【完結】浮気の証拠を揃えて婚約破棄したのに、捕まってしまいました。

airria

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「あぁ、起きたね、ロゼッタ」

カチリ、という音の後にドアが開き、彼が入ってきた。

「さっき見にきた時はまだ寝てたから、僕だけ先に朝食を終わらせたんだ。君のも準備させよう。」

ドアの外に言付けてから入ってきた彼は、ダークグリーンのクラバットを結び、外行きの格好をしていた。

銀の髪が彼の動きに合わせて波打つ。

「・・ここは?」

「僕らの家だよ。・・あぁ、そうか。景色が見えないからわからないんだね」

彼は窓に近づき下を見下ろした。

「ここはバウムハイムの屋敷だよ。僕が爵位を継いでから、中を改装したんだ。僕と一緒の時なら、この窓から外を見せてあげてもいいよ。でもひとりの時はまだ我慢してね。この硝子窓は作るのがとても大変だったから、壊されると困るんだ」

私は椅子から立ち上がり、意を決してお願いする。

「バウムハイム伯爵様。家に帰らせて頂けませんか。」

私の呼びかけに、彼の顔が僅かに歪んだ。

「ここが、君の家だ。」

私は慎重に、言葉を継いだ。

「私は恐れ多くもバウムハイムの名を捨て、身も心も平民となり生きてきました。ここが私の家なんて・・このような不出来な私には過分のお申し出です。」

窓を背にした彼が、じっと私を見ている。

「3年もの間出奔していた身です。もし貴族に戻っても、結婚もできず、社交でお役立ちすることもできず、この家に大変なご迷惑をおかけするでしょう。情けをかけていただけるのであれば、どうか私のことは貴族籍から除籍してください。ご迷惑をおかけしない形で、これまで通りひっそりと市井で暮らしたいと思います」

「ロゼッタ、君はそれでちゃんと暮らしていけるの?」

礼をしたまま小さく頷いた。

「今までも、1人でやってきました。」

「そうか・・では僕も当主として答えよう。」

彼は窓から離れ、私の目の前で立ち止まった。

ルビーのように赤い瞳に見下ろされる。

「バウムハイム家から出て平民になるというのなら、君は家族ではなくなる。その時には、3年前に君が宝物庫から盗んだものの相当額3000万と、慰謝料2000万の合わせて5000万ドネを損害賠償として君に請求しよう。」

ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。

「あれは君の私物ではなくこの家の財産だ。家族が手をつけたのであれば家族の問題だが、赤の他人が勝手に持って行ったとあれば、それは窃盗だ。僕は当主として君に請求する権利がある。もう一度考えてごらん、?それを支払いながら、本当にちゃんと暮らしていけるの?」

言葉の出ない私に彼が微笑む。

「考えるまでもないね。君はバウムハイム家でたった1人の僕の身内だ。」

ノックの後に、しずしずとワゴンを押したメイドが入ってきて、食事の支度をして出て行った。

「じゃあ僕は仕事に行くよ。夕方には戻ってくるから、またその時に話そう。」

彼は私の肩を押して椅子に座らせると、頭に軽くキスをして出て行った。







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