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王都を出ても、引き続き寝たいらしいです。

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馬車で出発してから約1時間。

だいぶ揺れがひどくなってきた。

アマンド様は深く眠っているらしく、ガタガタする中で時折眉間にしわを寄せているが、尚も目覚めることがない。

揺れの拍子に、もたれかかった壁に頭をぶつけてしまいそうだ

私はそっと小さなクッションを取り、手を伸ばして、アマンド様の頭と壁の間にクッションを入れようと試みた。

揺れて頭が壁から離れた拍子に挟めようとタイミングを計るが、そもそもクッションが入るほどの隙間が空くことがない。

起こしてしまいそうで避けたかったが、こうなれば仕方ない。

私はクッションを片手に、椅子の上に膝立ちになった。

(起こさないように・・そっと頭を持ち上げて・・・)

頭の中で段取りを何度か確認する。

頭を手で支えて、自分の方に引き寄せている間にクッションを挟み込めばいい。

よし、とアマンド様の頭に手を伸ばす。

形のいい耳、シャープな輪郭、長い睫毛・・そういえば、初めて見る寝顔。

意識し始めると途端に鼓動が主張しはじめる。

あと少しで頭に手が届く、その瞬間。

パッとアマンド様が目を開けて私を振り返った。

自分が触れる前に彼が目覚めるとは思っていなかったので、黄色の瞳に見上げられた私は動揺してしまう。

「はぅ・・!す、すみません。起こしてしまって・・!」

彼は騎士だから、寝ている間も警戒心が働いているのかもしれない。

「その、枕がないと頭をぶつけてしまいそうで・・これを挟めますね」

クッションを頭と壁の間に挟めて、また席に着く。

「起こしてしまってすみません。まだ寝ていても大丈夫ですよ」

と言うか寝てほしい。彼は昨夜2時間しか寝ていないのだ。まだまだ睡眠時間が足りてない。

まだ眠たそうに目をトロンとさせながら、アマンド様がこちらを見ている。

壁に凭れていた体を起こすので、これは本格的に起こしてしまったな、と申し訳なく思ったのも束の間。

「あれ?あの・・?」

そのままアマンド様の体がこちらに倒れてきて、大きな体に抱きしめられる。

そのままズルズルと下がっていくと、彼の頭が私の腿の上に着地した。

「ア、アマンド様!」

腰に手を回したまま、モゾモゾと具合を確かめている。

「横になった方が良ければ、私、向かいの席に行きますよ。クッションを枕がわりにしましょう。その方が寝心地が・・や、ちょっと」

アマンド様の手を外しにかかるが、寝ぼけているはずなのにビクともしない。

それどころか、私の手を取って、彼の頭を撫でさせようとする。

「撫でます、撫でますから・・」

頭を撫でるとモゾモゾをやめて大人しくなる。

「ね?ちゃんと横になりましょう?その方が疲れも取れるし・・アマンド様?」

再びスウスウと規則的な寝息が聞こえてきた。

さっきと違い、眉間のシワもなくなり、穏やかになった寝顔。

(いつからこんな甘え上手になったのかしら・・・)

私は眉を下げて諦めると、彼の頭を撫でながら、車窓から見える変わりゆく風景を楽しんだ。
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