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3 打ち明け話
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「まずはごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって」
二人きりになったところで、セレーネが頭を下げてきた。
「それはいいよ。セレーネに惚れたのは事実だから」
「え?」
セレーネの目が真ん丸に見開かれる。こうしてみると、本来のセレーネはかなり表情が豊かなんだということがわかる。
「な、何をーー」
「無表情の時のセレーネは近寄りがたかったけど、笑顔だったり困った顔なんかはものすごく可愛かった。あの表情見せられれば、大抵の男は惚れると思うぞ」
「そんなこと……」
うん、その顔もいいな。恥じらう表情ってのは、もしかしたら最強かもしれん。
「あ、あの、ちゃんと言っておきたいことがあるんですけど、聞いてもらえますか?」
「何?」
「あたし、ずっとザイオンくんのことが好きだったんです」
「へ?」
今度は俺の目が丸くなった。
「マジで?」
「はい」
「あてつけってわけじゃなかったの?」
思わず言ってしまうと、セレーネは頬を膨らませた。
「あてつけなんかに使うほどあたしのファーストキスは安くないです」
いやいや、俺的には大バーゲンに感じられたんだけど?
喉元まで出かかった暴言を危ういところで呑み込む。さすがにこれを言ったらまずいということくらいは俺にもわかる。
「フ、ファーストキス?」
「そうですよ」
それは意外だった。セレーネはバルディンの婚約者だったわけで、まあそれなりにすることはしているんだと思っていたのだ。
「結婚するまでは、って断ってたんです。できれば好きな人としたかったから」
「それが俺?」
「はい」
大真面目に頷かれたが、そんな素振りまったく気づかなかったぞ。そもそもロクに話をしたことだってなかったはずだが?
「入学直後に王子がカレニアさんとトラブルになったのって覚えてます?」
カレニアさんというのは、俺たちの学年で常に首席をキープしていた才女である。
「なんとなくは……」
確かテストの点でカレニアさんに負けたバルディンが難癖をつけた件だったよな。王族であることをかさに着たあまりにも理不尽な言いがかりを聞かされて腹が立った記憶がある。
「あの時、王子を恐れて誰も何も言えないでいた中で、理路整然と王子をやり込めたのを見て、興味を持ったんです」
「今にして思えば、もう少し上手いやり方があったよな」
まだガキだったな、と苦笑するしかない。それがきっかけでバルディンに敵認定され、ヤツの取り巻きにいろんな嫌がらせをされる結果になったのは、正直言ってうざかった。その代わりに他のクラスメイトたちは一目おいてくれるようになったので、プラスマイナスで言えば圧倒的にプラスにはなったんだけどな。
「あの時からザイオンくんを目で追うようになって、気がついたら好きになってました」
照れくさそうにしながら、それでもキッパリとセレーネは言った。
「…それはその、なんつーか…ありがとう。すげえうれしいよ」
「でも、この想いを告げる日が来るとは思ってませんでした。あたしは、王子の婚約者だったから」
だよな。そんなことが表沙汰になったら、まず間違いなく大騒動になる。下手すれば、と言うより確実に俺まで処分されたと思う。
「だから、今、本当にうれしいです」
そう言ってセレーネは声を詰まらせた。
そんな風に言われたら、俺の方こそ胸がいっぱいになってしまう。こんな腹黒な男を好きになってくれる女の子なんてもう二度と現れてくれないかもしれない、つーか絶対現れない。
決めた。俺の全てを懸けてセレーネを大切にする。んで、誰よりも幸せにする。
「セレーネ」
「はい」
「改めて言うよーー惚れました。俺とつきあってください」
「はい。喜んで」
快諾を得て、俺はセレーネを抱き寄せ、今度は俺の方から唇を重ねた。
二度目のキスは、初めての時よりも柔らかく、甘く感じられた。
二人きりになったところで、セレーネが頭を下げてきた。
「それはいいよ。セレーネに惚れたのは事実だから」
「え?」
セレーネの目が真ん丸に見開かれる。こうしてみると、本来のセレーネはかなり表情が豊かなんだということがわかる。
「な、何をーー」
「無表情の時のセレーネは近寄りがたかったけど、笑顔だったり困った顔なんかはものすごく可愛かった。あの表情見せられれば、大抵の男は惚れると思うぞ」
「そんなこと……」
うん、その顔もいいな。恥じらう表情ってのは、もしかしたら最強かもしれん。
「あ、あの、ちゃんと言っておきたいことがあるんですけど、聞いてもらえますか?」
「何?」
「あたし、ずっとザイオンくんのことが好きだったんです」
「へ?」
今度は俺の目が丸くなった。
「マジで?」
「はい」
「あてつけってわけじゃなかったの?」
思わず言ってしまうと、セレーネは頬を膨らませた。
「あてつけなんかに使うほどあたしのファーストキスは安くないです」
いやいや、俺的には大バーゲンに感じられたんだけど?
喉元まで出かかった暴言を危ういところで呑み込む。さすがにこれを言ったらまずいということくらいは俺にもわかる。
「フ、ファーストキス?」
「そうですよ」
それは意外だった。セレーネはバルディンの婚約者だったわけで、まあそれなりにすることはしているんだと思っていたのだ。
「結婚するまでは、って断ってたんです。できれば好きな人としたかったから」
「それが俺?」
「はい」
大真面目に頷かれたが、そんな素振りまったく気づかなかったぞ。そもそもロクに話をしたことだってなかったはずだが?
「入学直後に王子がカレニアさんとトラブルになったのって覚えてます?」
カレニアさんというのは、俺たちの学年で常に首席をキープしていた才女である。
「なんとなくは……」
確かテストの点でカレニアさんに負けたバルディンが難癖をつけた件だったよな。王族であることをかさに着たあまりにも理不尽な言いがかりを聞かされて腹が立った記憶がある。
「あの時、王子を恐れて誰も何も言えないでいた中で、理路整然と王子をやり込めたのを見て、興味を持ったんです」
「今にして思えば、もう少し上手いやり方があったよな」
まだガキだったな、と苦笑するしかない。それがきっかけでバルディンに敵認定され、ヤツの取り巻きにいろんな嫌がらせをされる結果になったのは、正直言ってうざかった。その代わりに他のクラスメイトたちは一目おいてくれるようになったので、プラスマイナスで言えば圧倒的にプラスにはなったんだけどな。
「あの時からザイオンくんを目で追うようになって、気がついたら好きになってました」
照れくさそうにしながら、それでもキッパリとセレーネは言った。
「…それはその、なんつーか…ありがとう。すげえうれしいよ」
「でも、この想いを告げる日が来るとは思ってませんでした。あたしは、王子の婚約者だったから」
だよな。そんなことが表沙汰になったら、まず間違いなく大騒動になる。下手すれば、と言うより確実に俺まで処分されたと思う。
「だから、今、本当にうれしいです」
そう言ってセレーネは声を詰まらせた。
そんな風に言われたら、俺の方こそ胸がいっぱいになってしまう。こんな腹黒な男を好きになってくれる女の子なんてもう二度と現れてくれないかもしれない、つーか絶対現れない。
決めた。俺の全てを懸けてセレーネを大切にする。んで、誰よりも幸せにする。
「セレーネ」
「はい」
「改めて言うよーー惚れました。俺とつきあってください」
「はい。喜んで」
快諾を得て、俺はセレーネを抱き寄せ、今度は俺の方から唇を重ねた。
二度目のキスは、初めての時よりも柔らかく、甘く感じられた。
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