて」
これは性格と言ってしまえばそれまでなのだが、個人的には残念なことだと思ってる。自信を持っていろんなことにチャレンジすれば、もっとすごいことができるんじゃないかと思うんだよな。
ま、こういうのは焦ってもしょうがない。とりあえず俺が褒めまくって自信をつけさせるとしよう。
「セレーネと一緒になれた時点で勝ち組決定だよな」
「なーー」
ちょっと唐突すぎたかな? セレーネは真っ赤になって固まっちまった。
一日の仕事を終えて、二人でくつろぎながらお酒を飲んでいたのだが、いい感じに酔ってきたら、つい本音がダダ漏れてしまった。
そんなにおかしなことを言ったつもりはないんだが、セレーネは口をパクパクさせてパニクってる。
「ど、どどどーー」
スタート直後のマラソン大会のような声を発するセレーネ。落ち着こうとしたのか、手にしていたグラスの中身を一息で乾してしまった。
「あーー」
飲んでいたのはそれなりにアルコール度数の高い酒だ。それをそんな飲み方しちゃったらーー
「きゅう……」
可愛らしい声を発して、セレーネはテーブルに突っ伏してしまう。
「おい、大丈夫か!?」
のぞきこんだセレーネの顔はーーこの上なく幸せそうに蕩けきっていた。
「あれ?」
「うふ」
にまあっとセレーネの表情が更に崩れる。
「えへへ、ホントの勝ち組はね、あ・た・し。にゃははー」
「セレーネ?」
完全にキャラが崩壊していらっしゃる。酒で箍が外れたな。
「ザイオンくんはそう言ってくれるけど、あたしにとってはザイオンくんにもらってもらえたことが全てなんです。こんな傷物女をもらってくれる人なんてそうはいないですよ」
「その言い方はやめようぜ。傷物だなんてことは絶対ないから」
「そう言ってくれるザイオンくんだから、あたしが勝ち組になるんですよ」
セレーネの手が伸びてきて、優しく抱きしめられた。
「ザイオンくん、大好きです」
「ああ、俺も大好きだ」
「うふ」
微笑んだ次の瞬間、セレーネは寝息をたて始めた。
ほんわかと温かい気持ちになった。
忙しくなると、ちょっとした会話もなくなりがちだ。そこからすれ違いが生じて駄目になってしまう関係があるというのもよく聞く話だ。でも、それって悲しいことだと思うから、そんなことにならないよう、俺はセレーネとの時間を大事にしようと思う。
俺にとってセレーネ以上に大事なものなどありはしないのだから。
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