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13 休日の過ごし方 2
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ゆっくりドリブルしながらコート全体に目を配る。
目の前で相対する選手の観察ーー背は俺より少し高い程度。ディフェンスの基本、ステイローはしっかりやってる。ドリブル突破は簡単ではなさそうだ。
一番の点取り屋であるアレンも相手ディフェンスとの駆け引きの真っ最中だ。アレンが簡単に振り切れずにいるところを見ると、相手も中々の実力者のようだ。
ゴール下のポジション争いも激しそうだ。ほぼ同じような体格の二人がせめぎあっている。
なるほど。それじゃあ初手は正攻法でいってみようか。
アイコンタクトに応えてポジションを移したラリーが俺の相手の背後を取る。
ラリーを回り込むようにドリブル。相手はラリーのスクリーンに引っ掛かる。
フリーになった俺にラリーのマーカーがついてくる。
ラリーがゴール下に向かってダッシュ。そこへワンバウンドのパスを送る。
元々俺についていたマーカーを振り切る形でラリーは綺麗なレイアップシュートを決めた。
ピック&ロール。
フォーメーションとしてはありふれたものだが、精度が高いと止めるのは難しいプレーである。
鮮やかに決まったプレーにギャラリーから感嘆の声が上がる。
その後も堅実なプレーで得点を重ねていく。
こっちの地味なオフェンスに対して、相手は個人技を軸とした、かなり派手めのプレーで攻めてくる。見栄えは絶対的に相手の方がいい。当然声援は相手の方に集まる。
それでも試合時間が半分を過ぎた時点でリードしているのはこっちだ。
ふとセレーネを見ると、何やらビミョーな顔をしている。
わかりやすいな。
セレーネの目にも相手の方がカッコよく見えるんだろう。
まあそう慌てんなって。
アレン、ラリーと頷き合う。
身体も温まったし、ボチボチ行くとするかね。
次のオフェンス。これまで通りゆったりドリブルで様子を伺う。相手はパスからの攻めしか警戒していない。
でも、実は俺こういうのも得意なんだよね。
ドリブルのリズムを変え、一瞬で相手を置き去りにする。そのままレイアップを決めた。
相手だけじゃなく、大半のギャラリーまで驚いた顔をしているのがいい気分だ。
どや顔をセレーネに向けると、目と口を真ん丸にしてびっくりしていた。
そこからは一方的な試合になった。チームプレーでも個人技でもこっちの方が上なんだというところを見せつければ、その時点で決着だ。
「いやあ、久しぶりにやったけど、楽しかったな」
立て続けに三試合をこなした後、大きく息をつく。いい汗かいたぜ。
「やっぱりこのチームでやるのはいいな」
「またやろうぜ」
この後用事があるらしいアレンとラリーはさっさと帰っていった。
「ゴメンな。俺ばっかり楽しんじゃって」
結果的に放ったらかしになってしまったセレーネに頭を下げる。
「そんなことないよ。見てるだけでも十分楽しかった」
「そう言ってもらえるのはありがたい」
「ザイオンくん、こんな特技があったんだね。全然知らなかった」
セレーネは満面の笑みだ。メチャクチャ可愛いな、おい。
「性に合ったのと仲間に恵まれたおかげかな」
一応謙遜してみせる。でもまあ仲間に恵まれたのは本当だ。
「あたしの知らないザイオンくんを見れるのは何だかうれしいです」
「それを言うなら、俺もセレーネの意外な一面見てみたいな」
そう言うと、セレーネはわちゃちゃととっちらかった。
「あ、あたしは何にも隠し事はしてないですよ。得意なスポーツもないですし」
嘘は言ってなさそうだけど、この手のことって本人が気づいてないケースが多いよな。何かとんでもない特技を持ってるかもしれない。って言うか、セレーネならきっと何かあると思う。
でも、慌てることはない。これからいくらでも時間はあるんだから。いろんなセレーネに会えることを楽しみにしよう。
とりあえず、今日はいい休日だった。
目の前で相対する選手の観察ーー背は俺より少し高い程度。ディフェンスの基本、ステイローはしっかりやってる。ドリブル突破は簡単ではなさそうだ。
一番の点取り屋であるアレンも相手ディフェンスとの駆け引きの真っ最中だ。アレンが簡単に振り切れずにいるところを見ると、相手も中々の実力者のようだ。
ゴール下のポジション争いも激しそうだ。ほぼ同じような体格の二人がせめぎあっている。
なるほど。それじゃあ初手は正攻法でいってみようか。
アイコンタクトに応えてポジションを移したラリーが俺の相手の背後を取る。
ラリーを回り込むようにドリブル。相手はラリーのスクリーンに引っ掛かる。
フリーになった俺にラリーのマーカーがついてくる。
ラリーがゴール下に向かってダッシュ。そこへワンバウンドのパスを送る。
元々俺についていたマーカーを振り切る形でラリーは綺麗なレイアップシュートを決めた。
ピック&ロール。
フォーメーションとしてはありふれたものだが、精度が高いと止めるのは難しいプレーである。
鮮やかに決まったプレーにギャラリーから感嘆の声が上がる。
その後も堅実なプレーで得点を重ねていく。
こっちの地味なオフェンスに対して、相手は個人技を軸とした、かなり派手めのプレーで攻めてくる。見栄えは絶対的に相手の方がいい。当然声援は相手の方に集まる。
それでも試合時間が半分を過ぎた時点でリードしているのはこっちだ。
ふとセレーネを見ると、何やらビミョーな顔をしている。
わかりやすいな。
セレーネの目にも相手の方がカッコよく見えるんだろう。
まあそう慌てんなって。
アレン、ラリーと頷き合う。
身体も温まったし、ボチボチ行くとするかね。
次のオフェンス。これまで通りゆったりドリブルで様子を伺う。相手はパスからの攻めしか警戒していない。
でも、実は俺こういうのも得意なんだよね。
ドリブルのリズムを変え、一瞬で相手を置き去りにする。そのままレイアップを決めた。
相手だけじゃなく、大半のギャラリーまで驚いた顔をしているのがいい気分だ。
どや顔をセレーネに向けると、目と口を真ん丸にしてびっくりしていた。
そこからは一方的な試合になった。チームプレーでも個人技でもこっちの方が上なんだというところを見せつければ、その時点で決着だ。
「いやあ、久しぶりにやったけど、楽しかったな」
立て続けに三試合をこなした後、大きく息をつく。いい汗かいたぜ。
「やっぱりこのチームでやるのはいいな」
「またやろうぜ」
この後用事があるらしいアレンとラリーはさっさと帰っていった。
「ゴメンな。俺ばっかり楽しんじゃって」
結果的に放ったらかしになってしまったセレーネに頭を下げる。
「そんなことないよ。見てるだけでも十分楽しかった」
「そう言ってもらえるのはありがたい」
「ザイオンくん、こんな特技があったんだね。全然知らなかった」
セレーネは満面の笑みだ。メチャクチャ可愛いな、おい。
「性に合ったのと仲間に恵まれたおかげかな」
一応謙遜してみせる。でもまあ仲間に恵まれたのは本当だ。
「あたしの知らないザイオンくんを見れるのは何だかうれしいです」
「それを言うなら、俺もセレーネの意外な一面見てみたいな」
そう言うと、セレーネはわちゃちゃととっちらかった。
「あ、あたしは何にも隠し事はしてないですよ。得意なスポーツもないですし」
嘘は言ってなさそうだけど、この手のことって本人が気づいてないケースが多いよな。何かとんでもない特技を持ってるかもしれない。って言うか、セレーネならきっと何かあると思う。
でも、慌てることはない。これからいくらでも時間はあるんだから。いろんなセレーネに会えることを楽しみにしよう。
とりあえず、今日はいい休日だった。
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