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何だかこの占い師の卵に、火をつけてしまったらしい。
「本当に、これで最後よ?」
「わかってますって!おねーさん、お名前は?」
「ロゼ、だけど。」
占い師は頷くと、目を閉じて3度、深呼吸をした。
最後の息をゆっくりと吐き出すと、薄く目を開く。
「開示、ロゼ」
そのまま、私の手を水晶から離させる。
水晶は淡く発光していた。
(水晶玉の中に浮かび上がるように見えるのかしら?それとも・・)
「繋結」
そう唱えた瞬間、水晶の発光が強くなり、白い光で満たされる。
(きれい・・)
しかし眩いほどの光は数秒で鳴りを潜め、その後は淡い発光すら消えていく。
元に戻った水晶玉を見て、占い師はため息をついた。
「やっぱり、何も見えませんでした。今日はかなりいい線までいってたんだけど・・ごめんなさい。」
悔しそうに唇を噛んで頭を下げる。
「いいのよ。水晶玉が光るなんて」
思わなかったわ、と続けようとしたその時だ。
ロゼッタの目の前で、水晶玉が真っ赤に光りだした。
先ほどの発光とは全然違う。
何か禍々しいものを感じさせる水晶の変化に、言葉を失う。
真っ赤な水晶の中央に黒い球体が浮かんだかと思うと、それがどんどん大きくなっていく。
(この色・・ルビーのようで)
「見つけた・・」
ハッとして顔を上げると、生気のない顔で占い師が私を見ていた。
その占い師の双眸が、水晶と同じルビーの色に変わっていてゾッとする。
「ヒッ・・!」
(この水晶玉は・・目だ)
ルビーの目を持つ人物など、1人しか知らない。
ロゼッタを覗き込もうとするかのように、黒い部分が大きくなっていく。
「ぁ・・う」
見つめては危険だと、本能がそう訴えるのに、その水晶玉から目が離せない。
頭に混じり始める断片的な言葉。いや、言葉にまで至らない、それは言うなれば思念だ。
ロゼッタ ミツケタ ミツケタ ボクノ ドコ ドコ ロゼッタ ロゼッタ ロゼッタ
今日の出来事が、頭の中で逆再生されていく。
占い、市場、職場の事務室・・
思考が操作され、記憶が読み取られていく恐怖。
記憶を思い返さないように、必死に自分を叱咤するのに、制御できない。
このままでは家まで知られてしまう・・!
「やめて・・・やめてっ!」
目を閉じることも叶わない。
混乱した頭で、記憶の流出を止めようと必死に抵抗していると、水晶玉の中の瞳孔が更に大きくなった。
グッとかけられる力が増したのを感じた、その瞬間。
胸元で鋭い痛みが走ったのと同時に、バンっ!と音がして、水晶玉が粉々に割れ散った。
占い師の体が傾いで路面に倒れこむ。
「・・は、はぁ、はぁ」
記憶の流出が唐突に止み、ロゼッタは目を瞬いた。
こめかみから、冷や汗が流れる。
震える手で胸元から巾着を取り出し、中を確認すると、身守り石が真っ二つに割れていた。
倒れ伏していた占い師がのろのろと顔を上げた。
「あ、あれ?私・・あ、おねーさん?大丈夫ですか!?顔が真っ青・・!え、ちょっと!おねーさん!」
その声に振り返ることなく、ロゼッタは踵を返して走り出した。
「本当に、これで最後よ?」
「わかってますって!おねーさん、お名前は?」
「ロゼ、だけど。」
占い師は頷くと、目を閉じて3度、深呼吸をした。
最後の息をゆっくりと吐き出すと、薄く目を開く。
「開示、ロゼ」
そのまま、私の手を水晶から離させる。
水晶は淡く発光していた。
(水晶玉の中に浮かび上がるように見えるのかしら?それとも・・)
「繋結」
そう唱えた瞬間、水晶の発光が強くなり、白い光で満たされる。
(きれい・・)
しかし眩いほどの光は数秒で鳴りを潜め、その後は淡い発光すら消えていく。
元に戻った水晶玉を見て、占い師はため息をついた。
「やっぱり、何も見えませんでした。今日はかなりいい線までいってたんだけど・・ごめんなさい。」
悔しそうに唇を噛んで頭を下げる。
「いいのよ。水晶玉が光るなんて」
思わなかったわ、と続けようとしたその時だ。
ロゼッタの目の前で、水晶玉が真っ赤に光りだした。
先ほどの発光とは全然違う。
何か禍々しいものを感じさせる水晶の変化に、言葉を失う。
真っ赤な水晶の中央に黒い球体が浮かんだかと思うと、それがどんどん大きくなっていく。
(この色・・ルビーのようで)
「見つけた・・」
ハッとして顔を上げると、生気のない顔で占い師が私を見ていた。
その占い師の双眸が、水晶と同じルビーの色に変わっていてゾッとする。
「ヒッ・・!」
(この水晶玉は・・目だ)
ルビーの目を持つ人物など、1人しか知らない。
ロゼッタを覗き込もうとするかのように、黒い部分が大きくなっていく。
「ぁ・・う」
見つめては危険だと、本能がそう訴えるのに、その水晶玉から目が離せない。
頭に混じり始める断片的な言葉。いや、言葉にまで至らない、それは言うなれば思念だ。
ロゼッタ ミツケタ ミツケタ ボクノ ドコ ドコ ロゼッタ ロゼッタ ロゼッタ
今日の出来事が、頭の中で逆再生されていく。
占い、市場、職場の事務室・・
思考が操作され、記憶が読み取られていく恐怖。
記憶を思い返さないように、必死に自分を叱咤するのに、制御できない。
このままでは家まで知られてしまう・・!
「やめて・・・やめてっ!」
目を閉じることも叶わない。
混乱した頭で、記憶の流出を止めようと必死に抵抗していると、水晶玉の中の瞳孔が更に大きくなった。
グッとかけられる力が増したのを感じた、その瞬間。
胸元で鋭い痛みが走ったのと同時に、バンっ!と音がして、水晶玉が粉々に割れ散った。
占い師の体が傾いで路面に倒れこむ。
「・・は、はぁ、はぁ」
記憶の流出が唐突に止み、ロゼッタは目を瞬いた。
こめかみから、冷や汗が流れる。
震える手で胸元から巾着を取り出し、中を確認すると、身守り石が真っ二つに割れていた。
倒れ伏していた占い師がのろのろと顔を上げた。
「あ、あれ?私・・あ、おねーさん?大丈夫ですか!?顔が真っ青・・!え、ちょっと!おねーさん!」
その声に振り返ることなく、ロゼッタは踵を返して走り出した。
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