上 下
18 / 86
第3章~大戦~

第18話 混沌3――他に良いタイトル思い付かなかったんや。

しおりを挟む
 開幕一発目の勝負は、『秩序』の軍勢フォースオブコスモスに軍配が上がり、『混沌』の群れカオスレギオンでは動揺が広がっていた。

 それもそのはず、失敗した大投擲作戦はケイオス発案による開戦一発目の隠し球。この作戦が成功していたら『秩序』の軍勢フォースオブコスモスに大打撃を与えていたはずであった。
 
 しかし、その隠し球をたった一人の『秩序』が見事に打ち返し、敵に与えるはずのダメージがそのまま自分たちに反ってきたのだ、動揺が広がるのも無理からぬことであった。が、しかし、群れの頭であるケイオスは違った。

「うおおおお、ペイン!!マジかよあいつら、星を打ち返しやがった。そんでもって打ち返された星が今真横を掠めて行きやがった!!」

「はいはいボッスーは愉しくていいねー。あたしゃ胃が痛くなりそうだよ」

「あ?何でだよ?」

「ボッスー。一応自分の作戦が破られたんだよ。少しは悔しくないの?」

「何言ってんだペイン。予想外のことが起きたんだぜ!?予想外、つまるところそりゃ混沌だ。混沌は愉しまねぇと損だぜ!!」

 ペインはそう言ったケイオスに呆れ半分、頼もしさ半分といった様子のため息をついた。
 
 確かにケイオスほど混沌という在り方を体現した者はいない。

 以前『混沌』の群れカオスレギオンの戦力増強のために、ペインはケイオスと二人で『混沌』の他の群れのボスに、傘下に入るよう勧誘をしに行ったことがある。

 その時、他の群れのボスは『混沌』の軍勢カオスレギオンの傘下に入ることを拒みはしたが、「同盟なら受けてやる、自分の上に頭はいらない」と言ったのだ。その言葉にケイオスは『混沌』らしいとそのボスを気に入り、肩を組んで笑いあったのだ。しかし、次の瞬間ケイオスは他の群れのボスの頭を喰らっていた。「これなら頭が必要だろう?」と満面の笑みで嗤っていたのだ。

 当然、その群れとの交渉は決裂。その時はケイオスの群れはそこまでの大きさではなかったため、相手の群れとの大抗争となったのだが、その時もケイオスは大いにはしゃぎまわり、場を引っ掻きまわしたのであった。

 しかし、その時の抗争に勝利をおさめてから、ケイオスの群れの傘下に入りたいという者が急増。その理由は単純明快、ケイオスへの恐怖だ。皆、何をしでかすかわからないケイオスに恐怖し、近くにいればその被害を被らないですむのではないかと、ケイオスの群れに入ることを選んだのだ。

 ケイオスはそんな奴らを嗤った。『混沌』の癖にケイオス混沌に恐怖してやがると

 兎に角、ケイオスはそういう奴なのだ。コントロールの出来ない狂犬。敵も味方も区別しない狂戦士。そういう奴が『混沌』の群れカオスレギオンの頭なのだ。

 ペインは笑う。だから自分はついて来てるのだと。ケイオスの言うとおり、先の決まった未来などクソ喰らえだと。

「だよねー、ところでボッスー、次の手。考えてんの?」

「あ、俺がそんなもん考えてると思ってんのか?」

 悪びれた風もなくそう言うケイオス。しかし、ペインもそんなことは百も承知、

「んふふふふ、思ってない」

と笑って返す。

「つーわけでペイン、手前ぇが何か考えろ」

「全く、ボッスーはいつもとーとつ過ぎんだよね」

 言ってペインは伝令役の獣を呼び出し、何やら命令する。

「なんだペイン、手前ぇなんか手を打ってやがったな」

 伝令役との会話を終えたペインはニヤリと笑う。

「あたり前でしょボッスー。相手は勤勉クソ真面目が取り柄の『秩序』だよ。生兵法は大怪我のもとってね。ちゃんと考えてあるよ」

「そんで、どんな手なんだ?作戦名だけでも教えろよ」

 ケイオスが愉しそうに訊き、ペインはない胸をえっへんと張り、

「一発逆転、将を射んと欲すればまず頭を狙え作戦だよ」

と自慢げに言うと、ペイン後方からマナで創られた花火がうち上がった。

―――『秩序』の軍勢フォースオブコスモス指令部

「なんだぁ、ありゃあ」

 ガヘリスは『混沌』の群れカオスレギオンの方から上がった花火に反応する。

「ただの花火、と考えるのは早計だろうな」

 ヴァリスが言う

「いくら相手が『混沌』だからってなぁ。獣だって頭使って狩りをするぅ。つーこたぁ」

「何らかの合図、と考えた方がいいな」

「つーことだぁ、気ぃ引き締めろよぉ!!」

 ヴァリスが伝令に全軍に警戒するようにと命令し、ガヘリスは自身の周囲への警戒を強くする。何が起きても動じぬように。素早く対応できるようにと。

 しかし、既に事は終盤に差し掛かっていた。ペインの言う、一発逆転将を射んと欲すればまず頭を狙え作戦とは、そのままの意味、つまり、管理者レイ・アカシャに暗殺者を差し向け、暗殺する。という作戦で、ペインの命のもと、ケイオスの眷属の中でも特に隠密行動に秀でた獣、マキリがその任についていた。

 そして、マキリは既に『秩序』の軍勢フォースオブコスモスの後方に潜伏し、ペインの合図を待っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔女と骸の剣士

佐藤遼空
ファンタジー
《完結保証》 森の奥に住む魔女はある日、洞穴の泉に一体の死体が流れついている事に気付いた。魔女がその顔を少し修復すると、その眼が動いて魔女を見る。その骸には意識があった。魔女はそれを、自身の死骸に霊が呪縛される呪いを受けた者だと悟る。やがて身体を修復した魔女は、霊力を魔力に還元し、それを自動で修復魔法に変換する特殊な宝珠を骸に埋め込む。こうして意識を持ち、動く骸となった剣士は、自分の本当の死を見つけるために魔女と旅立つ―― 毎日更新

魔女の弟子ー童貞を捨てた三歳児、異世界と日本を行ったり来たりー

あに
ファンタジー
|風間小太郎《カザマコタロウ》は彼女にフラれた。公園でヤケ酒をし、美魔女と出会い一夜を共にする。 起きると三歳児になってしまってさぁ大変。しかも日本ではなく異世界?!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

隠れジョブ【自然の支配者】で脱ボッチな異世界生活

破滅
ファンタジー
総合ランキング3位 ファンタジー2位 HOT1位になりました! そして、お気に入りが4000を突破致しました! 表紙を書いてくれた方ぴっぴさん↓ https://touch.pixiv.net/member.php?id=1922055 みなさんはボッチの辛さを知っているだろうか、ボッチとは友達のいない社会的に地位の低い存在のことである。 そう、この物語の主人公 神崎 翔は高校生ボッチである。 そんなボッチでクラスに居場所のない主人公はある日「はぁ、こんな毎日ならいっその事異世界にいってしまいたい」と思ったことがキッカケで異世界にクラス転移してしまうのだが…そこで自分に与えられたジョブは【自然の支配者】というものでとてつもないチートだった。 そしてそんなボッチだった主人公の改生活が始まる! おまけと設定についてはときどき更新するのでたまにチェックしてみてください!

【改訂版】ピンク頭の彼女の言う事には、この世は乙女ゲームの中らしい。

歌川ピロシキ
ファンタジー
エステルは可愛い。 ストロベリーブロンドのふわふわした髪に零れ落ちそうに大きなハニーブラウンの瞳。 どこか舌足らずの口調も幼子のように天真爛漫な行動も、すべてが愛らしくてどんなことをしてでも守ってあげたいと思っていた。 ……彼女のあの言葉を聞くまでは。 あれ?僕はなんで彼女のことをあんなに可愛いって思ってたんだろう? -------------- イラストは四宮迅様(https://twitter.com/4nomiyajin) めちゃくちゃ可愛いヴォーレを描いて下さってありがとうございます<(_ _)> 実は四月にコニーも描いていただける予定((ヾ(≧∇≦)〃)) -------------- ※こちらは以前こちらで公開していた同名の作品の改稿版です。 改稿版と言いつつ、全く違う展開にしたのでほとんど別作品になってしまいました(;´д`) 有能なくせにどこか天然で残念なヴィゴーレ君の活躍をお楽しみいただけると幸いです<(_ _)>

処理中です...