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4 後始末
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「おい、とんでもねえヤツが現れたぞ」
街に戻るなり駆けつけてくれた冒険者のリーダー格であるサンズさんが興奮した口調で大声をあげた。
「わかってるよ! オーガの群れが現れたんだろ。だから今必死で迎撃態勢整えてるんじゃねえか!!」
門番の衛兵が語気荒く返してくる。
「そんな準備もう必要ねえ! オーガの群れはこいつが一匹残らず片付けちまったからな」
「は?」
衛兵の目が訝しげに細められ、それから胡散臭げな視線で上から下まで観察される。
「ジェフ、角見せてやれ」
オーガの討伐証明である角を取り出して衛兵さんに見せる。
「マジか……」
衛兵さんは絶句してその場に固まった。
「みんな安心しろ! オーガの脅威は去った! ここにいるジェフが全部討伐してくれたぞ!!」
「マジか!?」
「そんなことができるのか!?」
「実際にできてる! 討伐証明もある。オーガの脅威は本当に去ったんだ! 今日は夜通し宴会だー!!」
「「「「「うおおおおーーーーっ!!!!」」」」」
歓喜が炸裂した。
迎撃準備は宴会準備に代わり、街の人々は先程までの陰鬱とした空気から一変した祭りのような雰囲気で作業を進めた。
「冒険者ギルドで精算してくる」
自分は準備を手伝わせてもらえなさそうなので、やることを済ませてしまうことにしたのだ。
ギルドはてんてこ舞いの様子だった。まあ無理もないだろう。オーガの群れの迎撃に注力していたところに、それをたった一人で解決したヤツが現れたと聞いたら、誰だって混乱する。
状況を考えると、原因は俺のような気がするが、俺、悪くないよな?
「あ、ジェフ!」
俺に気づいたフィーナが声をかけてきた。呼ばれたので素直にフィーナの受付へ足を運ぶ。
「素材の換金を頼む」
「あんた、何だか通常運転ね」
「まあな」
言いながら俺はオーガの角と爪を台の上に出す。
「……」
フィーナの表情が固まった。しばらく無言の時間が経過した後、ジトッとした視線に、嫌な予感が膨れあがる。
「…あんただったのね……」
何が、とは訊かない。訊く必要もなく、答えはわかっていたから。
「そ、そうだけど……」
フィーナは全身の酸素を吐き出すような勢いのため息をついた。
「あんたって、ホントに規格外ね。わかってたつもりだったけど、斜め上方修正しなきゃいけないみたいね」
「そこは素直に上方修正でよくないか?」
何でだろう、手柄を立てたはずなのに、思いっきりディスられてる気がする。
「誰が二桁のオーガの群れをソロで討伐できると思うのよ!」
フィーナの声がでかくなってしまい、周りの注目を集めてしまった。
「おいおい、今の話ってーー」
「速報にあったオーガを全滅させたヤツってーー」
「「「あの優男なのか!?」」」
別に優男のつもりはない。そりゃちょっとは細いかも知れんが、必要な筋肉と戦闘能力はちゃんと身についている。
「…ごめん」
大事になってしまったことにフィーナが誤ってきた。
「気にすんな。どうせ遅かれ早かれバレる話だ」
秘匿する気ならそもそも素材の買取を頼んだりしない。俺にとっては織り込み済みの展開であった。
「ま、全部無事に済んだんだ。この後の祭りを楽しもうぜ」
「そうね。そうしましょうか」
ようやくフィーナにも笑顔が戻った。それだけで俺は満足だった。
街に戻るなり駆けつけてくれた冒険者のリーダー格であるサンズさんが興奮した口調で大声をあげた。
「わかってるよ! オーガの群れが現れたんだろ。だから今必死で迎撃態勢整えてるんじゃねえか!!」
門番の衛兵が語気荒く返してくる。
「そんな準備もう必要ねえ! オーガの群れはこいつが一匹残らず片付けちまったからな」
「は?」
衛兵の目が訝しげに細められ、それから胡散臭げな視線で上から下まで観察される。
「ジェフ、角見せてやれ」
オーガの討伐証明である角を取り出して衛兵さんに見せる。
「マジか……」
衛兵さんは絶句してその場に固まった。
「みんな安心しろ! オーガの脅威は去った! ここにいるジェフが全部討伐してくれたぞ!!」
「マジか!?」
「そんなことができるのか!?」
「実際にできてる! 討伐証明もある。オーガの脅威は本当に去ったんだ! 今日は夜通し宴会だー!!」
「「「「「うおおおおーーーーっ!!!!」」」」」
歓喜が炸裂した。
迎撃準備は宴会準備に代わり、街の人々は先程までの陰鬱とした空気から一変した祭りのような雰囲気で作業を進めた。
「冒険者ギルドで精算してくる」
自分は準備を手伝わせてもらえなさそうなので、やることを済ませてしまうことにしたのだ。
ギルドはてんてこ舞いの様子だった。まあ無理もないだろう。オーガの群れの迎撃に注力していたところに、それをたった一人で解決したヤツが現れたと聞いたら、誰だって混乱する。
状況を考えると、原因は俺のような気がするが、俺、悪くないよな?
「あ、ジェフ!」
俺に気づいたフィーナが声をかけてきた。呼ばれたので素直にフィーナの受付へ足を運ぶ。
「素材の換金を頼む」
「あんた、何だか通常運転ね」
「まあな」
言いながら俺はオーガの角と爪を台の上に出す。
「……」
フィーナの表情が固まった。しばらく無言の時間が経過した後、ジトッとした視線に、嫌な予感が膨れあがる。
「…あんただったのね……」
何が、とは訊かない。訊く必要もなく、答えはわかっていたから。
「そ、そうだけど……」
フィーナは全身の酸素を吐き出すような勢いのため息をついた。
「あんたって、ホントに規格外ね。わかってたつもりだったけど、斜め上方修正しなきゃいけないみたいね」
「そこは素直に上方修正でよくないか?」
何でだろう、手柄を立てたはずなのに、思いっきりディスられてる気がする。
「誰が二桁のオーガの群れをソロで討伐できると思うのよ!」
フィーナの声がでかくなってしまい、周りの注目を集めてしまった。
「おいおい、今の話ってーー」
「速報にあったオーガを全滅させたヤツってーー」
「「「あの優男なのか!?」」」
別に優男のつもりはない。そりゃちょっとは細いかも知れんが、必要な筋肉と戦闘能力はちゃんと身についている。
「…ごめん」
大事になってしまったことにフィーナが誤ってきた。
「気にすんな。どうせ遅かれ早かれバレる話だ」
秘匿する気ならそもそも素材の買取を頼んだりしない。俺にとっては織り込み済みの展開であった。
「ま、全部無事に済んだんだ。この後の祭りを楽しもうぜ」
「そうね。そうしましょうか」
ようやくフィーナにも笑顔が戻った。それだけで俺は満足だった。
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