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秋
お見舞い状
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バルコニーにいる鳩が、クルッポークルッポーと鳴いている。
朝食の後、私は頂いたお手紙にお返事を書こうと、机に向かっている。
アマンド様はというと、護衛さん達に稽古をつけに行っていて、鳩の鳴き声に混じってアマンド様の檄が遠くに聞こえる。
鍛錬が終われば、一緒にランチに出かける予定だ。
頂いたお手紙を順に開けていく。
お手紙はクラブ長のビシュヌ様を始め、クラブの友人達がほとんどだった。
薬物事件の犯人たちが捕まった後、私の容体について、『王子殿下が見舞ったところ、ディセンシア伯爵令嬢は怪我はしているものの元気にしており、意識不明の重体というのは誤報だった』と続報が出ていたおかげで、皆一様に私の無事を喜んでくれていた。
ビシュヌ様は『きっと怖い思いをされたでしょう。体だけでなく、お気持ちも元気を取り戻してからクラブに復帰されてくださいね。ご無理なさりませんよう』と優しい言葉をかけてくれた。
おしゃべり大好きクリスティーナ様からは、最初の方は私の体調を気遣う文章だったが『-ということで、ご回復を祈願しております。どうかご静養なさってくださいね。それはそうと、レイリア様、ご婚約者様の別荘にいらっしゃるんですって!?どうして教えてくださらなかったの!きっとあまぁーいひと時を過ごされているのでしょうね。こちらに戻ってこられたら、是非何があったのかお聞かせください。私、首を長くして待っていますわ!』と、だいぶクリスティーナ様らしさを感じさせるお手紙を頂いた。
皆さんを心配させてしまって申し訳ないという気持ちもあるけれど、皆の温かい言葉に、読んでいて胸がポカポカしてくる。
さて次の手紙を、と手を伸ばした際に、紫の封蝋が目についた。
(あら?)
ラベンダー色の封筒のそれは、予想通り、ジュディ様からのお手紙だ。
いつもはお母さまが開封してしまうので、自分で封を開けるのが変な感じだ。
そんなことを思いながら、薄いラベンダー色の上質な便せんを開いた。
『レイリア ディセンシア様
この度はお見舞い申し上げます。』
序文が普通で驚く。
え…!いつも辞令みたいな手紙なのに!?
(ジュディ様、随分弱ってたって言ってたしなぁ…)
アマンド様が王都で王子殿下に聞いた話では、私が重体だと聞いて、ジュディ様はシクシクと泣いてしまったらしい。
本当は、王子殿下が直接見舞いにコルンに来た時、ジュディ様も同行したいと仰っていたらしく、いつもの強気な態度もなりを潜め『それはそれは可愛かった(王子談)』そうだ。
沢山心配をかけてしまったようで胸が痛い。
頂いたお見舞い状と真摯な気持ちで向かい合おう、とその先を読み進める。
『重症と聞いて驚いたけれど、実際には腕の怪我くらいでその他は概ね元気そう、と殿下から伺ったわ。』
私の様子を殿下が話してくださったようだ。
『貴方、私を心配させるなんてどういうつもり?反省してるんでしょうね?』
ん?
『直接文句を言ってやりたいのに、あなたがコルンなんて辺鄙な場所に行くから、文句を言いに行けないじゃない!』
んんん?
『いいこと?王都に戻ってきたらすぐに訪問するから、首を洗って待っていなさい。J』
…これ、お見舞い状じゃなくない?
私は呆然として、もう一度手紙を読み直す。
起承転結の転がすごい。
思わず呟く。
「ジュディ様。これ…果たし状ですよね?」
ジュディ様が通常営業に戻っていることはわかったので、ある意味、よかったのかもしれない。
朝食の後、私は頂いたお手紙にお返事を書こうと、机に向かっている。
アマンド様はというと、護衛さん達に稽古をつけに行っていて、鳩の鳴き声に混じってアマンド様の檄が遠くに聞こえる。
鍛錬が終われば、一緒にランチに出かける予定だ。
頂いたお手紙を順に開けていく。
お手紙はクラブ長のビシュヌ様を始め、クラブの友人達がほとんどだった。
薬物事件の犯人たちが捕まった後、私の容体について、『王子殿下が見舞ったところ、ディセンシア伯爵令嬢は怪我はしているものの元気にしており、意識不明の重体というのは誤報だった』と続報が出ていたおかげで、皆一様に私の無事を喜んでくれていた。
ビシュヌ様は『きっと怖い思いをされたでしょう。体だけでなく、お気持ちも元気を取り戻してからクラブに復帰されてくださいね。ご無理なさりませんよう』と優しい言葉をかけてくれた。
おしゃべり大好きクリスティーナ様からは、最初の方は私の体調を気遣う文章だったが『-ということで、ご回復を祈願しております。どうかご静養なさってくださいね。それはそうと、レイリア様、ご婚約者様の別荘にいらっしゃるんですって!?どうして教えてくださらなかったの!きっとあまぁーいひと時を過ごされているのでしょうね。こちらに戻ってこられたら、是非何があったのかお聞かせください。私、首を長くして待っていますわ!』と、だいぶクリスティーナ様らしさを感じさせるお手紙を頂いた。
皆さんを心配させてしまって申し訳ないという気持ちもあるけれど、皆の温かい言葉に、読んでいて胸がポカポカしてくる。
さて次の手紙を、と手を伸ばした際に、紫の封蝋が目についた。
(あら?)
ラベンダー色の封筒のそれは、予想通り、ジュディ様からのお手紙だ。
いつもはお母さまが開封してしまうので、自分で封を開けるのが変な感じだ。
そんなことを思いながら、薄いラベンダー色の上質な便せんを開いた。
『レイリア ディセンシア様
この度はお見舞い申し上げます。』
序文が普通で驚く。
え…!いつも辞令みたいな手紙なのに!?
(ジュディ様、随分弱ってたって言ってたしなぁ…)
アマンド様が王都で王子殿下に聞いた話では、私が重体だと聞いて、ジュディ様はシクシクと泣いてしまったらしい。
本当は、王子殿下が直接見舞いにコルンに来た時、ジュディ様も同行したいと仰っていたらしく、いつもの強気な態度もなりを潜め『それはそれは可愛かった(王子談)』そうだ。
沢山心配をかけてしまったようで胸が痛い。
頂いたお見舞い状と真摯な気持ちで向かい合おう、とその先を読み進める。
『重症と聞いて驚いたけれど、実際には腕の怪我くらいでその他は概ね元気そう、と殿下から伺ったわ。』
私の様子を殿下が話してくださったようだ。
『貴方、私を心配させるなんてどういうつもり?反省してるんでしょうね?』
ん?
『直接文句を言ってやりたいのに、あなたがコルンなんて辺鄙な場所に行くから、文句を言いに行けないじゃない!』
んんん?
『いいこと?王都に戻ってきたらすぐに訪問するから、首を洗って待っていなさい。J』
…これ、お見舞い状じゃなくない?
私は呆然として、もう一度手紙を読み直す。
起承転結の転がすごい。
思わず呟く。
「ジュディ様。これ…果たし状ですよね?」
ジュディ様が通常営業に戻っていることはわかったので、ある意味、よかったのかもしれない。
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