異界と現世が重なった結果 ～ロリコン認定は不本意です～

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「大丈夫か？」

　一言も文句を言わない少女に訊く。こんな子供が我慢してるというのに恥ずかしくないのか、と怒りが募る。

「あたしは大丈夫。ダイエット慣れしてるから」

「ダイエット？」

　小学生とは思えない台詞に、圭一は奇妙な顔になる。そんなものが必要な体型にも見えないし、そもそも小学生とダイエットという言葉が、圭一の中では結びつかなかったのだ。

「何言ってるの。綺麗な人ほどそれを維持するために努力してるんだからね」

「そ、そうか」

　何となく気圧されてしまう。

「でも、小学生のうちからそんなのに気を使うのってどうかなあ」

　そう言った圭一を少女はジト目で見た。

「お兄ちゃん、彼女いないでしょ」

「ぐ」

「女の子が努力してたら、それは評価してあげなくちゃいけないの。それができないってことは、絶対に彼女いないんでしょ」

「……」

　何をどう反論していいかわからず、圭一は沈黙した。小学生にやり込められる大学生というのもどうかと思うが、対人関係において未熟者である現実をさらけ出す結果になっていた。

「難しいことじゃないわよ。頑張ってる人を見たら、それを褒めてあげればいいだけなんだから」

「…そういうもんかね」

「そうよ。努力を評価されて嬉しくない娘なんていないんだから」

「はいはい」

　気のない返事。少女はぷっと頬を膨らませた。

「それはそうと、お兄ちゃんはダイエットとかしない娘の方が好きなの？」

「別にそこにこだわってるわけじゃないが、まあ健康的に感じるのは確かかな」

　早苗も、スタイルは良かったけど、ダイエットとかしてる風じゃなかったよな。むしろ、飯は人一倍食ってたな。

「誰のこと考えてたの？」

　その質問に、圭一は他愛なくうろたえた。

「ぐ、具体的な相手がいるわけじゃねえよ」

「ふうん」

　圭一の言うことなどまるっきり信じていない表情。おもしろくてしょうがないという顔である。

「で、どんな人なの？」

「だから――」

「別に隠さなくたっていいじゃない。教えてよ。お兄ちゃんの好きな人ってどんな人なの？」

「いねえったらいねえよ」

　少女はぷっと頬を膨らます。

「もしかして、お兄ちゃんって、人を好きになることが恥ずかしいことだと思ってない？」

「そ、そんなことは……」

　反論しようとした圭一だったが、どうにも分が悪い。結局不景気な顔で沈黙するしかなかった。

「それって間違ってるよ。人が人を好きになるのって、素晴らしいことじゃない。少なくともあたしは、好きな人ができたらはっきりそう言うわ」

「人それぞれだろ」

　かなり苦しい。完全に分が悪い。

　小学生にやり込められる自分が情けなくなるが、この手の話が苦手なのはいかんともしがたかった。