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プロローグⅡ

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 転移した先は山の中にある屋敷だ。
 儂はここで長年引き籠って転生の研究をしてきた。

 窓を開けて換気をする。
 風が吹くと爽やかな緑の香りが鼻腔をくすぐる。

 机の上に置かれている手紙を手に取る。
 封筒の口を指で押さえつける。
 魔法陣が焼きこまれ封がなされる。


「これで兄弟子へと手紙は問題なしだのぅ」


 あとは弟子の誰かが出してくれるじゃろう。

 再び手紙を机の上に置くと親指ほどの厚さもある紙束を手に取る。

 それから執務室となっている部屋を出た。



 ――――――



 屋敷の地下にある薄暗い通路を歩く。

 いくつもの魔法陣が刻まれた通路の先、そこには一つの扉がある。
 扉を開けて部屋にはいる。

 部屋の中にはびっしりと魔法陣やルーン文字が描かれている。


「ふむ、ようやくじゃな」


 部屋は中央に人一人が寝転がれる台座が一つ。
 台座の四方にある魔法陣の中には手に持っているのと同じ紙束が置かれている。
 この紙束は転生の術式構築にあたって補助してくれるものだ。
 転生は初めての試み故、色々準備したのだ。

 簡単に言うならば念には念を押したわけだ。

 最後の一つの魔方陣に紙束を置く。
 これで準備は完了じゃのぅ。

 台座に寝転がる。

 思えば長かったものだ。


 "最強"


 そんな曖昧なものを求めてこの歳まで生きてきた。

 そして願いは叶った。

 だが、変わりに得たのは虚しさにも近いものだった。

 それも、もうすぐ終わる。

 何十年か。
 何百年か。
 どのくらい先の儂が過去の儂を倒すのかはしらないがのぅ。

 天に向かって手を伸ばす。

 手の甲に紋章が浮かび上がる。
 拳台の大きさのものだ。

 この紋章は言うなれば身分証明書であり、自身の強さを表すための一つの指標なっている。
 紋章が大きいほどに強い、そういう認識だ。

 魔物を倒した時に手を翳すことで経験値を得ることが出来る。
 その経験値の総量によってサイズが変わってくる。
 他にもいくつか恩恵があるが今はいいじゃろう。

 ただ、一定以上の実力があるものならば紋章の大きさを変えることが出来てしまう。
 そのため、一概に大きさで強さを計れるわけではない。

 かくいう儂も大きさを調整しておる。
 でなければ今いる屋敷よりも大きな紋章が出来上がってしまう。


「ここまで来るのに三百年位はかかったかのぅ。次生では何年でいけるか… ククク 楽しみじゃ」


 部屋中に刻まれた文字や魔法陣に魔力を流していく。

 ボゥと淡い光が放たれる。

 徐々に光が強くなり、辺り一面白色になっていく。


「未来の儂よ。期待しとるからのぅ」


 その言葉と同時に部屋が白く染まっていく。


過去を越えてみよ」

 他人事のように言葉を紡いだのを最後に全て真っ白に染まった。

 意識が遠のいていく。

 それから数秒もせず完全に途切れた。
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