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私、早速重要任務を任されてしまいました(全19話)

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「……ありがとうございます」
「お待たせしました。ありあわせですが……どうぞ」

ネロさんがお皿に薄切りのパンに目玉焼きとハムを乗せたもの、そして牛乳を持ってきてくれた。

「ありがとうございます」
「ささ、そこに椅子があるから座って食べてちょうだい」

レイランさんに促され、厨房すぐそばに置かれた四人掛けのテーブルにつき、パンをかじる。
目玉焼きとハムだけだと思っていたが、チーズも入っている。
ひとくち食べたら止まらなくて、あっという間に無くなった。

「美味しかったです……!」
「うふふ、よかったわ」
「お前が作ったんじゃないだろ……」
「さぁ、水分もとってください……」

ネロさんから受け取った牛乳を一気に飲む。

「ぷはぁ……」

こんなに満たされた食生活でいいのだろうか。
でも、きっとこれがずっと続く訳じゃない。

「リーシュちゃん、口ひげついてる」

ロストさんが口元をタオルで拭き取ってくれた。

「あ……すみません」
「いいって」
「わんぱくな子もかわいいわぁ」

励まされた上に食事の様子を観察された。
どうリアクションをとったらいいものか。

「……あぁ、リーシュさんに仕事があるんですよ」
「あら、そうね、あたしも忘れてたわ」
「さっきメイドちゃんのひとりがリーシュちゃんにある仕事を頼んでくれって……」

三人が急にざわつきはじめた。

「それはどんな仕事ですか?」

嫌がらせを受けた直後だ。
いい予感はしない。

「それがねぇ……」

レイランさんが顔を曇らせる。

「後は頼んだ」
「頑張ってくださいね……」

ロストさんもネロさんも昼食の準備だと厨房の奥へ消えてしまった。

「もう……まぁいいわ。その仕事がね……」

なんとなく緊張。

「ご主人様に料理を運ぶことなの」

「……へ?」

ご主人様に料理を運ぶことだけ?
そんな。
狼を倒してこいとか……もっと命に関わることかと思ったんだけど。

「それって……そんなに大変なんですか?」
「そうね、最悪死ぬわよ!何人かメイドちゃんがそれで死んでるんだから」
「えぇ……?!」

困った。
まだ死ぬわけにはいかないんだけど。

「リーシュちゃん気を付けてね。ご主人様のお食事の邪魔をしないように料理を運ぶのよ。頑張って」
「ありがとうございます」
「ご主人様のお食事は11時半だと決まってるの。もうちょっとでご主人様のお食事の時間だから、ここでゆっくりしていってちょうだい」
「はい」

厨房の側にある椅子に座って、食事が出来るまで待つことにした。

「あら、リーシュ、こんなところでなにしてるの?」

目の前に、朱色の髪の毛を後ろにまとめたアナベルが立っていた。
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