1 / 13
1 夏休み
しおりを挟む
「じゃあこれで夏休みに入ります」
担任の石渡由貴先生の言葉に、教室の空気が弛緩する。直前に渡された通知表のせいで微妙な空気を醸し出しているヤツもいるが、大部分はこれから始まる夏休みをいかに有意義なものにするかという方向に頭を向けていた。
「本当はあたしの立場ではあんまり無茶するなとしか言えないんだけど、二学期の初日に冴えない顔してるような休みにはしないようにね」
悪戯っぽい笑顔でこういうことを言うもんで、由貴ちゃんは俺たちの間で支持率が高い。本気で彼氏の座を狙っているのもチラホラいるレベルだ。
ぶっちゃけると、俺もその一人だったりする。
美人でスタイルが良くて性格も良かったら、思春期の男子高校生が恋に落ちるのに時間はかからない。って言うか、自分に年上趣味があることは由貴ちゃんに逢って初めて知った。
そんな感じなので、由貴ちゃんに会えなくなる長期の休みは嬉しくないーーのだが、幸い由貴ちゃんは俺が所属するワンダーフォーゲル部の顧問をしてくれている。だから、部活がある日は会うことができるのだ。
更に言えば、八月の初旬には三泊四日の山行が予定されている。俺的にはこの夏のメインイベントである。ここで由貴ちゃんとの距離を少しでも縮めたい。
俺がそんな野望を抱いているように、クラスの連中もそれぞれに予定を立てているようだ。
「どこか行く予定あるのか?」
「チャリンコで東北一周してくる」
「マジか。すげえな、それ」
「あたしはイタリア行くんだ。親と一緒だけどね」
「金持ちは違うなあ」
「俺は休みの間中バイトだな。んでもってその金でバイク買うんだ」
「おお、いいなあ」
「絶対に彼女を作る」
「まあせいぜい頑張ってくれ」
ワイワイ盛り上がっていると、由貴ちゃんがひょっこり戻ってきた。
「五味くん、合宿の件で打ち合わせたいことがあるから後で職員室に寄ってくれるかな」
「了解です」
主に男子からの羨望の視線が突き刺さってくる。
「由貴ちゃんとお泊まりなんて許せん」
「爆ぜろ」
「言っとくけど部活だからな」
「まさか一緒のテントなんてことはーー」
「んなわけあるか」
それならそれで望むところだが、残念ながらそういったイベントはない。
「そうそう。由貴ちゃんと一緒に寝るのは、あ、た、し 」
言葉と共に後ろから伸びてきた手が由貴ちゃんの豊かな胸を鷲掴みにして揉みしだいた。
「きゃあっ!?」
「「「「「おおっ!」」」」」
当然、由貴ちゃんは悲鳴をあげ、俺を含めた野郎どもは激しく前のめった。
「ちょ、ちょっと浅野さんーー」
「んー、この絶妙な揉み心地、たまんないわー」
クラス一の美人でありながら、ガチレズというイカれた性癖の持ち主である浅野春香はこなれた手つきで由貴ちゃんを追い詰めていく。
「やめーーあっ、んーー」
声の変化に、思わず前屈みになってしまう。
し、刺激が強すぎる……
「いい加減にしなさい!」
最後の力を振り絞って由貴ちゃんは浅野さんの魔の手を振り払った。
「「ああーっ……」」
落胆の溜息が漏れる。
「何残念がってるの!」
ナゼか由貴ちゃんは俺を睨んでくる。
「俺!?」
確かに残念がってはいたが、俺だけ責められるのは解せぬ。
「君は何があってもあたしの味方じゃないの?」
「ほへ?」
思わず変な声を出してしまったが、仕方ないだろう。何そのプロポーズまがいの素敵ワードは。
そう思ったのは俺だけではなく、たちまち教室内はゴシップパニックに陥った。
担任の石渡由貴先生の言葉に、教室の空気が弛緩する。直前に渡された通知表のせいで微妙な空気を醸し出しているヤツもいるが、大部分はこれから始まる夏休みをいかに有意義なものにするかという方向に頭を向けていた。
「本当はあたしの立場ではあんまり無茶するなとしか言えないんだけど、二学期の初日に冴えない顔してるような休みにはしないようにね」
悪戯っぽい笑顔でこういうことを言うもんで、由貴ちゃんは俺たちの間で支持率が高い。本気で彼氏の座を狙っているのもチラホラいるレベルだ。
ぶっちゃけると、俺もその一人だったりする。
美人でスタイルが良くて性格も良かったら、思春期の男子高校生が恋に落ちるのに時間はかからない。って言うか、自分に年上趣味があることは由貴ちゃんに逢って初めて知った。
そんな感じなので、由貴ちゃんに会えなくなる長期の休みは嬉しくないーーのだが、幸い由貴ちゃんは俺が所属するワンダーフォーゲル部の顧問をしてくれている。だから、部活がある日は会うことができるのだ。
更に言えば、八月の初旬には三泊四日の山行が予定されている。俺的にはこの夏のメインイベントである。ここで由貴ちゃんとの距離を少しでも縮めたい。
俺がそんな野望を抱いているように、クラスの連中もそれぞれに予定を立てているようだ。
「どこか行く予定あるのか?」
「チャリンコで東北一周してくる」
「マジか。すげえな、それ」
「あたしはイタリア行くんだ。親と一緒だけどね」
「金持ちは違うなあ」
「俺は休みの間中バイトだな。んでもってその金でバイク買うんだ」
「おお、いいなあ」
「絶対に彼女を作る」
「まあせいぜい頑張ってくれ」
ワイワイ盛り上がっていると、由貴ちゃんがひょっこり戻ってきた。
「五味くん、合宿の件で打ち合わせたいことがあるから後で職員室に寄ってくれるかな」
「了解です」
主に男子からの羨望の視線が突き刺さってくる。
「由貴ちゃんとお泊まりなんて許せん」
「爆ぜろ」
「言っとくけど部活だからな」
「まさか一緒のテントなんてことはーー」
「んなわけあるか」
それならそれで望むところだが、残念ながらそういったイベントはない。
「そうそう。由貴ちゃんと一緒に寝るのは、あ、た、し 」
言葉と共に後ろから伸びてきた手が由貴ちゃんの豊かな胸を鷲掴みにして揉みしだいた。
「きゃあっ!?」
「「「「「おおっ!」」」」」
当然、由貴ちゃんは悲鳴をあげ、俺を含めた野郎どもは激しく前のめった。
「ちょ、ちょっと浅野さんーー」
「んー、この絶妙な揉み心地、たまんないわー」
クラス一の美人でありながら、ガチレズというイカれた性癖の持ち主である浅野春香はこなれた手つきで由貴ちゃんを追い詰めていく。
「やめーーあっ、んーー」
声の変化に、思わず前屈みになってしまう。
し、刺激が強すぎる……
「いい加減にしなさい!」
最後の力を振り絞って由貴ちゃんは浅野さんの魔の手を振り払った。
「「ああーっ……」」
落胆の溜息が漏れる。
「何残念がってるの!」
ナゼか由貴ちゃんは俺を睨んでくる。
「俺!?」
確かに残念がってはいたが、俺だけ責められるのは解せぬ。
「君は何があってもあたしの味方じゃないの?」
「ほへ?」
思わず変な声を出してしまったが、仕方ないだろう。何そのプロポーズまがいの素敵ワードは。
そう思ったのは俺だけではなく、たちまち教室内はゴシップパニックに陥った。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】セックス・ダンジョンでハーレム生活
ねんごろ
ファンタジー
僕はアトレント公爵家の次期当主、サイモン・アトレントだ。
我が一族には代々伝わる修行がある。
それに僕も挑戦することになるのだが……
まさか、その行き先がセックス・ダンジョンだったなんて。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【R18】追放される宿命を背負った可哀想な俺、才色兼備のSランク女三人のハーレムパーティーから追放されてしまう ~今更謝ってきても
ヤラナイカー
ファンタジー
◯出し◯ませハメ撮りをかまして用済みだからもう遅い!~
(欲張りすぎて、タイトルがもう遅いまで入らなかったw)
よくある追放物語のパロディーみたいな短編です。
思いついたから書いてしまった。
Sランク女騎士のアイシャ、Sランク女魔術師のイレーナ、Sランク聖女のセレスティナのハーレムパーティーから、Aランク|荷物持ち《ポーター》のおっさん、サトシが追放されるだけのお話です。
R18付けてますが、エッチと感じるかどうかは読む人によるかもしれません。
【完結済み】正義のヒロインレッドバスターカレン。凌辱リョナ処刑。たまに和姦されちゃいます♪
屠龍
ファンタジー
レッドバスターカレンは正義の変身ヒロインである。
彼女は普段は学生の雛月カレンとして勉学に励みながら、亡き父親の残したアイテム。
ホープペンダントの力でレッドバスターカレンとなって悪の組織ダークネスシャドーに立ち向かう正義の味方。
悪の組織ダークネスシャドーに通常兵器は通用しない。
彼女こそ人類最後の希望の光だった。
ダークネスシャドーが現れた時、颯爽と登場し幾多の怪人と戦闘員を倒していく。
その日も月夜のビル街を襲った戦闘員と怪人をいつものように颯爽と現れなぎ倒していく筈だった。
正義の変身ヒロインを徹底的に凌辱しリョナして処刑しますが最後はハッピーエンドです(なんのこっちゃ)
リョナと処刑シーンがありますので苦手な方は閲覧をお控えください。
2023 7/4に最終話投稿後、完結作品になります。
アルファポリス ハーメルン Pixivに同時投稿しています
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【R18】セーラー美少女戦士アクア 誘拐強姦調教姦落 そして……
瀬緋 令祖灼
ファンタジー
月野市は日本の小さな地方都市。
ここには異次元の狭間があり時折ゲートが開き、異次元から怪人がやってくる。
この町を守るのがセーラー美少女戦士の役目であり高校生水野美紀は高校生活を送りつつ、セーラー美少女戦士の一員であるアクアとして、日々怪人と戦い撃退していた。
しかし、長くセーラー美少女戦士をしているため浮いた話の一つも無く、さみしいと感じるようになっていた。
そんなとき、彼女の通う学校が怪人に襲撃されてしまう。
すぐに迎撃に向かうが怪人の強さは圧倒的で、アクアは倒されて異世界にある怪人のアジトへ連れ去られて仕舞う。
そこで行われたのは度重なる戦いと負けた後に待っている恥ずかしい調教の日々だった。
それでもアクアは果敢に挑み、脱出の隙を窺い、挑戦する。
しかし、何回も負けて調教されている間にアクアに変化が。
ピクシブと、なろうのノクターンでも連載しています
*Rー18 強姦 拘束 レイプ グロ表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる