幸せな幻想

maru.

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よん

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 小学三年生の頃、ここにお母さんとお父さんの首を運んで置いていた時、ちょうどやってきたお兄さんと作った家だ。
 木や釘は家にあるから、とお兄さんは資材を集めて家を建てた。私は死体を洗うのを得意としていたから、代わりに洗っていた。
 彼の最初の首はかわいい女の子だった。髪が長くて洗うのが大変だったけど綺麗だ、とお兄さんと語ったことをよく覚えている。
「あ、ひなのちゃんおかえり」
「お兄さんただいま」
「今日はついに最後の人、かな?」
「うん、彼は私の大好きな人なの」
「俺もちょうど戻ったところでね、この人が最後なんだ」
 彼が見せた首は、小さな女の子。小学生ぐらいだろうか。
「娘さん?」
「年が離れた妹だよ」
「かわいいね」
「でしょ。かわいくて誰かに取られるのが嫌だから、先に俺のものにしたんだ」
 どうかな?なんて首を掲げる彼を見て、不思議と笑みがこぼれた。安心。幸福。そんなものに近い何かを得た。
「彼、どこかいい場所ないかな?」
「少しだけ空いてる場所があるけど…寝る時に一緒の方がよくない?」
「確かに…じゃあそうする」
 私は自分の枕元に彼を置いた。その彼の髪をそっと撫でる。私が綺麗に梳いたから綺麗でさらさらだ。私の得意分野だもん、そうでなくちゃ困る。彼が何故か、なんとなく、幸せそうに笑っている気がした。
「ひなのちゃん…」
 お兄さんが申し訳なさそうに、控えめに話しかけてきた。きっとお願いだな。直感的にそう思い、お兄さんの方を見た。
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