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3 オーガ討伐
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時間がもったいないので、早速薬草採取に向かう。ああは言ったが、依頼は依頼できちんとやるつもりだ。討伐はあくまでもついでがあればの話だ。
街から一時間ほど歩いたところにある森の入口付近が採取ポイントと聞いたので、そこを目指す。
「ボチボチかな」
森が見えてきたところで、前方で異変が発生した。森の方から大勢の人が泡を食った様子で走って来たのだ。
「何だ?」
ただならぬ様子に臨戦態勢を取る。
「おい、早く逃げろ! オーガの群れだ!!」
「オーガの群れ!?」
そりゃあ大事だ。オーガは単独でも強力な魔物だが、群れともなれば災害レベルだ。冒険者で対応できる話ではない。国軍に出動を要請しなければならない。
普通ならば。
群れの規模にもよるが、十体くらいまでならなんとかなる。
「何体くらいいた?」
「正確にはわからんが、十体くらいはいるぞ」
「わかった。俺が足止めしとくから、応援を呼んできてくれ」
「足止めってーー」
「大丈夫だから。ごちゃごちゃ言ってる間に早く援軍呼んできてください」
「わ、わかった。すまんが頼む!」
走り去る冒険者を見送って、俺は正面に向き直った。オーガの群れはかなり近づいていて、荒くれる様子もはっきり見てとれた。
「十二体か。少し多いが、まあ、誤差の範囲内だな」
これくらいなら慌てることもない。落ち着いて剣を抜き、迫りくるオーガと対峙する。
「誰も見てないし、本気出すか」
長引かせて、戦ってるところを誰かに見られたくない。
さっさと片付けよう。
「ブラッディクロス!」
完全に間合いの 外だが、構わずに剣を縦横に一振ずつする。すると、十字の衝撃波がオーガの群れに向かって疾る。
疾った衝撃波が前四体を切り裂き、地に倒す。
怯んだオーガもいたが、そのほとんどは速度を落とさず、怒り狂いながら更に迫りつつある。
「実力差も見抜けないようじゃ長生きできねえぜ」
剣の間合いに踏み込んできた瞬間、剣を振る。オーガは基本的にデカいので、普通にやれば届くのは精々腹までなのだが、そこは問題ない。深く踏み込み、深く切り裂けばいい。
とまあ言うだけなら簡単だが、普通はできない。オーガの突進に対して深く踏み込むなんてのは自殺行為に等しいのだ。
だが、オーガを圧倒するスピードがあれば問題はない。そして俺にはそのスピードがあった。
剣を振るいながらオーガの群れの中を走り抜ける。
抜けたところで鍔なりの音を立てて剣を納めると、オーガは全て地に伏せた。上手く仕留め切れたようだ。
爪や角など需要のある部位を採取して、身体は燃やした。さすがにオーガの肉は食いたくない。
そうして帰路に就き、しばらく行ったところで、街の方から冒険者の集団が駆けてきた。総勢で十人ほどか、オーガを相手取るには不足だが、オーガの群れと聞いて尚駆けつけてくれたのが嬉しかった。
「おう、無事だったか」
「ええ。おかげさまで何とかなりました」
「へ?」
最初に援軍を呼びに行った男が間抜けな声をあげた。
「そう言えばオーガはどこに?」
「全部倒しましたよ」
「「「何ぃーーーーっ!?」」」
「十体はいただろう?」
「そうですね。十二体いました」
「それを全部倒したってーー幾らなんでもーー」
「一応角と爪は回収しときました」
言いながらストレージから素材を取り出す。それを見ればさすがに信じてくれた。
「マジか……」
「一体どうやったらオーガの群れをソロで討伐できるんだ?」
「その話は後にしよう。今街はパニックになってる。少しでも早くみんなを安心させたい」
それはごもっともな話だったので、俺たちは帰り道を急いだ。
街から一時間ほど歩いたところにある森の入口付近が採取ポイントと聞いたので、そこを目指す。
「ボチボチかな」
森が見えてきたところで、前方で異変が発生した。森の方から大勢の人が泡を食った様子で走って来たのだ。
「何だ?」
ただならぬ様子に臨戦態勢を取る。
「おい、早く逃げろ! オーガの群れだ!!」
「オーガの群れ!?」
そりゃあ大事だ。オーガは単独でも強力な魔物だが、群れともなれば災害レベルだ。冒険者で対応できる話ではない。国軍に出動を要請しなければならない。
普通ならば。
群れの規模にもよるが、十体くらいまでならなんとかなる。
「何体くらいいた?」
「正確にはわからんが、十体くらいはいるぞ」
「わかった。俺が足止めしとくから、応援を呼んできてくれ」
「足止めってーー」
「大丈夫だから。ごちゃごちゃ言ってる間に早く援軍呼んできてください」
「わ、わかった。すまんが頼む!」
走り去る冒険者を見送って、俺は正面に向き直った。オーガの群れはかなり近づいていて、荒くれる様子もはっきり見てとれた。
「十二体か。少し多いが、まあ、誤差の範囲内だな」
これくらいなら慌てることもない。落ち着いて剣を抜き、迫りくるオーガと対峙する。
「誰も見てないし、本気出すか」
長引かせて、戦ってるところを誰かに見られたくない。
さっさと片付けよう。
「ブラッディクロス!」
完全に間合いの 外だが、構わずに剣を縦横に一振ずつする。すると、十字の衝撃波がオーガの群れに向かって疾る。
疾った衝撃波が前四体を切り裂き、地に倒す。
怯んだオーガもいたが、そのほとんどは速度を落とさず、怒り狂いながら更に迫りつつある。
「実力差も見抜けないようじゃ長生きできねえぜ」
剣の間合いに踏み込んできた瞬間、剣を振る。オーガは基本的にデカいので、普通にやれば届くのは精々腹までなのだが、そこは問題ない。深く踏み込み、深く切り裂けばいい。
とまあ言うだけなら簡単だが、普通はできない。オーガの突進に対して深く踏み込むなんてのは自殺行為に等しいのだ。
だが、オーガを圧倒するスピードがあれば問題はない。そして俺にはそのスピードがあった。
剣を振るいながらオーガの群れの中を走り抜ける。
抜けたところで鍔なりの音を立てて剣を納めると、オーガは全て地に伏せた。上手く仕留め切れたようだ。
爪や角など需要のある部位を採取して、身体は燃やした。さすがにオーガの肉は食いたくない。
そうして帰路に就き、しばらく行ったところで、街の方から冒険者の集団が駆けてきた。総勢で十人ほどか、オーガを相手取るには不足だが、オーガの群れと聞いて尚駆けつけてくれたのが嬉しかった。
「おう、無事だったか」
「ええ。おかげさまで何とかなりました」
「へ?」
最初に援軍を呼びに行った男が間抜けな声をあげた。
「そう言えばオーガはどこに?」
「全部倒しましたよ」
「「「何ぃーーーーっ!?」」」
「十体はいただろう?」
「そうですね。十二体いました」
「それを全部倒したってーー幾らなんでもーー」
「一応角と爪は回収しときました」
言いながらストレージから素材を取り出す。それを見ればさすがに信じてくれた。
「マジか……」
「一体どうやったらオーガの群れをソロで討伐できるんだ?」
「その話は後にしよう。今街はパニックになってる。少しでも早くみんなを安心させたい」
それはごもっともな話だったので、俺たちは帰り道を急いだ。
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