愚兄剣帝 ~頭が悪いと実家を追放されたけど、この剣があれば生きていけます~

オフィス景

文字の大きさ
上 下
3 / 8

3 オーガ討伐

しおりを挟む
    時間がもったいないので、早速薬草採取に向かう。ああは言ったが、依頼は依頼できちんとやるつもりだ。討伐はあくまでもついでがあればの話だ。

    街から一時間ほど歩いたところにある森の入口付近が採取ポイントと聞いたので、そこを目指す。

「ボチボチかな」

    森が見えてきたところで、前方で異変が発生した。森の方から大勢の人が泡を食った様子で走って来たのだ。

「何だ?」

    ただならぬ様子に臨戦態勢を取る。

「おい、早く逃げろ!   オーガの群れだ!!」

「オーガの群れ!?」

    そりゃあ大事だ。オーガは単独でも強力な魔物だが、群れともなれば災害レベルだ。冒険者で対応できる話ではない。国軍に出動を要請しなければならない。

    普通ならば。

    群れの規模にもよるが、十体くらいまでならなんとかなる。

「何体くらいいた?」

「正確にはわからんが、十体くらいはいるぞ」

「わかった。俺が足止めしとくから、応援を呼んできてくれ」

「足止めってーー」

「大丈夫だから。ごちゃごちゃ言ってる間に早く援軍呼んできてください」

「わ、わかった。すまんが頼む!」

    走り去る冒険者を見送って、俺は正面に向き直った。オーガの群れはかなり近づいていて、荒くれる様子もはっきり見てとれた。

「十二体か。少し多いが、まあ、誤差の範囲内だな」

    これくらいなら慌てることもない。落ち着いて剣を抜き、迫りくるオーガと対峙する。

「誰も見てないし、本気出すか」

    長引かせて、戦ってるところを誰かに見られたくない。

    さっさと片付けよう。

「ブラッディクロス!」

    完全に間合いの 外だが、構わずに剣を縦横に一振ずつする。すると、十字の衝撃波がオーガの群れに向かって疾る。

    疾った衝撃波が前四体を切り裂き、地に倒す。

    怯んだオーガもいたが、そのほとんどは速度を落とさず、怒り狂いながら更に迫りつつある。

「実力差も見抜けないようじゃ長生きできねえぜ」

    剣の間合いに踏み込んできた瞬間、剣を振る。オーガは基本的にデカいので、普通にやれば届くのは精々腹までなのだが、そこは問題ない。深く踏み込み、深く切り裂けばいい。

    とまあ言うだけなら簡単だが、普通はできない。オーガの突進に対して深く踏み込むなんてのは自殺行為に等しいのだ。

    だが、オーガを圧倒するスピードがあれば問題はない。そして俺にはそのスピードがあった。

    剣を振るいながらオーガの群れの中を走り抜ける。

    抜けたところで鍔なりの音を立てて剣を納めると、オーガは全て地に伏せた。上手く仕留め切れたようだ。

    爪や角など需要のある部位を採取して、身体は燃やした。さすがにオーガの肉は食いたくない。

    そうして帰路に就き、しばらく行ったところで、街の方から冒険者の集団が駆けてきた。総勢で十人ほどか、オーガを相手取るには不足だが、オーガの群れと聞いて尚駆けつけてくれたのが嬉しかった。

「おう、無事だったか」

「ええ。おかげさまで何とかなりました」

「へ?」

    最初に援軍を呼びに行った男が間抜けな声をあげた。

「そう言えばオーガはどこに?」

「全部倒しましたよ」

「「「何ぃーーーーっ!?」」」

「十体はいただろう?」

「そうですね。十二体いました」

「それを全部倒したってーー幾らなんでもーー」

「一応角と爪は回収しときました」

    言いながらストレージから素材を取り出す。それを見ればさすがに信じてくれた。

「マジか……」

「一体どうやったらオーガの群れをソロで討伐できるんだ?」

「その話は後にしよう。今街はパニックになってる。少しでも早くみんなを安心させたい」

    それはごもっともな話だったので、俺たちは帰り道を急いだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...