Fランクまでしかないはずの世界でGランク判定された俺、どうすればいい！？

6 ランクとジョブ

　由貴ちゃんが手を触れると、水晶がぼんやりとした光を放った。少し待っていると、文字が浮かんでくる。

　側についていた記録官とおぼしき男がそれを読み上げる。

「イシワタユキーーランクHーージョブ教師」

　声には隠し切れない落胆があった。周りからもため息が聞こえてくる。

　でも、俺から見ればこんなもんだろって気しかしない。特にジョブなんてまんまじゃねえか。やっぱ由貴ちゃんに教師は天職なんだな！ 

　ただ、本人的には納得いかないだろうな。周りの反応に傷つくことだってあると思う。少しだけど顔赤いし。

「では次の方」

　記録官もここを掘り下げるつもりはなかったようだ。

「僕が行きます」

　名乗り出たのは光貴だった。堂々とした足取りで進み出て、何の躊躇いもなく水晶に手を置いた。

　するとーー

　由貴ちゃんの時とは比べ物にならない程強烈な光が迸った。

「うわっ！？」

　みんな慌てて目を塞ぐ。

　少し光が収まったと思ったら、記録官の絶叫が広間に響き渡った。

「タカミネミツタカーーランクSーージョブ勇者！」

　一瞬の間を置いて、歓声が爆発した。

　さすがと言うか、やっぱこいつチートなんだな。滅多に発現しないSランクーーしかも勇者とか、根っからの主人公体質と言うんだろうか。

　ところが、これで終わりではなかった。

「クドウリュウイチーーランクAーージョブ剣聖」

「カナガワアヤノーーランクAーージョブ聖女」

「マツヤマサヤカーーランクAーージョブ賢者」

　発表される度に歓声が沸く。こんな風にいきなり上級職が多発することは珍しいらしい。普通は剣士、戦士、魔法使い等の基本ジョブを得て、そこからの訓練で得意の分野へ派生していくそうだ。そんな中でも既に騎士だとか槍術士だとかまで発現しているらしい。

「今回の勇者様は大当たりだ！」

　王国の関係者は狂喜乱舞している。きっと確保した勇者の質と量で各国のパワーバランスが変わるんだろうな。そういう意味では文字通り大当たりなんだろう。

　さて、俺の番がきた。果たして何が出るやら。

「ゴミシュンスケーーランク……え？」

　困惑した顔の記録官が言葉を詰まらせた。

　何だ？

「ラ、ランクG」

「はい？」

　今Gって言った？   あれ？   一番低くてもFって話じゃなかった？   俺、その最低ランク以下なの？

　さすがにこれは想定外だった。光貴たちのような髙ランクは期待してなかったけど、そもそも枠の外だとは思ってもみなかった。

　更に追い打ちがかかる。

「ジョブーーなし」

　Oh……

　そこまで落としてくれるかい。これじゃあ俺はクソの役にも立たない穀潰しじゃねえか。

　正直、これはキツい。この現状をどう捉えていいかわからず、俺の頭は真っ白になっていた。