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私、ご主人様の直属メイドになりました(全10話)

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こいつは、俺に恋愛対象として見られたいが為に出すぎたメイドの代わり。また、そいつを近づけないための存在。
真っ白な髪に真っ赤な目。俺と正反対の容姿。
首を絞められても命乞いしない、変な奴。
こいつなら絶対に俺を、そんな対象として見ない。何だか、そんな確信があった。
入って早々首を絞めたからな。絶対に無い。

***

「ご主人様、私は……」

嫌だけど、部屋のなかに入って書類の隙間からご主人様の存在を確認する。
ご主人様は私と目も合わせない。
朝日を浴びて艶やかな黒髪。書類だけを映す、冷酷で真っ青な瞳。

「……この時期は書類がたて込んでいるんだ。お前にはこの部屋の掃除を頼む。ただしデスクの物は何も触るな」
「……承知致しました」

……なんだ。掃除か。
とりあえず、ご主人様の仕事の邪魔にならないよう、ほこりを立てない掃除をする。
綺麗に見えてもほこりはある。濡れた布で棚や窓の縁、床も角まで拭く。

ご主人様は怖い。しかし怖がった態度をしてはいけないのだ。
相手に弱味を見せれば漬け込まれる。だから恐怖に蓋をする。今までがそうだったから。
時間が来たら、ご主人様の昼食を取りに行く。

「あら、リーシュちゃん、ご主人様専属のメイドちゃんになったんですってね」
「はい。ご主人様の昼食をお願いします」
「わかったわ、ちょっと待っててね」

出てきたのはサンドイッチ。今日も軽食らしい。

「ありがとうございます」
「頑張ってね、リーシュちゃん」
「はい」

……あれ。私、いつお昼ご飯食べるんだろう?
まぁいっか。お昼ご飯食べないと死ぬわけでもないんだし。

「お食事をお持ちしました」
「……」

返事が無いが、ご主人様の作業デスクの隣のサイドテーブルに食事を置く。
ご主人様は無言のままサンドイッチを片手に掴み、口に運んだ。

よし。

食事が終わったら食器を下げて、厨房に戻す。少し厨房で休みたいと思ったが、通りがかったアナベルに「あなたはご主人様の専属なのだから、早く戻った方がいいわよ」と言われ休む暇もなくご主人様のお部屋に戻った。

ご主人様は相変わらず忙しそうにしている。

とりあえずコーヒーをいれて待機。
飲み終わったら下げて、おかわりと言われたら新しいものを出す。
別のものを要求されたら厨房に取りに行く。

アフタヌーンティーを出して、夕食まではずっとこんな感じ。

夕食が終わったらご主人様は入浴、少し仕事をして就寝。私の1日の仕事もこれで終了。
厨房で夕食にしては遅い夕食を食べ、お湯が抜かれた浴場でお湯を浴びる。そして私も就寝。

ご主人様とろくな会話も無く、数日がたとうとしていた。
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