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御前試合
開幕
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ファンファーレに続き、ドラムが響く。
入場ゲートからまず現れたのは、バルト王国の国旗だ。
そしてその後ろに、黒地に赤い龍の描かれた団旗、王宮騎士団が続く。
ディフィート様は王宮騎士団の先頭だ。
3年連続で優勝しているディフィート様が姿を見せただけで、ワアッ!と会場が沸いた。
王宮騎士団の後に、白地に青の獅子の団旗、王国騎士団が続く。
アマンド様は、王国騎士団の先頭から2番目の所にいた。
オペラグラスでそろりと確認すると、前より髪を短くして、少し日に焼けているようだ。
観客席にばかり顔を向けているので、その表情はうかがえない。
少し後ろで手を振りながら入場してくるのはグルト様だろう。
灰色地に紫の鷲、国境騎士団の団旗が登場すると、入場ゲート近くの一団が、足を踏み鳴らしながら一斉に唱和する。
「ダント アンプ!ダント アンプ!ダント アンプ!」
国境騎士団の先頭、あれが国境騎士団最強というダント アンプか。
いつかカインが話していた通り大柄で、他の騎士より頭2つ分は背が高い。
名前を連呼され、両手を上げて応えていた。
「やっぱり多いわね」
「何がですか?」
「いつもより、決勝トーナメントまで勝ち残った王国騎士団の割合が多いのよ」
ジュディ様曰く、決勝トーナメントに進出する騎士の割合は、例年だと王宮騎士団が5、王国騎士団が3、国境騎士団が2程度の比率なのだそうだ。
「騎士団によってそんなにバラツキがあるんですか?」
「王宮騎士団は昔から剣の才能がある者を引き抜いてきたし毎日鍛錬しているから、まあ、多いのは当たり前ね。王宮以外の北城、東城、西城の3か所にも王宮騎士団はいるけど、やはり中央が一番強いわ。」
「そうなんですね・・」
「王国騎士団は、王都と地方じゃ仕事が違うのよ。地方はそれぞれ領主が治めてるから、剣の出番もほとんどない。だから地方にいる王国騎士団の主な役割は役所仕事で、頭数も少ないの。」
ふむふむ。
「それに比べて王都の王国騎士団、つまりシーリーウッド騎士団は、入団試験があるから剣の強い者が選抜されるし、入団してからしっかり鍛錬の時間もある。騎士だけで生計を立てられるけど、仕事があり過ぎるから、鍛錬に集中出来ないってのがあるわね。」
王都は国1番の貿易港でもある。
行き交う人も、面倒ごとも多く、困ったことがあるとすぐに騎士団が呼ばれるのだ。
「実力はあるんだろうけど、”王都の何でも屋”のままだと、決勝トーナメントの上位を目指すのは厳しいわよね。」
確かに、去年のアマンド様の様子を見るに、昼夜問わずのあの激務ぶりはすごかった。
会場では、ちょうど私たちがいる観覧席の真下辺りを王国騎士団が通過しているところだ。
相変わらずアマンド様が観覧席に顔を向けている。
帽子もあるしわからないだろうとは思うが、ジュディ様にバレない程度に、身を屈めた。
「国境騎士団は母数は多いけど、有事の際だけ召集がかかる者が多いの。大半が平民で、兼業でやってるから、例えば休耕期だけとか、冬だけとか、時期を選んで鍛錬の期間を設けているわ。だからまあ、剣を極めようとする人は、あんまり居ないわね。」
ジュディ様の話を踏まえて改めて入場してくる騎士たちを見てみる。
「確かに、王国騎士団と王宮騎士団が同じ位、居そうですね。」
「シーリーウッドの騎士が例年より多く残ってるのよ」
騎士達が整列し、ドラムロールが鳴り止む。
再びラッパのファンファーレが鳴り、国旗が掲揚された。
「さ、そろそろ立つわよ」
「え?」
立つ、とは?
「もうすぐ国王陛下の拝謁だから。」
「あ、はい。」
「うちの5つ先が国王陛下の観覧席なのよ」
え!そんなに近いの!?
「仕切りで見えないけど、こっち側にはいらっしゃるから、左斜め前を向いて立ってちょうだい。次のファンファーレが鳴ったらカーテンシーよ。わかった?」
だから騎士達もあっちの方向を向いて立っているのか。
何だか急に緊張してきた。
立って居住まいを正していると、ジュディ様の隣の侯爵夫人がこちらを向いて微笑んだ。
「ふふ、レイリアさん、そんな緊張しなくても大丈夫よ。堅苦しいのはこれくらいだから。」
とは言っても招かれている身。侯爵家の観覧席で、失礼のないようにしなければ。
「ああ、それと、その帽子は拝謁の間は取らないと。外してあげるわ!あら、髪型もオシャレねー」
・・・・ん?
入場ゲートからまず現れたのは、バルト王国の国旗だ。
そしてその後ろに、黒地に赤い龍の描かれた団旗、王宮騎士団が続く。
ディフィート様は王宮騎士団の先頭だ。
3年連続で優勝しているディフィート様が姿を見せただけで、ワアッ!と会場が沸いた。
王宮騎士団の後に、白地に青の獅子の団旗、王国騎士団が続く。
アマンド様は、王国騎士団の先頭から2番目の所にいた。
オペラグラスでそろりと確認すると、前より髪を短くして、少し日に焼けているようだ。
観客席にばかり顔を向けているので、その表情はうかがえない。
少し後ろで手を振りながら入場してくるのはグルト様だろう。
灰色地に紫の鷲、国境騎士団の団旗が登場すると、入場ゲート近くの一団が、足を踏み鳴らしながら一斉に唱和する。
「ダント アンプ!ダント アンプ!ダント アンプ!」
国境騎士団の先頭、あれが国境騎士団最強というダント アンプか。
いつかカインが話していた通り大柄で、他の騎士より頭2つ分は背が高い。
名前を連呼され、両手を上げて応えていた。
「やっぱり多いわね」
「何がですか?」
「いつもより、決勝トーナメントまで勝ち残った王国騎士団の割合が多いのよ」
ジュディ様曰く、決勝トーナメントに進出する騎士の割合は、例年だと王宮騎士団が5、王国騎士団が3、国境騎士団が2程度の比率なのだそうだ。
「騎士団によってそんなにバラツキがあるんですか?」
「王宮騎士団は昔から剣の才能がある者を引き抜いてきたし毎日鍛錬しているから、まあ、多いのは当たり前ね。王宮以外の北城、東城、西城の3か所にも王宮騎士団はいるけど、やはり中央が一番強いわ。」
「そうなんですね・・」
「王国騎士団は、王都と地方じゃ仕事が違うのよ。地方はそれぞれ領主が治めてるから、剣の出番もほとんどない。だから地方にいる王国騎士団の主な役割は役所仕事で、頭数も少ないの。」
ふむふむ。
「それに比べて王都の王国騎士団、つまりシーリーウッド騎士団は、入団試験があるから剣の強い者が選抜されるし、入団してからしっかり鍛錬の時間もある。騎士だけで生計を立てられるけど、仕事があり過ぎるから、鍛錬に集中出来ないってのがあるわね。」
王都は国1番の貿易港でもある。
行き交う人も、面倒ごとも多く、困ったことがあるとすぐに騎士団が呼ばれるのだ。
「実力はあるんだろうけど、”王都の何でも屋”のままだと、決勝トーナメントの上位を目指すのは厳しいわよね。」
確かに、去年のアマンド様の様子を見るに、昼夜問わずのあの激務ぶりはすごかった。
会場では、ちょうど私たちがいる観覧席の真下辺りを王国騎士団が通過しているところだ。
相変わらずアマンド様が観覧席に顔を向けている。
帽子もあるしわからないだろうとは思うが、ジュディ様にバレない程度に、身を屈めた。
「国境騎士団は母数は多いけど、有事の際だけ召集がかかる者が多いの。大半が平民で、兼業でやってるから、例えば休耕期だけとか、冬だけとか、時期を選んで鍛錬の期間を設けているわ。だからまあ、剣を極めようとする人は、あんまり居ないわね。」
ジュディ様の話を踏まえて改めて入場してくる騎士たちを見てみる。
「確かに、王国騎士団と王宮騎士団が同じ位、居そうですね。」
「シーリーウッドの騎士が例年より多く残ってるのよ」
騎士達が整列し、ドラムロールが鳴り止む。
再びラッパのファンファーレが鳴り、国旗が掲揚された。
「さ、そろそろ立つわよ」
「え?」
立つ、とは?
「もうすぐ国王陛下の拝謁だから。」
「あ、はい。」
「うちの5つ先が国王陛下の観覧席なのよ」
え!そんなに近いの!?
「仕切りで見えないけど、こっち側にはいらっしゃるから、左斜め前を向いて立ってちょうだい。次のファンファーレが鳴ったらカーテンシーよ。わかった?」
だから騎士達もあっちの方向を向いて立っているのか。
何だか急に緊張してきた。
立って居住まいを正していると、ジュディ様の隣の侯爵夫人がこちらを向いて微笑んだ。
「ふふ、レイリアさん、そんな緊張しなくても大丈夫よ。堅苦しいのはこれくらいだから。」
とは言っても招かれている身。侯爵家の観覧席で、失礼のないようにしなければ。
「ああ、それと、その帽子は拝謁の間は取らないと。外してあげるわ!あら、髪型もオシャレねー」
・・・・ん?
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