ふたつの婚約破棄 ~サレ同士がタッグを組んだら~

オフィス景

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11 嫌がらせ大作戦

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「あんまり楽しい話じゃないんだけどさ、レティがカシムの婚約者に選ばれたのって、どういう理由があったんだ?」

「確かに楽しい話じゃないわね」

 レティの鼻に皺が寄る。なかなか器用な真似するな。

「後悔させてやるって言ったじゃんか。で、どうするのが効果的か考えたら、そこらへんを突っつくのが一番かなと思ったんだ」

「なるほど、そういうことね」

「俺の場合は間違いなくドラゴンライダーとしての力だろうから、そっち方面の嫌がらせになるかな」

「嫌がらせって」

 レティはクスクス笑う。

「直接的な暴力はNGとなれば嫌がらせしかないじゃんか」

 多分今自分は結構悪い笑みを浮かべてるんだろうなという自覚はある。ま、爽やかな顔でする話でもないからな。

「それもそうね」

 そうそう、こんな顔。

「何よ?」

「いや、今レティに鏡を見せたいな、って」

「間に合ってるわ。きっとティムくんと同じような顔してるんでしょうから」

「わははは」

 心の底から可笑しくなってきた。

「レティも悪よのう」

「ティムくんと同じくらいね」

「じゃあ、悪は悪らしく」

「悪だくみに勤しむとしましょうか」



「クジシマの特長としては、鉱物資源が豊富なことかしら」

 レティは軽く顔を上に向け、何かを思い出そうとするような仕草で話している。

「一番多いのは鉄鉱石だけど、金も採れるし、そんなに多くはないけどミスリルやアダマンタイトも採れるみたいよ」

「そりゃすげえな」

 本気で感心した。ミスリルにアダマンタイトと言えば、どちらも武具として超一級の素材だ。騎士や冒険者たちから見れば垂涎の的のはずだ。

「なるほど。希少鉱物が目当てなら、その取り引きを停止するのが効果的な嫌がらせになりそうだな」

 でも、それだけだと今一つインパクトに欠けるかな。他にも産地はあるし、何が何でもクジシマに拘ってるわけではないだろうし。

「他はどうだ?」

「うーん、魔石なんてどうかな?」

「魔石?」

「ここが魔境と隣り合ってるのは知ってる?」

「ああ、魔獣の住み処なんだよな」

 人が住むのには適さないとも聞いたことがある。

「そう。じゃあ魔獣を倒すと、魔石をドロップすることがあるっていうのは?」

「初めて聞いた。そもそも魔石って何だ?」

「魔獣の核、って言えばいいのかな。魔力を含んだ石でね、魔剣や魔道具を作れるの」

「すげえじゃんか!?」

 思わず声が裏返った。魔剣にしても魔道具にしても、便利だが高額過ぎて一般人には手が届かないというシロモノだ。

「それだな」

 クジシマの特産であること。

 希少価値の高さ。

 嫌がらせの材料として最適じゃないか。

 しかもーー

 魔獣を狩れば手に入るとなれば、シルに手伝ってもらえば取得量も増える。増えれば色々便利な物も作れるようになる。

 いいことずくめじゃないか。

 それを話すと、レティの賛同はあっさり得られた。

 じゃあ早速動き出すとしようか。
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