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プロローグ
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鈍い頭痛とともに目が覚める。
ゆっくりと瞳を開けると、白い天井が目に入った。
「ロゼッタ?」
心配そうに私の顔を覗き込むのは・・そうだ。この世界での、私の婚約者だ。
「ロゼッタ?覚えてる?僕の目の前で急に倒れてしまって・・小一時間くらい君は寝ていたんだ。」
部屋を借りて長椅子の上に寝かせてくれていたらしい。
体は大丈夫か、どこか痛いところはないか、と心配そうに聞いてくる婚約者をじっと見つめる。
美しい銀髪に、切れ長の、ルビーのような赤い瞳。
透き通るように白い肌、高い鼻梁、薄い唇。
どの角度から見ても麗しい、整った顔だ。
「ジェイド様、私、倒れる前に何のお話をしていたのでしたっけ?」
「・・何だったかな。君が倒れて驚きすぎたせいか、内容は覚えていないんだ・・ごめんね。何か気になることでも?」
そう話す彼の表情は、自然に見えた。
「あ、いえ。お話の途中だったらいけないと思いまして」
「僕も覚えてないし、きっと大したことじゃない。さて、君の家には連絡しておいたから、ここでもう少し休んでいよう。」
「はい、ありがとうございます。」
部屋の外からは、音楽や笑い声が聞こえてくる。
そうだ、今日は夜会に来ていたんだった。
「あの、ジェイド様。私はもう大丈夫なので、どうぞお戻りください。」
「そんなことできるわけないだろう?君は僕の婚約者なんだよ?」
「・・ありがとうございます」
そう言いながら、彼の言葉に大いに冷めた気持ちになる。
倒れる前までだったら、私を思いやるような、このジェイド様の発言に、感激して舞い上がっていたことだろう。
そう、倒れる前までなら。
私はロゼッタ バウムハイム。
リンドール帝国の筆頭魔法使いを務める、バウムハイム伯爵の長女である。
この1時間ほど前に、私は唐突に前世を思い出した。
この生を受ける前、私はこことは別の世界の・・日本という国で生きていた。
前世の記憶はどれもひどく曖昧で、一番はっきりと思い出せるのは、社会人として働いていた記憶だが、結婚していたのかとか子供がいたのかとか、そこまでは思い出せない。
もしかしたら、若くして死んでしまったのかもしれない。
前世の記憶は同時に、日本人として生きていた頃の私の「当たり前」も蘇らせた。
差別が禁止され、自由な発言が認められ、誰もが幸福に生きる権利を保証されていた、今の世界には無い「当たり前」を。
そして結論付けた。
献身的に見える目の前の婚約者が、ただ私を利用しようとする、ただの浮気者のクソヤローであることを。
ゆっくりと瞳を開けると、白い天井が目に入った。
「ロゼッタ?」
心配そうに私の顔を覗き込むのは・・そうだ。この世界での、私の婚約者だ。
「ロゼッタ?覚えてる?僕の目の前で急に倒れてしまって・・小一時間くらい君は寝ていたんだ。」
部屋を借りて長椅子の上に寝かせてくれていたらしい。
体は大丈夫か、どこか痛いところはないか、と心配そうに聞いてくる婚約者をじっと見つめる。
美しい銀髪に、切れ長の、ルビーのような赤い瞳。
透き通るように白い肌、高い鼻梁、薄い唇。
どの角度から見ても麗しい、整った顔だ。
「ジェイド様、私、倒れる前に何のお話をしていたのでしたっけ?」
「・・何だったかな。君が倒れて驚きすぎたせいか、内容は覚えていないんだ・・ごめんね。何か気になることでも?」
そう話す彼の表情は、自然に見えた。
「あ、いえ。お話の途中だったらいけないと思いまして」
「僕も覚えてないし、きっと大したことじゃない。さて、君の家には連絡しておいたから、ここでもう少し休んでいよう。」
「はい、ありがとうございます。」
部屋の外からは、音楽や笑い声が聞こえてくる。
そうだ、今日は夜会に来ていたんだった。
「あの、ジェイド様。私はもう大丈夫なので、どうぞお戻りください。」
「そんなことできるわけないだろう?君は僕の婚約者なんだよ?」
「・・ありがとうございます」
そう言いながら、彼の言葉に大いに冷めた気持ちになる。
倒れる前までだったら、私を思いやるような、このジェイド様の発言に、感激して舞い上がっていたことだろう。
そう、倒れる前までなら。
私はロゼッタ バウムハイム。
リンドール帝国の筆頭魔法使いを務める、バウムハイム伯爵の長女である。
この1時間ほど前に、私は唐突に前世を思い出した。
この生を受ける前、私はこことは別の世界の・・日本という国で生きていた。
前世の記憶はどれもひどく曖昧で、一番はっきりと思い出せるのは、社会人として働いていた記憶だが、結婚していたのかとか子供がいたのかとか、そこまでは思い出せない。
もしかしたら、若くして死んでしまったのかもしれない。
前世の記憶は同時に、日本人として生きていた頃の私の「当たり前」も蘇らせた。
差別が禁止され、自由な発言が認められ、誰もが幸福に生きる権利を保証されていた、今の世界には無い「当たり前」を。
そして結論付けた。
献身的に見える目の前の婚約者が、ただ私を利用しようとする、ただの浮気者のクソヤローであることを。
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