異世界王の憂鬱

siro

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6話 悲劇の憂鬱 下

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「両方の王と軍の排除?」
僕が訊ねるとシーが答えた。
「そう、それがデラス共和国の本当の狙い。」
「デラス共和国にとって両軍はともに邪魔な存在だからね。」
「バルザス帝国は軍事力、エステラート王国は農地などが多く商業が発達している。」
「そして、同盟を結んでいる現状デラス共和国にとって両者は生かしておくだけ邪魔なんだ。」
「それなら、両方潰せばいいと考えたんだろう両国に裏切りの提案を持ちかけ戦争を起こし王も戦場におびき寄せる。」 
「後は.....」
「両方始末すれば国は崩壊する。」
「そういうことだろうね。」
「..........」
「ごめんねこれはもう変えられない運命なんだ。」
「だから」
「大丈夫です国は崩壊させたりしません。」
「僕に作戦があるんです。」


(その為には彼女の助けが必要だ。)
僕は手紙を書き終えるとセドリックに渡して
急ぎエステラート王国に向かうように指示をした。
「お任せくださいぼっちゃま馬なら1日もかけますまい。」
そう言うとセドリックは足早に部屋をあとにした。
「それで...私は何を?」アリアが訊ねた。
「アリアはこれを帝国の畜産関係の人に教えて農民に教えてあげて欲しいんだ。」
僕はアリアに紙の束を渡した。
「これは何ですか?ぼっちゃま。」
「害虫から作物を守れる農薬のレシピだよ。」


物語は少し遡り真っ白い空間にて、
「そうだ。残りの加護について説明しておくよ。」
そう言うと小さな小袋僕に手渡した。
「これは?」
「これこそが二つ目の加護「検索」(サーチ)だよ。」 
「この小袋には特殊な仕掛けがしてあって君が所持してないと発動しない。」
「効果は君が望む知識を所有する物を君の世界に召喚できるんだ。」
「凄いですね。」
「試しに農地の害虫についてのことを調べてみたら?」
そう言われて僕は小袋に害虫の対処法を願いながら手を入れると何かに当たり引き抜いてみると本が出てきた。
表紙には「猿でも分かる一から始める農業のやり方(初級編)」と書かれている。
「一体なんなんですか?この本は」
「ワシの世界の知識とリンクする様にしたせいかもしれないがまぁ、効果は保証するよ。」
「本当はスマホとかにしたかったんだけどさこの世界そこまで発展してないし。」
(すまほ?)
「まぁ、容量あってもゲームとか動画とかで使っちゃいそうだからいいよねこの方が」
(げーむ?どうが?何を言ってるんだろう?)
「兎に角、これは二つ目の加護だ。」
「そして、最後三つ目の加護だが....」
「否定(ディナル)ですか。」 
「これはまぁ、もしもの時の保険とでも思っておいて...普通じゃ使う機会の無い加護だから」


害虫の件は加護の力で何とかなるだろう。
問題は、デラス共和国の方だ。
両国が戦場に選んだのは丁度両国の中間にある平原だとセドリックから聞いた。
(ならばギリギリ間に合うはずだ。)
そして、エリス姫ならこの文面の本当の意味を理解してくれるはず....


時は流れて両国の雌雄を決する平原にて...
両軍の王の思考は共に戦闘は一瞬で片がつくものになる...筈だった。
定刻通り現れたデラス共和国の軍は両軍に味方することなくただ、少し遠いところに鎮座していた。
((何をしているのだデラス軍は!))
二人が同じような疑問を持った刹那。
ドーーーン!強大な爆発が突撃していた二軍を襲った。
天まで一瞬でも届きそうな爆発の後、土煙の向こうから見えたのは二軍の壊滅的な姿と死に体になった二人の王だった。

爆発の後、鎮座していたデラス軍がこちらに向かって歩いてきた。
両軍ともに反撃の為立ち上がろうとするが爆発のダメージが大きく地面に伏せるしかなかった。
すると、そこにデラス軍の騎馬に乗ったメガネをかけた謎の男が来てこの惨状を見や否や笑顔で言い放った。
「やったぁ、実験は成功だぁ!」

「本当に成功するのかね?」
いぶかしげそうにメガネをかけた男にデラス共和国の宰相が話しかける。
男は不気味な笑顔を作りながら、
「問題ありませんよ。」と答えた。
「エステラート王国の国王はバルザス帝国の国王に不満を持っているそうですよ。」
「そこを刺激してやればエステラートは簡単に落ちると思いますよ。」
「バルザス帝国に関してはまぁ、国王がプライドや自尊心が山よりも高い人らしいのでエステラートの事を吹き込めば簡単に協力してくれますよ。」
「そうか、しかしおびき寄せたところで肝心の始末する方法はどうするつもりなのだ?」
「二つの軍を一度に壊滅させられる秘策お主にはあるとでも言うのか?」
「お任せください。丁度試してみたかった試作品と地形があるので...」
(二軍をおびき寄せたこの平原は一見、何の変哲もない場所に見えるかもしれないが...地下に天然のガス溜まりで出来ているようでしてね着火出来る物さえあれば簡単に爆弾に様変わりするというわけです。)
(そして、今回着火に使ったのはこちら....まだこの世界には登場するはずの無いダイナマイト...とは言えまだ試作の段階ですが)
(そして、地面に踏んだら着火する装置を組み込みさえすればあら不思議。)
(天然の地雷の完成というわけです。)
「しかし、凄い威力ですねぇ...」
爆発の威力は凄まじく爆心地である地面には大きなクレーターが出来、その周りにいた兵士や馬はまるで千切れた人形のように転がっていた。
生き残っているのは最後尾にいた数百名程度の兵士のみでその者たちも何が起きたのか分からずただ呆然としていた。

「大丈夫ですかぁ?」
メガネをかけた男がだるげに聞いた言葉で皆正気を取り戻したが戦力差は圧倒的だった。
エステラートとバルザスは両軍合わせても1000に満たない数に対してデラス軍は1万以上の兵を有している。

もう勝負は決したそう思った矢先、デラス軍とは反対の方角から何やら走ってくる集団の影が見えた。
デラス軍の兵士たちやメガネの男はその姿を見て動揺した。
逆にバルザスとエステラートの残存兵は驚きと安堵感が身を包んだ。

そこには数万は下らないバルザスとエステラートの連合軍が救援のために向かっていたのだから......




                                                  続く
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