異世界王の憂鬱

siro

文字の大きさ
上 下
1 / 6

1話 王様の憂鬱

しおりを挟む
....はぁ、憂鬱だ。
僕は、心の中でため息をついた。
何故、その様な状態なのかと言うと、
今現在、会議中でしかも何か配下達がバチバチと論争を引き起こしているからだ。

「先ずは国力を上げて自国の強化を...」
「いいや、我が帝国に反旗を翻す者達の粛正が先だろう!」
「貴様は何を考えているのだ!我が帝国に反感を持つものがいるなどとっ!!」
「黙れ!金勘定しか能の無い貴様に言われたくないわ」
「何だと!」
論争を交わしていた二人がお互いの胸ぐらを掴み合っている。

(...あぁ、また始まった。こうなると長いんだよなぁ~)
(.....面倒だけど止めないといけないよなぁ~僕、国王だし)
僕は座っていた玉座を立とうとした。その時、何時間も座っていた為だろう玉座に手をかけた瞬間バランスを崩して、倒れそうになった。
(!?あぶなっ、)
慌てて、僕は掴めそうなものを手探りで探した。
偶然、近くに掴めるものがあり、僕はそれを掴み体重を支えた。
ガシャーン!!
大きな音がたち配下が僕の方に目を向けた。
....(倒れないために掴んだ)剣に手をかけている僕の姿に、

すると、周りの配下皆、平伏して大声を上げた

「「申し訳ありません!!!」」 
「へっ、陛下のごご御気分を煩わせるつもりはこれ程も...」
「そそそうでございます。ででですからどどどうか...」
今の今まで怒鳴り合ってた二人がまるで、精肉にされる前の豚の様に怯えながら地面に顔を伏せてい。
他の配下も同様に地面に顔がめり込む程、伏せている。

(また、やってしまった。早く誤解を解かないと)
(...!!そうだ。この剣を持っているからいけないんだ手を離せば怖がられる心配はない。)
そう思い、僕は剣から手を離した。
すると剣は転がりながら配下の元に落ちてきた。
配下は暫く沈黙したあと、
「....承知いたしました。この議題の結論は二人の決闘で決めさせていただきます!」
(.....は?)
「確かに、我々は命を懸けてこの議題に望んでいる。口で決着がつかないのなら文字通り力ずくで決着をつけるべきだ!」
(ん?ちょっとまって?...え?)
「流石でございます、陛下もっとも合理的でかつ時間を無駄にしない素晴らしい案です!」
すると、周りの配下まで勝手に頷き納得してしまった。
(いや、違う違う違う違う違う!)
すると、側にいた別の配下が二人に向かって
「早速、決闘の準備を...二人ともそれでよいな?」と言うと
「勿論、陛下の考えに賛同致します!」
「私もです!」
二人は意気揚々と僕に向かって忠誠を誓った。
(何か、めっちゃ勘違いされた!?やばいやばい止めないと...)
「「では、行ってまいります。」」
二人は息を揃えて扉に手をかけた。
(って、早すぎだろぉ!?何この決断の早さ!しかも、二人とも爽やかな顔で帰ろうとしてんの?今から殺し合いするんだよね?「帰りご飯一緒に食べに行く?」みたいに気楽に決闘しにいくなよ。)
(...これは、止めないと。)
僕は意を決して、声をかけた。
「まっ...待て!」
その声を聞くと二人は止まり僕の顔を見た。
(い...言うんだ。「決闘なんてしなくて良いって」)
僕は二人の顔を見る。
(うっわぁ、すっごい二人とも忠誠心MAXな目線出してんだけど...これあれだよね?)
(止めたら空気読めないって思われるよね100%)
(けど、二人とも死んでほしくないんだよなぁ...どうしよう?)
(こんなんで死んだら、みっともない...これだ!)
僕は緊張を落ち着けて二人の顔を見ながら言った。
「二人とも(こんなところで死んだら)みっともない(から死ぬような)戦いはするなよ?」
「「はい、陛下!!」」
(やらかしたぁぁぁ!!)
二人は意気揚々と部屋を出ていった。
その後、二人が血で血を洗う凄惨な決闘を行ったことは言うまでもない.....
(...やっぱり、僕に国王なんて無理だぁぁぁぁぁ!!)


ここは、地球とは全く別の世界、分かりやすく言うと「異世界」っていうヤツで僕はこの世界にある『バルザス帝国』って国の国王をしています。
ここは所謂「独裁政権」を行っていて僕の父がこの国を建国し支配していました。
父は残忍で冷酷な人(まぁ、異世界だから人じゃ無いんだけど見た目、人なんで人言うことで)で誰も逆らえませんでした。
僕が生まれてから直ぐ父にこの世界の支配者としてのあり方や支配者の正しい振る舞いを子供の頃から叩き込まれました。
元々、引っ込み思案で内気な性格だったんですが、それ以上に僕が人前でうまく喋れなかったり思いを伝えられないのは「支配者たる者、自分の考えを知られてはならない。」と言う父の教えも理由にあると思います。
そして、無事に僕は父が望む完璧な支配者(見た目だけ)になり父の死後、僕はこの国の王になったのですが...まぁ結果は見ての通り
毎回毎回、勘違いが勘違いを生んでどっか日常系のドタバタアニメばりに予想をしない方向に進んでいっちゃうんです。
もう正直、僕は部屋に閉じ籠ってゲームばっかしてるニート生活を送りたいです。
けど、こんな支配者らしくない僕だからこそ出来ることもあると思うんです。
だから、今日も僕は憂鬱な気分になりながら異世界の王様をやっていきます。

いつか、皆に僕の本当の気持ちが伝わるように



                                                              続く
しおりを挟む

処理中です...