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3 提案(レティシア視点)
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手を引かれるままに会場の外へ出たところで我に返った。
「ティ、ティムくん」
「ああ、ごめん」
ティムくんは慌てたように手を放してくれた。
「……」
「……」
顔を見合わせたけど、何を話していいかわからない。直面した事態が大きすぎて、まだ頭の整理がついていないのだ。
でも、ティムくんはそうじゃなかったらしい。こっちがびっくりするくらいサバサバした表情をしている。
「レティはこれからどうする?」
「……」
どうするって言われても……
「まあ今すぐ決めろって言われても難しいだろうけど、ぶっちゃけ、俺たちもうこの国に居場所はないと思うぜ」
「……」
そうだろうな、というのはわかる。でも、そう簡単に諦めるわけにはいかない。
一方的な通告だったけど、婚約破棄はもう覆ることはないだろう。となれば、自分がこの国にいる理由がなくなってしまう。
第二王子との婚約は、完全な政略結婚だった。大国であるマルドゥークの庇護を得るために第一王女である自分が輿入れする。当の第二王子とはろくに面識もない。何かのパーティーの時に挨拶をしたことがある程度の関係でしかなかった。ただ、それは王族の結婚としてはありふれたものであり、特に不満を抱くようなことではなかった。正直、こんなものだろうと流されていたのだ。
それがいけなかったのだろうか。そんな思いがカシム王子に伝わってしまったのではないだろうか。
だとすれば、悪いのはわたし?
両肩がずっしり重くなった気がする。
国のためと思えばこその婚約だったわけだが、このままでは務めを果たせない。送り出してくれた家族や国民にも顔向けできない。
どうすればいい? どうすれば婚約破棄を撤回してもらえる?
「あんまり考え過ぎない方がいいと思うぞ」
ティムくんがポツリと言った。
「え?」
「国のため、って責任感じてるのかもしれないけど、あのバカにレティの事情を慮る度量はないと思うぞ。単なるワガママだ」
「それは……」
三年、婚約者として付き合ってきたけど、正直ポジティブな印象はあまりない。ティムくんの言う通り、今回の件だって、完全に王子のワガママのはずだ。
「なあ、レティ」
「はい?」
「あいつら、見返してやんねえか?」
「ティ、ティムくん」
「ああ、ごめん」
ティムくんは慌てたように手を放してくれた。
「……」
「……」
顔を見合わせたけど、何を話していいかわからない。直面した事態が大きすぎて、まだ頭の整理がついていないのだ。
でも、ティムくんはそうじゃなかったらしい。こっちがびっくりするくらいサバサバした表情をしている。
「レティはこれからどうする?」
「……」
どうするって言われても……
「まあ今すぐ決めろって言われても難しいだろうけど、ぶっちゃけ、俺たちもうこの国に居場所はないと思うぜ」
「……」
そうだろうな、というのはわかる。でも、そう簡単に諦めるわけにはいかない。
一方的な通告だったけど、婚約破棄はもう覆ることはないだろう。となれば、自分がこの国にいる理由がなくなってしまう。
第二王子との婚約は、完全な政略結婚だった。大国であるマルドゥークの庇護を得るために第一王女である自分が輿入れする。当の第二王子とはろくに面識もない。何かのパーティーの時に挨拶をしたことがある程度の関係でしかなかった。ただ、それは王族の結婚としてはありふれたものであり、特に不満を抱くようなことではなかった。正直、こんなものだろうと流されていたのだ。
それがいけなかったのだろうか。そんな思いがカシム王子に伝わってしまったのではないだろうか。
だとすれば、悪いのはわたし?
両肩がずっしり重くなった気がする。
国のためと思えばこその婚約だったわけだが、このままでは務めを果たせない。送り出してくれた家族や国民にも顔向けできない。
どうすればいい? どうすれば婚約破棄を撤回してもらえる?
「あんまり考え過ぎない方がいいと思うぞ」
ティムくんがポツリと言った。
「え?」
「国のため、って責任感じてるのかもしれないけど、あのバカにレティの事情を慮る度量はないと思うぞ。単なるワガママだ」
「それは……」
三年、婚約者として付き合ってきたけど、正直ポジティブな印象はあまりない。ティムくんの言う通り、今回の件だって、完全に王子のワガママのはずだ。
「なあ、レティ」
「はい?」
「あいつら、見返してやんねえか?」
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