大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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いつかのお店でランチします。

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自主練習会の後、アマンド様とカインとロイと、いつか訪れた大量盛りのお店”ブルーラグーン”に来ている。

「せっかくだから4人で昼飯に行こう」とアマンド様が誘ってくれたのだ。

ロイから憧れの存在だと聞かされて余程嬉しかったのか、アマンド様はサインや握手は勿論、自分から申し出て剣の手合わせまでする大サービスで、ロイを大いに感激させた。

ロイは今日のために1日予定を空けてきてくれたらしく、ランチも2つ返事で着いてきた。

今日は食べ盛りのカインとロイも居るので、安心感が違う。

「レモネードじゃなくて、サイダーが良かったな」

『ポテトのガーリックオイル揚げ』を摘みながらカインが口を尖らせる。

「カイン、この店で炭酸を頼むのは自殺行為だ」

Tボーンステーキを頬張りながら、カインに告げるアマンド様。

そう。経験者の私とアマンド様が、この店の攻略方法を伝えなければいけない。

私もカインを嗜める。

「カイン、ポテトはいざとなったら袋に詰めて持って帰れるから、先に他のを食べてくれる?」

前回の教訓を活かさねば。

「えー、揚げたてがうまいんじゃん」

カインはこの店の恐ろしさを知らないのだ。

「大丈夫だカイン。それは冷めたら冷めたでうまい。それより先に肉を食べてくれ。どれがいい?」

アマンド様も援護してくれる。

アマンド様が今回頼んだ『色んな部位のミックスステーキ』には、丸鶏のローストチキンや豚のバックリブも入っていた。

「部位だけじゃなく肉の種類も色々あるのか・・」と、目を見開きながら呟くアマンド様を、先ほど私は目撃している。

「じゃあこの豚のバックリブ、半分もらっていい?」

「遠慮するな。全部食べるんだ。ロイは何がいい?」

「僕は鶏担当で・・ローストチキンをお願いします」

ロイはすでに何か察しているのだろう。

頭が良くて助かる。

「よし、鶏は任せたぞ。レイリアは?」

「私はラムチョップでお願いします」

今日はチーム戦だから、戦術さえ誤らなければ、普通に食事を楽しめそうだ。

カインがロイからローストチキンをお裾分けされるのを横目に、アマンド様が聞いてきた。
 
「最近何か変わったことは?」

以前なら、聞かれるたびに何て返そうか困っていた質問だ。

今では考えるまでもなく、言いたいことが溢れてくる。

「ジュディ様から、来週お出かけに誘われました」

「お出かけ?どこに行くんだ?」

「行き先は秘密だそうです。」

お出かけ先は、ジュディ様の集めているポイントと関係がある場所らしい。

ジュディ様とゲルトさんのやりとりでずっと気になっていた、アレだ。

私がアマンド様にポイントの話をしていると、カインが話に加わってきた。

「あんな金持ちなのにポイント貯めないともらえないってなると、別荘とかかなー?」

「別荘を買うのに、そんな回りくどいことするかしら・・」

ジュディ様のお家なら、別荘を買うくらい、造作もないことのように思える。

「えー、じゃあ島とか?ロイはどう思う?」

「僕?うーん・・物じゃなかったら、国外への旅行とかかなぁ?」

なるほど・・ありうる!

「レイリア、来週のいつ?」

アマンド様が手を止めてこちらを見ている。

「来週の水曜です」

水曜・・と呟いたアマンド様が、よし、と頷いた。

「俺も行こう。」

俺も、とは・・

「今日の指南役を務めた分、どこかで休んでいいと言われているんだ。水曜だな?その日は会議もないし大丈夫だ」

「え?でも誘われたのは私ですし・・」

この間、初顔合わせが済んだとはいえ、私が誘われた場所に婚約者が着いてくるのはさすがにおかしい。

「それに、どこに行くかわかりませんよ?来ていただいてもお待たせするばかりになるかもしれないし・・」

行く先が男性には入りづらい場所だったり、アマンド様には退屈な場所かもしれない。

「かまわない。男が入れない場所なら外で時間を潰しているから気にしないでくれ」

「それじゃまるで護衛みたいですわ。何でそこまで・・」

「マルグリット侯爵令嬢が外出する機会など、そう多くはないだろう?」

「あ、はい。それは多分そうです・・」

ジュディ様は人付き合いを嫌って、御前試合の時くらいしか外出らしい外出をしないのだと、この間、侯爵夫人が嘆いていた。

「滅多にない機会を逃すはずがない。危険だ。俺も行かねば・・」

ブツブツ呟きながら険しい顔をするアマンド様に、私もハッとする。

もしかして、ジュディ様を狙う魔の手に関する情報が、王国騎士団であるアマンド様の耳に届いているんだろうか?

「ご、護衛の方もいらっしゃいますよ?」

「役に立たない。むしろいいように使われる可能性が大だ」

アマンド様が断言する。

マルグリット侯爵家の護衛を無力化するほどの手練れがジュディ様を狙っている、ということだろうか。

「わ、私、外出はお止めした方がいいですか?」

「レイリア、あのご令嬢を止められるとでも?」

「すいません、無理でした」

聞いてる途中で無理だな、と思ってました。

「その代わり、俺が同行すれば問題ない。レイリア、ご令嬢に、俺も同行することを伝えておいてくれ」

ジュディ様の安全のためならお願いするべきだろう。

「わかりました!」

私は力強く頷いた。
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