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私、早速重要任務を任されてしまいました(全19話)
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「おい、俺の話も聞け」
「はい。喜んで」
料理が肉料理に到達した。
本日のメインディッシュ。つやつやで香ばしいお肉。
「俺は、今日起きたら今までずっと仕事してた……」
「……今日もお疲れ様でした」
正直ヒヤヒヤしすぎて話が入ってこないけど、とりあえず労いの言葉をかける。
「あぁ……俺、仕事しかしてねぇ」
「……」
反応に困ること言わないでよ。
「っていうか俺なんでお前なんかにこんなこと話してんだ……おい、この事、誰にも話すんじゃねぇぞ」
ぎろりと私を睨む。
「承知しました」
そんな恐ろしい顔で言われたら誰も言わないよ。
空になったグラスにワインを注ぐ。
それから、ご主人様は静かに食事を進めた。
やっとデザートまでさしかかった。
透明で深めのお皿に乗った白くてつやつやした塊に、赤いソースが掛かっている。
ぷるぷるした食感のババロアというお菓子らしい。
それは話を聞いただけで美味しいものだと感じた。
ご主人様はそれをぱくぱく食べる。
わぁ。いいなぁ。
今まで他人に羨望を抱くまいとしていた私にはとんだ失態だ。
一瞬でその雑念を頭から消し去る。
羨んだって手に入らないものは手に入らないのだ。
食べ終わったご主人様の食器を下げ、私も部屋から退出する。
「失礼しました」
「おい」
何で話し掛けてくるの?
「……何でしょうか」
「お前、チビだな」
「……そうですか」
「ふん、もういいぞ。下がれ」
何が言いたいんだ。
「はい。失礼しました」
早く戻ろう。
カートを押して厨房へ。廊下の窓から見える外は真っ暗だ。
時計を確認したら、8時半を過ぎていた。え、ご主人様ゆっくり食べすぎじゃない?2時間半?偉い人ってこんなものなの?
もうメイドたちは夕食を食べているか、それとも終わって片付けられているのか。
「ただいま戻りました……」
あれ。ここからは厨房の全体像は見えないが、見える限り誰もいない。
今までは三人のうち誰かはいたのに。
「……あら!リーシュちゃん遅かったわねぇ」
奥からレイランさんが顔を覗かせた。
「すみません、遅くなりました」
「いいのよ!みんなお夕飯食べ終わっちゃったわよ」
「そうですか」
部屋に帰ってさっさと寝よう。空腹はそれで誤魔化すことができる。
カートを置いて、部屋へ帰ろうとするとレイランさんに引き留められた。
「ちょっと!どこ行くのよ?」
「帰って寝ようかと……」
「リーシュちゃんのお夕飯あるわよ!食べないの?」
「……食べます」
完全に今日はご飯無いかと思ってた。
「それから……寝るのはいいけど、ちゃんとお風呂に入るのよ?」
「はい」
「リーシュちゃんこっち」
レイランさんが手招きをする。
初めて、厨房の中に招かれた。スイングドアを押して入る。
今まで見えなかった厨房の内部。
大小さまざまな調理器具、食材にコンロ。初めて見るものばかりだ。
「お、リーシュちゃん!長かったな!」
「……今度こそ死……何でもないです」
「ご主人様はゆっくり食事をされる方なんですね」
「そんなことはないと思うけどなぁ……」
ロストさんが首を捻る。
「ロスト!そんなことよりリーシュちゃんにお夕飯!」
「おう!」
え、今から作るんですか?
「はい。喜んで」
料理が肉料理に到達した。
本日のメインディッシュ。つやつやで香ばしいお肉。
「俺は、今日起きたら今までずっと仕事してた……」
「……今日もお疲れ様でした」
正直ヒヤヒヤしすぎて話が入ってこないけど、とりあえず労いの言葉をかける。
「あぁ……俺、仕事しかしてねぇ」
「……」
反応に困ること言わないでよ。
「っていうか俺なんでお前なんかにこんなこと話してんだ……おい、この事、誰にも話すんじゃねぇぞ」
ぎろりと私を睨む。
「承知しました」
そんな恐ろしい顔で言われたら誰も言わないよ。
空になったグラスにワインを注ぐ。
それから、ご主人様は静かに食事を進めた。
やっとデザートまでさしかかった。
透明で深めのお皿に乗った白くてつやつやした塊に、赤いソースが掛かっている。
ぷるぷるした食感のババロアというお菓子らしい。
それは話を聞いただけで美味しいものだと感じた。
ご主人様はそれをぱくぱく食べる。
わぁ。いいなぁ。
今まで他人に羨望を抱くまいとしていた私にはとんだ失態だ。
一瞬でその雑念を頭から消し去る。
羨んだって手に入らないものは手に入らないのだ。
食べ終わったご主人様の食器を下げ、私も部屋から退出する。
「失礼しました」
「おい」
何で話し掛けてくるの?
「……何でしょうか」
「お前、チビだな」
「……そうですか」
「ふん、もういいぞ。下がれ」
何が言いたいんだ。
「はい。失礼しました」
早く戻ろう。
カートを押して厨房へ。廊下の窓から見える外は真っ暗だ。
時計を確認したら、8時半を過ぎていた。え、ご主人様ゆっくり食べすぎじゃない?2時間半?偉い人ってこんなものなの?
もうメイドたちは夕食を食べているか、それとも終わって片付けられているのか。
「ただいま戻りました……」
あれ。ここからは厨房の全体像は見えないが、見える限り誰もいない。
今までは三人のうち誰かはいたのに。
「……あら!リーシュちゃん遅かったわねぇ」
奥からレイランさんが顔を覗かせた。
「すみません、遅くなりました」
「いいのよ!みんなお夕飯食べ終わっちゃったわよ」
「そうですか」
部屋に帰ってさっさと寝よう。空腹はそれで誤魔化すことができる。
カートを置いて、部屋へ帰ろうとするとレイランさんに引き留められた。
「ちょっと!どこ行くのよ?」
「帰って寝ようかと……」
「リーシュちゃんのお夕飯あるわよ!食べないの?」
「……食べます」
完全に今日はご飯無いかと思ってた。
「それから……寝るのはいいけど、ちゃんとお風呂に入るのよ?」
「はい」
「リーシュちゃんこっち」
レイランさんが手招きをする。
初めて、厨房の中に招かれた。スイングドアを押して入る。
今まで見えなかった厨房の内部。
大小さまざまな調理器具、食材にコンロ。初めて見るものばかりだ。
「お、リーシュちゃん!長かったな!」
「……今度こそ死……何でもないです」
「ご主人様はゆっくり食事をされる方なんですね」
「そんなことはないと思うけどなぁ……」
ロストさんが首を捻る。
「ロスト!そんなことよりリーシュちゃんにお夕飯!」
「おう!」
え、今から作るんですか?
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