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春
我儘の先生が必要だと思います①
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月曜日。
お茶を飲みながら、昨日のお茶会を思い返す。
考えれば考えるほど・・・失敗した気がしてしまう。
彼の義務感が満たせたのは良いとして、我儘として認識されていない以上、私と過ごす時間を無駄に増やしただけである。
ごめん、メイベル。
我儘になって嫌われて婚約解消に持って行こう作戦に、早くも暗雲が立ち込めている。
「策士、策に溺れる」という諺があったが、私の場合は無策のために溺れてしまった。
いつもこうだ。
人によっては、見よう見まねで何でも器用にこなせる人もいるだろうに・・
私の場合は、習い事も何でも、ちゃんと先生に1から10まで教わって、練習を繰り返さないと習得できない。
器用な人が羨ましい。
ん?
何かが閃き、私はティーカップをテーブルに置いた。
そうか。先生だ・・
我儘な人が具体的にイメージできないから、こんなに困っているんだ。
こうしてはおれない!
私は立ち上がり、小机の一番下の引き出しを開けた。
そこにはまだお返事しきれていないお茶会の招待状が10通ほど入っていた。
確かこの中に・・
目当ての招待状は一番下にあった。
家紋のついた封蝋を開く。
お茶会の日にちは・・・今週金曜日!?
まずい!
便箋を手に取り急ぎ机に向かった。
「本日はお招きいただきましてありがとうございます。レイリア ディセンシアと申します。」
金曜日。
私はマルグリット侯爵のお屋敷にいた。
「まぁまぁ、ようこそお越しくださいました!ほら、ジュディもご挨拶して」
穏やかな笑みをたたえるマルグリット夫人が、栗毛色の美少女の背中を押す。
この方が彼の有名な・・!
「・・・ジュディ マルグリット。言っておくけど、招いたのは私じゃなくて、お母様だから。」
仏頂面でそう言って、プイッと横を向く。
「レイリアさん、ごめんなさいね。この子、照れちゃって・・」
「照れてないわ」
「ジュディ?あなた、そんなにお勉強したいのね?それなら明日は午後もケネス先生に来ていただいて・・」
「レイリア様、私のどが渇いたわ。早くお茶に行くわよ」
「あ、あの・・」
ジュディ様が私の手を握ってズンズンと先に行く。
戸惑いながら後ろを振り返ると、マルグリット夫人がニコニコしながら手を振っていた。
立派な造形美を誇る生垣のロングウォークを抜けて、案内されたのはスイートアリッサムやアネモネなど春の花が咲き誇る庭園だった。
うちの庭園とは比べ物にならないくらい見事だ。
テーブルの上には、到底2人では食べきれないような煌びやかなお菓子が並んでいる。
使用人が5人も控えており、飴細工の白鳥までいる。
席に着き、お茶が準備されるとジュディ様は「それで?」と横柄に聞いてきた。
「初めまして、よね?今まで全く交流も面識もない私の招待に応じるなんて、何が狙いなの?」
胸がドキドキする。
「うちが侯爵家だから、顔でもつないでおけって言われた?ディセンシア伯爵家ってそんなに切羽詰まってるの?」
そう言って、せせら嗤う。
「それとも、私のお茶会に来るような物好きがいるのかどうか、偵察に来たのかしら?あなた、大人しそうだものね。お友達にそう言われて、逆らえなかったとか?」
すごいオーラだ。とても私の年下・・15歳とは思えない。
気弱な令嬢だったら、萎縮して泣き出してしまうかもしれない。
だが、アマンド様との気まずい茶会を幾多も経験している私にとって、この程度は慣れたものだ。
「あの!」
お茶に口をつけていたジュディ様は、不機嫌そうに片眉をあげて私を見た。
「突然ではありますが、ジュディ様にご相談したいことがありまして!」
お茶を飲みながら、昨日のお茶会を思い返す。
考えれば考えるほど・・・失敗した気がしてしまう。
彼の義務感が満たせたのは良いとして、我儘として認識されていない以上、私と過ごす時間を無駄に増やしただけである。
ごめん、メイベル。
我儘になって嫌われて婚約解消に持って行こう作戦に、早くも暗雲が立ち込めている。
「策士、策に溺れる」という諺があったが、私の場合は無策のために溺れてしまった。
いつもこうだ。
人によっては、見よう見まねで何でも器用にこなせる人もいるだろうに・・
私の場合は、習い事も何でも、ちゃんと先生に1から10まで教わって、練習を繰り返さないと習得できない。
器用な人が羨ましい。
ん?
何かが閃き、私はティーカップをテーブルに置いた。
そうか。先生だ・・
我儘な人が具体的にイメージできないから、こんなに困っているんだ。
こうしてはおれない!
私は立ち上がり、小机の一番下の引き出しを開けた。
そこにはまだお返事しきれていないお茶会の招待状が10通ほど入っていた。
確かこの中に・・
目当ての招待状は一番下にあった。
家紋のついた封蝋を開く。
お茶会の日にちは・・・今週金曜日!?
まずい!
便箋を手に取り急ぎ机に向かった。
「本日はお招きいただきましてありがとうございます。レイリア ディセンシアと申します。」
金曜日。
私はマルグリット侯爵のお屋敷にいた。
「まぁまぁ、ようこそお越しくださいました!ほら、ジュディもご挨拶して」
穏やかな笑みをたたえるマルグリット夫人が、栗毛色の美少女の背中を押す。
この方が彼の有名な・・!
「・・・ジュディ マルグリット。言っておくけど、招いたのは私じゃなくて、お母様だから。」
仏頂面でそう言って、プイッと横を向く。
「レイリアさん、ごめんなさいね。この子、照れちゃって・・」
「照れてないわ」
「ジュディ?あなた、そんなにお勉強したいのね?それなら明日は午後もケネス先生に来ていただいて・・」
「レイリア様、私のどが渇いたわ。早くお茶に行くわよ」
「あ、あの・・」
ジュディ様が私の手を握ってズンズンと先に行く。
戸惑いながら後ろを振り返ると、マルグリット夫人がニコニコしながら手を振っていた。
立派な造形美を誇る生垣のロングウォークを抜けて、案内されたのはスイートアリッサムやアネモネなど春の花が咲き誇る庭園だった。
うちの庭園とは比べ物にならないくらい見事だ。
テーブルの上には、到底2人では食べきれないような煌びやかなお菓子が並んでいる。
使用人が5人も控えており、飴細工の白鳥までいる。
席に着き、お茶が準備されるとジュディ様は「それで?」と横柄に聞いてきた。
「初めまして、よね?今まで全く交流も面識もない私の招待に応じるなんて、何が狙いなの?」
胸がドキドキする。
「うちが侯爵家だから、顔でもつないでおけって言われた?ディセンシア伯爵家ってそんなに切羽詰まってるの?」
そう言って、せせら嗤う。
「それとも、私のお茶会に来るような物好きがいるのかどうか、偵察に来たのかしら?あなた、大人しそうだものね。お友達にそう言われて、逆らえなかったとか?」
すごいオーラだ。とても私の年下・・15歳とは思えない。
気弱な令嬢だったら、萎縮して泣き出してしまうかもしれない。
だが、アマンド様との気まずい茶会を幾多も経験している私にとって、この程度は慣れたものだ。
「あの!」
お茶に口をつけていたジュディ様は、不機嫌そうに片眉をあげて私を見た。
「突然ではありますが、ジュディ様にご相談したいことがありまして!」
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