8 / 8
8 オークの親玉
しおりを挟む
そこは酸鼻を極める戦場だった。
怒濤の勢いで押し寄せるオークの群れと、それを迎え撃つ冒険者たち。正面から衝突した両軍は、必死の戦いを繰り広げていた。
遅れて参戦した形になった俺たちは、ぱっと見回して劣勢っぽいところに突っ込んだ。
「どっせい!」
助走をつけた拳骨を手近のオークに叩き込む。豚顔の頬からは完璧な手応えが返ってきた。
「ぶもっ!?」
奇声をあげたオークが吹っ飛んだ。何体かを巻き込んで倒れ込み、ピクリとも動かなくなる。完璧なワンパンチKOであった。
「……」
驚いて動きを止めたのは味方だけではなかった。オークの側も自分たちよりパワーがある人間を初めて見て、度肝を抜かれていた。
戦場全体に奇妙な静寂が訪れた。
「……」
「……」
拳ひとつでその場の全員を黙らせたわけで、これは気分が良かった。ニヤニヤが止まらん。
そんなに目立つことをすれば、当然オークどものヘイトは俺に集まる。怒りの咆哮をあげたオークが突進してきた。姿勢を低くした、レスリング流のタックルだ。
スピードは申し分ない。かわすのは難しい、見事なタックルだった。
レスリングルールであれば。
俺はひょいと膝を上げた。
グサッ、という擬音が聞こえそうな勢いでオークの顔に膝が突き刺さった。
完璧な一発KO。
知っていれば防げるが、知らなければこうなる。手本のようなKOだった。
ますます注目が集まる。
誰もが俺を化物でも見るような目で見てくる。
湧き上がってくる思いは、笑顔となって面に顕れた。
「さあ、次はどいつだ?」
オークたちをねめつけるが、誰も視線を合わせようとしない。
「……」
ちょっと予想外の反応だ。もっと本能のままに襲いかかってくるものかと思ってたんだが。それとも、本能だけで生きているからこそ力量の差を直感できたということなのか?
いずれにしても、このままお見合いしててもしょうがない。これで格付けが済んだということなら、後の話は簡単だ。
味方を煽るために右手を天に突き上げる。
その手を振り下ろそうとした時、オークの側に動きがあった。
後方から一際大きな個体が現れたのだ。
「でけえ……」
2メートルを大きく超える巨体は強烈な存在感を放ち、周囲を圧している。そいつが纏うオーラだけで強者と知れた。
「オ、オーガキング……」
誰かが絶望的な呻きをもらす。
オーガキングってことは、こいつが親玉か。なるほど。確かに周りの雑魚どもとは格が違うな。
「へへっ」
素晴らしい闘いの予感に、思わず口元が緩む。
進み出たオーガキングに呼応して、俺も前に出る。周りから双方の兵が退き、戦場にエアポケットのような空白地帯が生じた。
対峙してみると、頭一つ以上相手の方がデカい。さすがにここまでデカい相手と闘った経験はない。
けど、それがどうした。
こいつが相手なら、全力を出せる。
そんな確信が俺を昂らせていた。
怒濤の勢いで押し寄せるオークの群れと、それを迎え撃つ冒険者たち。正面から衝突した両軍は、必死の戦いを繰り広げていた。
遅れて参戦した形になった俺たちは、ぱっと見回して劣勢っぽいところに突っ込んだ。
「どっせい!」
助走をつけた拳骨を手近のオークに叩き込む。豚顔の頬からは完璧な手応えが返ってきた。
「ぶもっ!?」
奇声をあげたオークが吹っ飛んだ。何体かを巻き込んで倒れ込み、ピクリとも動かなくなる。完璧なワンパンチKOであった。
「……」
驚いて動きを止めたのは味方だけではなかった。オークの側も自分たちよりパワーがある人間を初めて見て、度肝を抜かれていた。
戦場全体に奇妙な静寂が訪れた。
「……」
「……」
拳ひとつでその場の全員を黙らせたわけで、これは気分が良かった。ニヤニヤが止まらん。
そんなに目立つことをすれば、当然オークどものヘイトは俺に集まる。怒りの咆哮をあげたオークが突進してきた。姿勢を低くした、レスリング流のタックルだ。
スピードは申し分ない。かわすのは難しい、見事なタックルだった。
レスリングルールであれば。
俺はひょいと膝を上げた。
グサッ、という擬音が聞こえそうな勢いでオークの顔に膝が突き刺さった。
完璧な一発KO。
知っていれば防げるが、知らなければこうなる。手本のようなKOだった。
ますます注目が集まる。
誰もが俺を化物でも見るような目で見てくる。
湧き上がってくる思いは、笑顔となって面に顕れた。
「さあ、次はどいつだ?」
オークたちをねめつけるが、誰も視線を合わせようとしない。
「……」
ちょっと予想外の反応だ。もっと本能のままに襲いかかってくるものかと思ってたんだが。それとも、本能だけで生きているからこそ力量の差を直感できたということなのか?
いずれにしても、このままお見合いしててもしょうがない。これで格付けが済んだということなら、後の話は簡単だ。
味方を煽るために右手を天に突き上げる。
その手を振り下ろそうとした時、オークの側に動きがあった。
後方から一際大きな個体が現れたのだ。
「でけえ……」
2メートルを大きく超える巨体は強烈な存在感を放ち、周囲を圧している。そいつが纏うオーラだけで強者と知れた。
「オ、オーガキング……」
誰かが絶望的な呻きをもらす。
オーガキングってことは、こいつが親玉か。なるほど。確かに周りの雑魚どもとは格が違うな。
「へへっ」
素晴らしい闘いの予感に、思わず口元が緩む。
進み出たオーガキングに呼応して、俺も前に出る。周りから双方の兵が退き、戦場にエアポケットのような空白地帯が生じた。
対峙してみると、頭一つ以上相手の方がデカい。さすがにここまでデカい相手と闘った経験はない。
けど、それがどうした。
こいつが相手なら、全力を出せる。
そんな確信が俺を昂らせていた。
0
お気に入りに追加
38
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました
黎
ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。
そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。
家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。
*短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの
つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。
隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる