【完結】浮気の証拠を揃えて婚約破棄したのに、捕まってしまいました。

airria

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私が泣いていい話ではない。

私が泣くべきじゃない。

彼を見捨てて、自由を求めた私が泣く資格なんてない。

それでも、彼の話を聴いて涙が止まらなかった。

彼は確かに多くの間違いを犯し、多くの人を傷つけ、死を蒔いた。

許されることじゃない。

でも、彼が自身に課せられた呪いの運命を知った時、彼はまだ16歳だったのだ。

父はそれを、彼にただ知らせた。

受け止めきれないほどの絶望と、その身に抱え込まねばならない苦しみを与えるだけ与えて、役目は済んだとばかりに立ち去った。

16歳の私はきっと、彼の話を受け止めきれなかった。

彼もそれがわかっていたから・・・だから、私から隠すしかなかった。

私は泣いた。

彼はー

彼は、ずっと彼のままだった。

私の大好きな、ジェイド様のままだった。

ーやっと、見つけた。




ベッドから立ち上がり、私はそこに座るジェイド様を抱きしめた。

両手で彼の頬を包み込み、上を向かせる。

彼のルビー色の瞳から、涙が伝った。

「ジェイド様・・・」

身を屈めて彼に口付けをする。

初めてのそれは、涙の味がした。

「ロゼッタ、何を・・!」

焦った様子の彼が私の肩を押して離そうとしたが、私は離れなかった。

「ジェイド様」

揺らぐルビー色の瞳をじっと見つめる。

「私を、あなたの呪いで縛って。」

もう、離さないで。

次第に彼の腕から力が抜けていき、私は口づけを再開した。

次第に深くなる口づけとともに、ゆっくりとベッドに倒れこむ。

気づけば私は彼を見上げていた。

銀の髪がサラサラと降ってくる。

もっと触れてほしくて、私は手を伸ばした。

「ロゼッタ・・」

彼の顔が近づいて、私に口づけを落とす。

「ロゼッタ・・ロゼッタ、愛してる」

吐息が熱く、深くなっていく。





*******************


「ロゼッタ、僕はね、魔法で皆を幸せにしたいんだ」

私は微笑んで頷いた。

「僕は魔力がとても高いんだって。筆頭魔法使いになれるかもしれないんだって!」

「きっとできるわ!ジェイド様は、皆を幸せにする!」

「うん!」

ジェイド様が笑う。

彼は魔力もあって優しくて、母親が埋葬された日でさえ、皆の幸せを願う。

それに比べて私は魔力も無くて、耐えることに必死で、誰の力にもなれなくて。

「・・ッタ?」

・・私が、支えられるだろうか。

彼を支えるのは、きっともっと素敵な・・

「ロゼッタ?」

浮かない顔をしていた私に気がついたんだろう。

心配そうに、ジェイド様が私をじっと見つめていた。

「ロゼッタ、これだけは覚えておいて?僕が皆を幸せにしても・・・」

私の手を取りキュッと握った。

「君は、僕だけを幸せにしてくれればいいんだ」

パチパチ、と私は目を瞬いた。

「ジェイド様だけ?」

「うん。どう?」

「・・それなら、できそうな気がする」

ルビー色の瞳が、暖かく緩む。

「君にしかできないよ?僕を幸せにしてくれるのは、君だけ。」

「うん!私がジェイド様を幸せにする!」


*******************


幸せな気持ちで、目が覚める。

うなじに、規則正しい彼の寝息がかかるのがくすぐったくて、モゾモゾ動くが、逆にギュウっと抱きしめられた。

互いの肌が心地良い。

動くのを諦めて、私は水玉模様の窓を見る。

空は2色に彩られていた。

夜の闇が、茜色に押し上げられていく。


ーああ、夜明けだ。
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