異界と現世が重なった結果 ~ロリコン認定は不本意です~

オフィス景

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「やれやれ。『武人の圭一』も形無しだな」

 苦笑混じりの声とともに道場に現れたのは岡中慎吾。医療科の四年生で現在のレンジャーズ会長である。また、学内一の苦労人として、学生はおろか教授陣の中にも知らぬ者はいないと言う有名人である。銀縁の眼鏡をかけた細面の外見は繊細さをイメージさせ、ほぼ印象どおりの性格を持っている。そのため一本突き抜けたメンバーがそろっているレンジャーズの中では苦労が絶えないのである。

 その後ろから美樹本渚も顔を出した。早苗と同じ狩猟科の二年生で、ミス創学大に二年連続で輝く美人である。神秘的な雰囲気を身にまとっているため、近寄りがたく見えることもあるが、根っこは早苗に通じるものがある。

「おはようございまーす。あれ、どうしたんですか、先輩。なんか怒ってません?」

「白々しい」

 早苗の計画を渚が知らないはずがない。当然わかっていて訊いているのだ。

 渚は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「まあまあ先輩。せっかくの合宿じゃないですか。楽しくいきましょうよ」

「その通りだな。今回は海だからな。楽しみだぜ」

 ポージングを決めながら武蔵は言った。鍛え抜いた武蔵の身体は、筋肉フェチが見れば涎をたらさんばかりの見事なものである。本人も見られることに無上の喜びをおぼえるらしく、筋肉を誇示するために冬でも薄着でいるのは有名な話である。

「こっちも楽しみにしてもらっていいですよ。水着新調しましたから」

「おう、そりゃあ楽しみだ」

 武蔵はそう言ったが、圭一の方は表情が冴えない。

「どうした?」

「去年のことを思い出した」

「にゃあ。それでなんでそんな顔になるんですか」

 早苗が不満そうに唇を尖らせた。

「先輩はいい思いをしたんじゃないですか」

「何がいい思いだ」

 圭一は深いため息をついた。

「いい思いじゃねえか。あれを見たのはおまえだけだろ」

「見たくて見たわけじゃねえ」

「見たくないんですか?」

「……」

 圭一は返答に窮した。ここは何と答えてもいい展開にはならないような気がする。見たいと答えれば変質者扱いが待っているだろうし、見たくないと答えれば早苗の理不尽な怒りが待っているのは目に見えている。

 去年の夏合宿。作業を終えた後にみんなで海水浴に行ったのだが、泳いでいる最中に早苗の水着の上が外れてしまったことがあったのだ。その時間近にいた圭一にとってはうれし恥ずかしいアクシデントだったのだが、その後の早苗の反応は強烈だった。見ないようにと圭一の頭を海の中へ叩き込み、上から押さえつけたのだ。後の圭一の述懐によれば「海で泳いでいたはずなのに、気づいたら川にいた」とのことであった。その川の名前は言うまでもないだろう。

「そうよねー。考えてみればあたし先輩に見られちゃってるのよねえ。どうしよ、責任とってもらおうかしら」

「せ、責任!?」

 圭一が目を白黒させる。

「あ、その反応むかつくわ。こんな可愛い娘に責任取ってって言われれば、普通は喜ぶところでしょ」

「人をからかうのもいい加減にしろ。おまえ、心に決めた相手がいるんだろうが」

 歯を剥き出して圭一は怒った。

「はーい」

 邪気たっぷりの笑顔で早苗は答える。

「ったく、そいつの耳に入ってもしらねえぞ」

「大丈夫でーす」

 早苗はあっけらかんと答えた。

「それくらいじゃびくともしませんから」

 しゃらっと言われると、圭一ならずとも腹立たしくなるところである。

 早苗に、心に決めた相手がいるというのは有名な話であった。
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