38 / 44
38 丼の普及
しおりを挟む
米を仕入れられるようになって、メニューの幅が大きく広がった。
そう、丼の導入である。
カツ丼。
牛丼。
親子丼。
異論反論はあると思うが、俺が考える肉系丼のベスト3だ。
この三つを異世界風にアレンジしたものをメニューに加えたところ、控えめに言ってばかうけした。
最初は物珍しさからだったと思うのだが、すぐに贔屓の丼論争が起こるレベルにまで定着した。
更にそこからリクエストにより派生系の丼も生まれてくる。
カツ丼はソースカツ丼に。
牛丼は豚丼(焼き含む)に。
親子丼は他人丼に。
といった具合だ。
「まったくけしからんな」
そんなことを言いながらカツ丼をかっ食らっているのはアレックスさん。この先帝陛下、一度は王都に戻ったものの、一月もしないうちに舞い戻ってきた。しかも、王都を引き払って完全に引っ越して来たのだ。自由過ぎるのにも程があるだろ。
ただ、その動機が「俺の料理を気に入ってくれた」ということなので、俺があれこれ言うのは筋が違くなる。
アレックスさんだけじゃなく、レイアさんも楽しそうにしているので、野暮なツッコミはやめておこう。
「これは大変に素晴らしい料理ですね」
カツ丼がちょっと重い、というレイアさんのお気に入りは親子丼だ。俺の記憶が確かなら昨日から五食連続で親子丼を食しているのではなかろうか。
「とっても美味しいわ。ああ、こんなに幸せでいいのかしら」
いやいや、レイアさん、そこまで言ってもらえる俺の方が幸せ者ですよ。
料理を作る手にも自然と力が入る。
この二人に代表されるように、男性陣はカツ丼、女性陣は親子丼の支持率が高いようだ。
ただ、それはあくまでも一般論で、もちろんそれが当てはまらない人もいる。
「ゲンさん、カツ丼ダブルダブルでお願いします」
「はいよ」
肉ダブル、卵ダブルでダブルダブル。
肉体労働者に人気のメニューだが、注文したのはアスカさんだ。
曰く、「消費したのよりほんの少し多い」カロリーを摂取するのにちょうどいいんだそうだ。
実はアスカさんもこの街に居を移していた。この街に米を持ち込んだことを功績とみなされ、アレックスさんご夫妻の衛士として抜擢されたのだ。
主従というよりは年の離れた友人といった雰囲気を醸し出している関係は傍からは理想的に見える。
アスカさんもイキイキして楽しそうだし、ウィンウィンの関係なんだろう。
できあがったカツ丼を出すと、アスカさんは満面の笑みでかっこんでいく。見ていて気持ちのいい食いっぷりだ。
「こうやって毎日ゲンさんのご飯食べられるのってホントに幸せ」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないかーーもう一丁いくか?」
「はい! そしたら牛丼特盛でお願いします!」
「メガ盛りもできるけど?」
「じゃあそれで!」
即答が返ってきた。
この人、絶対フードファイターだったんだろうな。
薄々わかってはいたのだが恐らく間違いないだろう。
まあ、それを追及するつもりはないけどな。俺が作ったものを美味しく食べてくれるならそれだけでいい。
そう、丼の導入である。
カツ丼。
牛丼。
親子丼。
異論反論はあると思うが、俺が考える肉系丼のベスト3だ。
この三つを異世界風にアレンジしたものをメニューに加えたところ、控えめに言ってばかうけした。
最初は物珍しさからだったと思うのだが、すぐに贔屓の丼論争が起こるレベルにまで定着した。
更にそこからリクエストにより派生系の丼も生まれてくる。
カツ丼はソースカツ丼に。
牛丼は豚丼(焼き含む)に。
親子丼は他人丼に。
といった具合だ。
「まったくけしからんな」
そんなことを言いながらカツ丼をかっ食らっているのはアレックスさん。この先帝陛下、一度は王都に戻ったものの、一月もしないうちに舞い戻ってきた。しかも、王都を引き払って完全に引っ越して来たのだ。自由過ぎるのにも程があるだろ。
ただ、その動機が「俺の料理を気に入ってくれた」ということなので、俺があれこれ言うのは筋が違くなる。
アレックスさんだけじゃなく、レイアさんも楽しそうにしているので、野暮なツッコミはやめておこう。
「これは大変に素晴らしい料理ですね」
カツ丼がちょっと重い、というレイアさんのお気に入りは親子丼だ。俺の記憶が確かなら昨日から五食連続で親子丼を食しているのではなかろうか。
「とっても美味しいわ。ああ、こんなに幸せでいいのかしら」
いやいや、レイアさん、そこまで言ってもらえる俺の方が幸せ者ですよ。
料理を作る手にも自然と力が入る。
この二人に代表されるように、男性陣はカツ丼、女性陣は親子丼の支持率が高いようだ。
ただ、それはあくまでも一般論で、もちろんそれが当てはまらない人もいる。
「ゲンさん、カツ丼ダブルダブルでお願いします」
「はいよ」
肉ダブル、卵ダブルでダブルダブル。
肉体労働者に人気のメニューだが、注文したのはアスカさんだ。
曰く、「消費したのよりほんの少し多い」カロリーを摂取するのにちょうどいいんだそうだ。
実はアスカさんもこの街に居を移していた。この街に米を持ち込んだことを功績とみなされ、アレックスさんご夫妻の衛士として抜擢されたのだ。
主従というよりは年の離れた友人といった雰囲気を醸し出している関係は傍からは理想的に見える。
アスカさんもイキイキして楽しそうだし、ウィンウィンの関係なんだろう。
できあがったカツ丼を出すと、アスカさんは満面の笑みでかっこんでいく。見ていて気持ちのいい食いっぷりだ。
「こうやって毎日ゲンさんのご飯食べられるのってホントに幸せ」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないかーーもう一丁いくか?」
「はい! そしたら牛丼特盛でお願いします!」
「メガ盛りもできるけど?」
「じゃあそれで!」
即答が返ってきた。
この人、絶対フードファイターだったんだろうな。
薄々わかってはいたのだが恐らく間違いないだろう。
まあ、それを追及するつもりはないけどな。俺が作ったものを美味しく食べてくれるならそれだけでいい。
0
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
妖精王オベロンの異世界生活
悠十
ファンタジー
ある日、サラリーマンの佐々木良太は車に轢かれそうになっていたお婆さんを庇って死んでしまった。
それは、良太が勤める会社が世界初の仮想空間による体感型ゲームを世界に発表し、良太がGMキャラの一人に、所謂『中の人』選ばれた、そんな希望に満ち溢れた、ある日の事だった。
お婆さんを助けた事に後悔はないが、未練があった良太の魂を拾い上げたのは、良太が助けたお婆さんだった。
彼女は、異世界の女神様だったのだ。
女神様は良太に提案する。
「私の管理する世界に転生しませんか?」
そして、良太は女神様の管理する世界に『妖精王オベロン』として転生する事になった。
そこから始まる、妖精王オベロンの異世界生活。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
二人は互いに『王族』である事を隠している
駄作プロ
ファンタジー
プロットを作り直すので10月は更新をお休みします。
あらすじ
「「彼に(彼女に)自分の正体がバレるわけにはいかない!」」
エドガー・ランダークとミーナ・ディザスターはカラカラ公国に住む夫婦である。
しかし二人は互いに同じ秘密を持っていた。
それは二人とも、違う国の王子、王女の立場であり、二人とも国から逃げ出した者同士であるという事。
そして初デートの際、互いに「貴族や王族なんか大嫌い」と酔った勢いで互いに言ってしまった結果、その秘密は決してバレてはいけないモノへと変化してしまった。
だから二人は、相手にバレない様にするのだが、そんな二人の秘密を暴かせようとするかの様に二人の知り合いが一人、また一人……。
ミーナがいたラドライン王国の騎士団長であり、国の為なら何でもこなす忠誠心を持つと言われている女性、フリジアナことリアナ。
エドガーの弟であり、少し残念な美少年、アレクセイことアレク。
そして遂には二人の親も……。
そんな人々が次々訪れる中、果たして二人は秘密を隠し通し、庶民の夫婦生活?を送る事ができるのであろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる