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27 唐揚げ食いたい
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「ああ、唐揚げ食いてえなあ」
一度そう思ってしまうと、もうダメだ。頭の中が唐揚げ一色になってしまった。
「ーーというわけで、一狩り行ってくるわ」
「…何がというわけなのか、さっぱりわからないんだけど……」
「いや、作りたい料理があるんだけどさ、手持ちの食材だとどうもしっくりこないんだよ」
そう。こっちの世界には食用に適した鶏肉がないのだ。色々試してみたのだが、鶏の唐揚げに比肩する食材には巡りあっていない。
「何を狩るつもりなの?」
「ワイバーン?」
「ワイバーン!?」
リイナちゃんが素っ頓狂な声をあげた。
「何言ってるの!? 死ぬ気!?」
「ああ、それについては大丈夫。ゲンさん、ソロでドラゴン狩れる人だから」
「え!?」
化物を見る目で見られた。
「…そんな人、本当にいるんですか……?」
「それがここにいるのよ」
カレンさんが微苦笑する。
「初めてゲンさんに会った時って、わたしドラゴンに食われそうになってたのよ。その絶対絶命のところをゲンさんに助けてもらったの」
「そんなことがあったんですか」
「そうなのよ。だから、危険かどうかって話になれば全然心配しないのよね」
苦笑するカレンさん。
「まあ、そういうわけだから、ちょっくら行ってくるわ」
狩りは順調に進み、三日後の夕方には十分な猟果を挙げて店に戻って来ることができた。
「おかえりなさい。どうでした?」
「いっぱい狩れたぞ。運良く群れに遭遇できてな」
「運良く、ね……」
カレンさんの顔がひきつる。
言いたいことはわかる。普通ならワイバーンの群れに遭遇するってのは災厄以外の何物でもないはずだ。
でもまあ、そこはそれ。オークなどよりは手強かったが、特に問題はなかった。
「じゃあ早速やろうか」
狩った段階で血抜きをして、捌いて、できるものは下拵えまでした後で保存したので、すぐに調理に取りかかれる。
まずは低温の油でじっくり揚げる。
一旦肉をあげ、休ませる。
その間に油の温度を上げる。
高温の油に肉を戻し、約一分。
表面カリッ、中身はジュワッ、の美味なる唐揚げの出来上がりだ。
余談だが、この二度揚げの技法を確立した人は天才だと思う。何でこんなこと思いついたのか、いっぺん脳の中身を見てみたいものだ。
見知らぬ先人に感謝の念を送ったところで、待ちきれなくなった三人から催促が飛んできた。
「すっごくいい匂いがしてくるんですけど」
「お腹すいたー」
「これ以上焦らされたら、わたし、どうなるかわかりません」
別に焦らしてるわけじゃないんだけどな。
苦笑しながら山盛りの唐揚げをテーブルに運ぶ。
期待と飢えが入り交じった視線が三対、唐揚げに突き刺さる。試しに皿を動かしてみたら、きれいにトレースしてきた。
確かにこれ以上はヤバそうだ。
テーブルの中央に皿を置き、それぞれの席に着く。
「いただきます」
言い終わるかどうかのタイミングで手が動いた。
「あーー」
熱いから気をつけろよ、と言いかけた言葉は最後まで続かなかった。
「「「熱っつ!?」」」
…ったく、揃いも揃って……
一度そう思ってしまうと、もうダメだ。頭の中が唐揚げ一色になってしまった。
「ーーというわけで、一狩り行ってくるわ」
「…何がというわけなのか、さっぱりわからないんだけど……」
「いや、作りたい料理があるんだけどさ、手持ちの食材だとどうもしっくりこないんだよ」
そう。こっちの世界には食用に適した鶏肉がないのだ。色々試してみたのだが、鶏の唐揚げに比肩する食材には巡りあっていない。
「何を狩るつもりなの?」
「ワイバーン?」
「ワイバーン!?」
リイナちゃんが素っ頓狂な声をあげた。
「何言ってるの!? 死ぬ気!?」
「ああ、それについては大丈夫。ゲンさん、ソロでドラゴン狩れる人だから」
「え!?」
化物を見る目で見られた。
「…そんな人、本当にいるんですか……?」
「それがここにいるのよ」
カレンさんが微苦笑する。
「初めてゲンさんに会った時って、わたしドラゴンに食われそうになってたのよ。その絶対絶命のところをゲンさんに助けてもらったの」
「そんなことがあったんですか」
「そうなのよ。だから、危険かどうかって話になれば全然心配しないのよね」
苦笑するカレンさん。
「まあ、そういうわけだから、ちょっくら行ってくるわ」
狩りは順調に進み、三日後の夕方には十分な猟果を挙げて店に戻って来ることができた。
「おかえりなさい。どうでした?」
「いっぱい狩れたぞ。運良く群れに遭遇できてな」
「運良く、ね……」
カレンさんの顔がひきつる。
言いたいことはわかる。普通ならワイバーンの群れに遭遇するってのは災厄以外の何物でもないはずだ。
でもまあ、そこはそれ。オークなどよりは手強かったが、特に問題はなかった。
「じゃあ早速やろうか」
狩った段階で血抜きをして、捌いて、できるものは下拵えまでした後で保存したので、すぐに調理に取りかかれる。
まずは低温の油でじっくり揚げる。
一旦肉をあげ、休ませる。
その間に油の温度を上げる。
高温の油に肉を戻し、約一分。
表面カリッ、中身はジュワッ、の美味なる唐揚げの出来上がりだ。
余談だが、この二度揚げの技法を確立した人は天才だと思う。何でこんなこと思いついたのか、いっぺん脳の中身を見てみたいものだ。
見知らぬ先人に感謝の念を送ったところで、待ちきれなくなった三人から催促が飛んできた。
「すっごくいい匂いがしてくるんですけど」
「お腹すいたー」
「これ以上焦らされたら、わたし、どうなるかわかりません」
別に焦らしてるわけじゃないんだけどな。
苦笑しながら山盛りの唐揚げをテーブルに運ぶ。
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確かにこれ以上はヤバそうだ。
テーブルの中央に皿を置き、それぞれの席に着く。
「いただきます」
言い終わるかどうかのタイミングで手が動いた。
「あーー」
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「「「熱っつ!?」」」
…ったく、揃いも揃って……
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