幸せな幻想

maru.

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「洗うの、お願いしていいかな?」
「任せて」
 待ってましたとばかりに私は妹さんの首を持って、いつもの洗い場へと持っていく。
「そうだ、髪はこのままでいいの?」
「髪型変えたりとか…してくれるの?」
「ん」
「じゃあ…ツインテール、かな」
「いいよ、任せて」
 私は二つ返事で返してそっと彼女の頭を撫でた。
「大丈夫。すぐすっきりさせてあげるね」
 彼女は小さく笑った気がした。
 そうだ、この子とも会話できるかもしれないな。お兄さんに、私の友達としても欲しい、と後で聞いてみよう。まずはこの首を洗うことに集中しないと。帰ってきた時には既に出血が多かったから処理に時間がかかりそうだ。
「できたよ、お兄さん」
「ありがとう、さすがひなのちゃんだね」
「…得意分野だから」
 お兄さんは自分の枕元に妹さんの首を並べた。彼の枕元にあるのは、妹さんの首、彼女さんの首、それから幼なじみの首。どれも幸せそうだ。私が綺麗にしたからっていうのも一つの理由かもしれないな。
 ちなみに私の枕元には、お母さん、お父さん、彼の首がある。それ以外はいらなかったから殺す気も起きなかった。…しまった。みんな死んでいない。体がないだけの、大切な人だ。
「お兄さん、今日は何を食べるの?」
「そうだなぁ…」
 お兄さんはずっと考え込んでいた。今までは私が食べたい物を頼んでいることが多かったから、悩むのも無理ないかな。
「じゃあさ……」
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