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8 鍛冶師

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「さて、今日はどうするかな?」

    窓の外は土砂降りの雨だ。こんな日は依頼を受けることはしない。ただ、そうなると何をすればいいのかわからないのだ。このへんはちょっと悲しい。

「とりあえず装備の手入れか」

    これを欠かすと痛い目に遭う。本職には劣るものの、一通りの整備技術は身につけている。そうでないと、ダンジョン内で整備が必要になるかもしれないからだ。そこで整備ができるかどうかで生還率は大分変わる。基本ソロ活動の俺としては、身につけられる技術は全て身につけてきたつもりだ。

「防具は問題ないな」

    防具は基本的に軽装鎧だが、あまりダメージを受けることがないので、通常の手入れで十分だった。

    しかしーー

「剣は問題ありありだな」

    もう五年以上使っている、ごくありふれた鉄製の剣。だが、最近大物を相手にすることが多くなり、負荷がかかりすぎているようだ。

「ここらで剣を新調した方がいいのかな」

    今なら資金的にも余裕があるし、いい機会かもしれないな。

    ということで、剣を新調することにした俺は、武器屋街へと向かった。

    何軒かハシゴしてみたが、気に入る剣は見つからない。なかなか難しいな。

「一から打ってもらうか……」

    費用的には高くつくが、信頼できる鍛冶屋に頼めれば、後々のメンテナンスを含めメリットは大きいはずだ。

    問題は、信頼できる鍛冶屋への伝手だ。

    俺はここでの活動を始めてからまだそれほど日が経っていない。徐々に顔見知りが増えてはいるものの、人脈というほどには達していない。

    であれば、人脈を持っている人を頼ればいい。俺は冒険者ギルドに向かった。

    お目当ての人物は予想通り暇そうにしていた。絶対怒られるからそんなことは言わんけど。

「フィーナ、ちょっといいか?」

「どうしたの?」

「剣を新調しようと思うんだけど、武器屋にいいのがなくてさあ」

「そりゃ武器屋に一級品はないからね。ジェフくらいになれば、きちんとした鍛冶師にうってもらった方がいいと思うよ」

「そのきちんとした鍛冶師に心当たりがないんだよ」

「ああ、そういうこと」

    フィーナは納得して微笑んだ。

「じゃあ紹介してあげようか?」

「実はそれを期待してた」

「ふふっ、いいわよ」

    と、そこでフィーナは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「紹介するのはいいけど、ちょっと変わった人だから、交渉は自分でしてね」

「わかった」

「じゃあ早速行きましょうか」

「え?    業務終わってからでいいよ」

「そんな時間じゃ仕事終わりで飲み始めちゃってるわよ。今日はあたしの方は暇だし、別にいいわよ」

「悪いな。じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」

    こうして無事に紹介してもらえることにはなったんだが、唯一心配なのは変わり者だという部分だな。普通の変わり者なら問題ないが、高レベルの変わり者だった場合は苦労しそうだ。

    とは言っても、会う前から色々考えていてもしょうがない。会ってみて、問題があればその時に考えることにしよう。

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