巻き込まれ婚約破棄~俺の理想はスローライフなんだけど~

オフィス景

文字の大きさ
上 下
13 / 23

13 休日の過ごし方 2

しおりを挟む
 ゆっくりドリブルしながらコート全体に目を配る。

 目の前で相対する選手の観察ーー背は俺より少し高い程度。ディフェンスの基本、ステイローはしっかりやってる。ドリブル突破は簡単ではなさそうだ。

 一番の点取り屋であるアレンも相手ディフェンスとの駆け引きの真っ最中だ。アレンが簡単に振り切れずにいるところを見ると、相手も中々の実力者のようだ。

 ゴール下のポジション争いも激しそうだ。ほぼ同じような体格の二人がせめぎあっている。

 なるほど。それじゃあ初手は正攻法でいってみようか。

 アイコンタクトに応えてポジションを移したラリーが俺の相手の背後を取る。

 ラリーを回り込むようにドリブル。相手はラリーのスクリーンに引っ掛かる。

 フリーになった俺にラリーのマーカーがついてくる。

 ラリーがゴール下に向かってダッシュ。そこへワンバウンドのパスを送る。

 元々俺についていたマーカーを振り切る形でラリーは綺麗なレイアップシュートを決めた。

 ピック&ロール。

 フォーメーションとしてはありふれたものだが、精度が高いと止めるのは難しいプレーである。

 鮮やかに決まったプレーにギャラリーから感嘆の声が上がる。

 その後も堅実なプレーで得点を重ねていく。

 こっちの地味なオフェンスに対して、相手は個人技を軸とした、かなり派手めのプレーで攻めてくる。見栄えは絶対的に相手の方がいい。当然声援は相手の方に集まる。

 それでも試合時間が半分を過ぎた時点でリードしているのはこっちだ。

 ふとセレーネを見ると、何やらビミョーな顔をしている。

 わかりやすいな。

 セレーネの目にも相手の方がカッコよく見えるんだろう。

 まあそう慌てんなって。

 アレン、ラリーと頷き合う。

 身体も温まったし、ボチボチ行くとするかね。

 次のオフェンス。これまで通りゆったりドリブルで様子を伺う。相手はパスからの攻めしか警戒していない。

 でも、実は俺こういうのも得意なんだよね。

 ドリブルのリズムを変え、一瞬で相手を置き去りにする。そのままレイアップを決めた。

 相手だけじゃなく、大半のギャラリーまで驚いた顔をしているのがいい気分だ。

 どや顔をセレーネに向けると、目と口を真ん丸にしてびっくりしていた。

 そこからは一方的な試合になった。チームプレーでも個人技でもこっちの方が上なんだというところを見せつければ、その時点で決着だ。



「いやあ、久しぶりにやったけど、楽しかったな」

 立て続けに三試合をこなした後、大きく息をつく。いい汗かいたぜ。

「やっぱりこのチームでやるのはいいな」

「またやろうぜ」

 この後用事があるらしいアレンとラリーはさっさと帰っていった。

「ゴメンな。俺ばっかり楽しんじゃって」

 結果的に放ったらかしになってしまったセレーネに頭を下げる。

「そんなことないよ。見てるだけでも十分楽しかった」

「そう言ってもらえるのはありがたい」

「ザイオンくん、こんな特技があったんだね。全然知らなかった」

 セレーネは満面の笑みだ。メチャクチャ可愛いな、おい。

「性に合ったのと仲間に恵まれたおかげかな」

 一応謙遜してみせる。でもまあ仲間に恵まれたのは本当だ。

「あたしの知らないザイオンくんを見れるのは何だかうれしいです」

「それを言うなら、俺もセレーネの意外な一面見てみたいな」

 そう言うと、セレーネはわちゃちゃととっちらかった。

「あ、あたしは何にも隠し事はしてないですよ。得意なスポーツもないですし」

 嘘は言ってなさそうだけど、この手のことって本人が気づいてないケースが多いよな。何かとんでもない特技を持ってるかもしれない。って言うか、セレーネならきっと何かあると思う。

 でも、慌てることはない。これからいくらでも時間はあるんだから。いろんなセレーネに会えることを楽しみにしよう。

 とりあえず、今日はいい休日だった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました

Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』 それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。 最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。 そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。 さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】徒花の王妃

つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。 何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。 「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...