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6 姫様、御乱心
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途中休憩を挟みつつ北へ向かうこと一日半、俺たちはようやくクジシマ王国へとたどり着いた。
「どこへ行けばいいのだ?」
「都へお願いします」
「いきなりドラゴンで乗りつけて大丈夫か?」
間違いなく大騒ぎになるだろう。騒ぎだけならまだいいが、パニックで怪我人とかが出なきゃいいな。
「これからあたしたちがやろうとしてること考えたら、最初にガツンとインパクト与えた方が話を聞いてもらいやすいと思うの」
「そ、そうか?」
その発想は、俺が持っていたレティのイメージとはだいぶズレてる。つーか、真逆だ。もっとこう、なんちゅうか、耐え難きを耐え忍び難きを忍ぶタイプだと思ってたんだが、修正を図る必要がありそうだ。
「ワハハ、見かけによらずなかなか面白い娘だな」
「見かけによりませんか?」
「うむ。自己主張をするタイプには見えんな」
シルの率直な意見に、レティは苦笑した。
「そうですね。実際に今まではそうでした。常に誰かの言うことを聞いて生きてきたと思います。でも、その結果が婚約破棄だったので、これは駄目だと思ったんです」
そう言って、レティは俺を見た。
「あたしを変えたのはティムくんですーーだから、責任取ってくださいね」
「俺!?」
何で? 責任取らなきゃならんのはカシムのバカだろ?
「馬鹿者」
なぜかシルは呆れ声だ。
「どれだけ甲斐性なしなんだ……」
そう言われて、やっと俺はレティの言葉の真意に気づいた。遅ればせながら、しっかりと頷く。
「任せとけ」
「うん。お願いね」
そんな話をしている内に遠くに都が見えてきた。
「あの高台にある城でよいのか?」
「はい、そうです」
近づいていくと、地上がパニックに陥っているのがよくわかった。大慌ての人々が逃げ惑っているが、どこにも行き場がない。結果として道の上で押し合い圧し合いの大渋滞になっている。この分じゃ被害者なしとはいかないだろう。
そりゃあこうなるよな。
まあ、当然と言うか、予想通りの展開だ。
「…ちょっと読み誤ったかも……」
レティの額に冷や汗が光る。
「早めに何とかしないと、怪我人だけじゃすまなくなるぞ」
「…どうしよう……」
「声を拡大してやるから、何か話すがいい」
「え?」
「風魔法で声を地上に届けてやるから、騒ぎを鎮めろ」
「は、はい!」
レティは大きく息を吸った。
「あーー」
止める間もなくーー
「みんな、聞いて! あたし、レティシア!!」
狂暴な声爆弾が地上に降り注いだ。
普通に話せばよかったのだが、声を限りに絶叫してしまったのだ。
結果、聴覚に過度な負担がかかった民衆はその場で意識を喪い、バタバタと倒れ伏した。
「…あーあ……」
眼下には死屍累々という言葉の見本のような光景が広がっている。
「…もしかして、やらかしちゃったかな……?」
もしかしなくても、これ以上ないくらい盛大にやらかしてるよ。
苦笑しか出てこない。
「で、でもほら、パニックは鎮まったよね?」
鎮まったと言うよりは、パニックを叩き潰したと言うのが正しいのではなかろうか。
「我の咆哮より破壊力は上だったな」
「……」
シルの感想がレティにトドメを刺した。
「どこへ行けばいいのだ?」
「都へお願いします」
「いきなりドラゴンで乗りつけて大丈夫か?」
間違いなく大騒ぎになるだろう。騒ぎだけならまだいいが、パニックで怪我人とかが出なきゃいいな。
「これからあたしたちがやろうとしてること考えたら、最初にガツンとインパクト与えた方が話を聞いてもらいやすいと思うの」
「そ、そうか?」
その発想は、俺が持っていたレティのイメージとはだいぶズレてる。つーか、真逆だ。もっとこう、なんちゅうか、耐え難きを耐え忍び難きを忍ぶタイプだと思ってたんだが、修正を図る必要がありそうだ。
「ワハハ、見かけによらずなかなか面白い娘だな」
「見かけによりませんか?」
「うむ。自己主張をするタイプには見えんな」
シルの率直な意見に、レティは苦笑した。
「そうですね。実際に今まではそうでした。常に誰かの言うことを聞いて生きてきたと思います。でも、その結果が婚約破棄だったので、これは駄目だと思ったんです」
そう言って、レティは俺を見た。
「あたしを変えたのはティムくんですーーだから、責任取ってくださいね」
「俺!?」
何で? 責任取らなきゃならんのはカシムのバカだろ?
「馬鹿者」
なぜかシルは呆れ声だ。
「どれだけ甲斐性なしなんだ……」
そう言われて、やっと俺はレティの言葉の真意に気づいた。遅ればせながら、しっかりと頷く。
「任せとけ」
「うん。お願いね」
そんな話をしている内に遠くに都が見えてきた。
「あの高台にある城でよいのか?」
「はい、そうです」
近づいていくと、地上がパニックに陥っているのがよくわかった。大慌ての人々が逃げ惑っているが、どこにも行き場がない。結果として道の上で押し合い圧し合いの大渋滞になっている。この分じゃ被害者なしとはいかないだろう。
そりゃあこうなるよな。
まあ、当然と言うか、予想通りの展開だ。
「…ちょっと読み誤ったかも……」
レティの額に冷や汗が光る。
「早めに何とかしないと、怪我人だけじゃすまなくなるぞ」
「…どうしよう……」
「声を拡大してやるから、何か話すがいい」
「え?」
「風魔法で声を地上に届けてやるから、騒ぎを鎮めろ」
「は、はい!」
レティは大きく息を吸った。
「あーー」
止める間もなくーー
「みんな、聞いて! あたし、レティシア!!」
狂暴な声爆弾が地上に降り注いだ。
普通に話せばよかったのだが、声を限りに絶叫してしまったのだ。
結果、聴覚に過度な負担がかかった民衆はその場で意識を喪い、バタバタと倒れ伏した。
「…あーあ……」
眼下には死屍累々という言葉の見本のような光景が広がっている。
「…もしかして、やらかしちゃったかな……?」
もしかしなくても、これ以上ないくらい盛大にやらかしてるよ。
苦笑しか出てこない。
「で、でもほら、パニックは鎮まったよね?」
鎮まったと言うよりは、パニックを叩き潰したと言うのが正しいのではなかろうか。
「我の咆哮より破壊力は上だったな」
「……」
シルの感想がレティにトドメを刺した。
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