6 / 23
6 勝ち目のない戦い
しおりを挟む
朝ーー多分、朝のはず。
小鳥の囀りが聞こえ、カーテンの隙間から陽射しが差し込んで来ている。そこは東側の窓なので、朝であることは間違いないと思う。
それはいいとしてーーこれはどういう状況なんだ?
疑問点は腕の中にあった。
俺の左腕を枕にする形で、世にも幸せそうな顔をしたセレーネがすやすやと眠っている。お互いに服は身につけていたので、やらかしたということはないはずだが……ないよな?
それにしても。
この無防備な表情、可愛すぎて鼻血が出そうなんだが……
寝顔を愛でる一方で、この状況に至るまでの過程を推察してみる。
昨日は昼間っからセレーネの歓迎会が催された。皆が心から歓迎してくれたおかげでセレーネもすんなり溶け込み、非常に楽しい時間を過ごした。
その楽しかった宴会の途中で、記憶がすっぱりと途切れていた。
誰かが酒を混ぜやがったな。
思いつくのはその辺りだ。
で、同じように酔いつぶれたセレーネを一緒にベッドに押し込んだってところか。
ったく、あいつらーー
いい仕事するじゃねえか。
こんなことがなければ、こんなに可愛いセレーネを見れるのはもう少し先になっていたはずだ。何となく得した気分だな。
黙って寝顔を見てるのがいい趣味だと言われないのはわかっているが、せっかく気持ちよさげに眠っているのを起こすのは気の毒だと言い訳を準備しておく。
とりあえずセレーネが目覚めるまではこうしてよう。二度寝も考えたが、この状況で安眠できるほど俺は枯れてねえ。
…よくよく考えてみると、つい十日ほど前まではセレーネとはロクに話したこともなかったんだよな。それが今こうなってるって、どんな運命のイタズラなんだかな。これを仕組んだヤツがもしいるなら会ってみたい。厚く御礼申し上げる。
…待てよ。もしかして一番の立役者ってバルディンのアホになるのか?
まあ、ヤツが婚約破棄なんて言い出さなければ、この状況は生まれてねえよな……
そう考えれば、バルディンにも礼くらい言わなくちゃならんか。でも、顔見るのもやだから、礼は心の中で言っておこう。
その時、寝ぼけたのか、セレーネが俺の胸板にほっぺたをスリスリした。
「ザイオンくん、大好き」
…ヤバい。ヤバ過ぎる。
さすがに寝てる相手にキスしたりゴニョゴニョしたりするのはマズいと思って自重してきたが、こんな可愛くて破壊力満点の攻撃されたら、常識も理性も手の届かないところへ旅立ってしまいそうだ。
このままじゃ本気でヤバい。
顔を見てたらキスしてしまいそうだったので、窒息しない程度にセレーネの頭を抱えこんだ。
ところが、これは失策だった。
今度はセレーネの吐息が生々しく感じられるようになってしまったのだ。熱い息で首筋が溶けそうだ。
うおおおお
もううれしいんだか苦しいんだかわからない。ひとつだけわかるのは、これが続けば色々と駄目になってしまうということだ。
何とか現状を打開したいーーいや、しなくちゃ駄目だ。
起こしてしまうかもしれないが、セレーネの身体を引き離そうと肩に手をかけたら、何を思ったかセレーネはこっちにしがみついてきた。背中に手を回されたおかげで、何だかとんでもなく柔らかい感触が胸に当たる。
…駄目だ……
よく頑張ったよ、俺。でももう限界だ。先に謝っとく。ゴメン、セレーネ。
俺はセレーネを抱く腕に力を込めた。
小鳥の囀りが聞こえ、カーテンの隙間から陽射しが差し込んで来ている。そこは東側の窓なので、朝であることは間違いないと思う。
それはいいとしてーーこれはどういう状況なんだ?
疑問点は腕の中にあった。
俺の左腕を枕にする形で、世にも幸せそうな顔をしたセレーネがすやすやと眠っている。お互いに服は身につけていたので、やらかしたということはないはずだが……ないよな?
それにしても。
この無防備な表情、可愛すぎて鼻血が出そうなんだが……
寝顔を愛でる一方で、この状況に至るまでの過程を推察してみる。
昨日は昼間っからセレーネの歓迎会が催された。皆が心から歓迎してくれたおかげでセレーネもすんなり溶け込み、非常に楽しい時間を過ごした。
その楽しかった宴会の途中で、記憶がすっぱりと途切れていた。
誰かが酒を混ぜやがったな。
思いつくのはその辺りだ。
で、同じように酔いつぶれたセレーネを一緒にベッドに押し込んだってところか。
ったく、あいつらーー
いい仕事するじゃねえか。
こんなことがなければ、こんなに可愛いセレーネを見れるのはもう少し先になっていたはずだ。何となく得した気分だな。
黙って寝顔を見てるのがいい趣味だと言われないのはわかっているが、せっかく気持ちよさげに眠っているのを起こすのは気の毒だと言い訳を準備しておく。
とりあえずセレーネが目覚めるまではこうしてよう。二度寝も考えたが、この状況で安眠できるほど俺は枯れてねえ。
…よくよく考えてみると、つい十日ほど前まではセレーネとはロクに話したこともなかったんだよな。それが今こうなってるって、どんな運命のイタズラなんだかな。これを仕組んだヤツがもしいるなら会ってみたい。厚く御礼申し上げる。
…待てよ。もしかして一番の立役者ってバルディンのアホになるのか?
まあ、ヤツが婚約破棄なんて言い出さなければ、この状況は生まれてねえよな……
そう考えれば、バルディンにも礼くらい言わなくちゃならんか。でも、顔見るのもやだから、礼は心の中で言っておこう。
その時、寝ぼけたのか、セレーネが俺の胸板にほっぺたをスリスリした。
「ザイオンくん、大好き」
…ヤバい。ヤバ過ぎる。
さすがに寝てる相手にキスしたりゴニョゴニョしたりするのはマズいと思って自重してきたが、こんな可愛くて破壊力満点の攻撃されたら、常識も理性も手の届かないところへ旅立ってしまいそうだ。
このままじゃ本気でヤバい。
顔を見てたらキスしてしまいそうだったので、窒息しない程度にセレーネの頭を抱えこんだ。
ところが、これは失策だった。
今度はセレーネの吐息が生々しく感じられるようになってしまったのだ。熱い息で首筋が溶けそうだ。
うおおおお
もううれしいんだか苦しいんだかわからない。ひとつだけわかるのは、これが続けば色々と駄目になってしまうということだ。
何とか現状を打開したいーーいや、しなくちゃ駄目だ。
起こしてしまうかもしれないが、セレーネの身体を引き離そうと肩に手をかけたら、何を思ったかセレーネはこっちにしがみついてきた。背中に手を回されたおかげで、何だかとんでもなく柔らかい感触が胸に当たる。
…駄目だ……
よく頑張ったよ、俺。でももう限界だ。先に謝っとく。ゴメン、セレーネ。
俺はセレーネを抱く腕に力を込めた。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました
Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』
それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。
最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。
そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。
さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる