ふたつの婚約破棄 ~サレ同士がタッグを組んだら~

オフィス景

文字の大きさ
上 下
3 / 21

3 提案(レティシア視点)

しおりを挟む
 手を引かれるままに会場の外へ出たところで我に返った。

「ティ、ティムくん」

「ああ、ごめん」

 ティムくんは慌てたように手を放してくれた。

「……」

「……」

 顔を見合わせたけど、何を話していいかわからない。直面した事態が大きすぎて、まだ頭の整理がついていないのだ。

 でも、ティムくんはそうじゃなかったらしい。こっちがびっくりするくらいサバサバした表情をしている。

「レティはこれからどうする?」

「……」

 どうするって言われても……

「まあ今すぐ決めろって言われても難しいだろうけど、ぶっちゃけ、俺たちもうこの国に居場所はないと思うぜ」

「……」

 そうだろうな、というのはわかる。でも、そう簡単に諦めるわけにはいかない。

 一方的な通告だったけど、婚約破棄はもう覆ることはないだろう。となれば、自分がこの国にいる理由がなくなってしまう。

 第二王子との婚約は、完全な政略結婚だった。大国であるマルドゥークの庇護を得るために第一王女である自分が輿入れする。当の第二王子とはろくに面識もない。何かのパーティーの時に挨拶をしたことがある程度の関係でしかなかった。ただ、それは王族の結婚としてはありふれたものであり、特に不満を抱くようなことではなかった。正直、こんなものだろうと流されていたのだ。

 それがいけなかったのだろうか。そんな思いがカシム王子に伝わってしまったのではないだろうか。

 だとすれば、悪いのはわたし?

 両肩がずっしり重くなった気がする。

 国のためと思えばこその婚約だったわけだが、このままでは務めを果たせない。送り出してくれた家族や国民にも顔向けできない。

 どうすればいい?   どうすれば婚約破棄を撤回してもらえる?

「あんまり考え過ぎない方がいいと思うぞ」

 ティムくんがポツリと言った。

「え?」

「国のため、って責任感じてるのかもしれないけど、あのバカにレティの事情を慮る度量はないと思うぞ。単なるワガママだ」

「それは……」

 三年、婚約者として付き合ってきたけど、正直ポジティブな印象はあまりない。ティムくんの言う通り、今回の件だって、完全に王子のワガママのはずだ。

「なあ、レティ」

「はい?」



「あいつら、見返してやんねえか?」



    
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

処理中です...