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元カレの爆弾に激震走る
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「っ、え……?」
一瞬の間の後、虚を衝かれて聞き返す私の前で、彼がゆっくり足を解く。
「俺のことを心配してくれてるなら、全然構わないから安心しろ」
脩平は静かに繰り返し、身を前に屈めるようにしてスマホを見つめる。
「か、構わないって。そんな」
「けど、愛美の顔もわりと鮮明に映ってるな……。神尾さんがどういう風にこの写真を晒すつもりかわからないけど、愛美の名前を出されたら、そこは誤魔化しきれないか」
「っ……」
淡々と、抑揚のない声でそう言って、脩平がクッと眉を寄せた。
眉尻が上がるのを見て、私は言葉に詰まってしまう。
なにも言えない私に、彼は横目を向けてくる。
「一人で気に病まずに、俺に相談してほしかった。神尾さんに会いに行くんじゃなくて、俺に、先に」
脩平はそう言ってふっと表情を和らげた。
そして、私の顔を覗き込み、大きな手をポンと頭にのせてくる。
こんな時なのに、胸がきゅんとしてしまう。
「ご、ごめ……」
治まったはずの涙が再びジワッと込み上げてくる。
謝ろうとしたのに、私の声は飲まれてしまう。
涙で滲む視界の中で、脩平は目を細めて笑った。
「大丈夫。俺がなんとかするから、愛美はなにも心配しなくていい」
私の頭を一度強く撫でてから手を離し、脩平は明るくそう言って立ち上がった。
「なんとかって……」
脩平は私に背を向け、頭の上で両肘を抱えながら「んー」と大きく伸びをする。
私は戸惑いを隠しきれず、その背に向かって呟いた。
それを聞き拾った脩平が、そのままの格好で私を肩越しに振り返る。
「俺を誰だと思ってる? 社内一の広報マン・郡司脩平だぞ」
強気にバチッとウィンクを仕掛けてくる脩平に虚を衝かれ、私は涙を引っ込めて瞬きを繰り返した。
「たとえ、一時的に失う物があったとしても、すぐに全部取り戻せるだけの力はつけた。……愛美はなにも心配しなくていい。だから」
脩平は私から目を逸らし、ちょっと早口でそう続けた後、一度言葉を切ってくるっと私を振り返った。
私の前で背を屈め、目線を合わせて瞳の奥まで射貫いてくる。
「とにかく、俺を信じていて」
真っすぐな言葉と強くて優しい笑顔が、私の胸を強く強くときめかせる。
さっきまで、あんなにも不安で堪らなかったのに、彼の明るさと力強い言葉が、私の心を強くしてくれる。
「は、い」
ほんの少し頬の筋肉が強張っていたけれど、私は必死に笑みを浮かべた。
まだ相当ぎこちない笑顔だったはずなのに、脩平もどこかホッとしたように目尻を下げる。
「でも、残念。……食べ損ねた」
脩平はつっと私から目を逸らし、視線を横に流した。
一瞬にして拗ねた様子を見せる脩平に、私はきょとんとして小首を傾げる。
「愛美の手料理。夕食作って待ってるって言っただろ? あれ、楽しみにしてたんだ」
「あ」
そう言われて、今朝そんなことを約束したことを今更思い出した。
忍のメールを見てから、浮かれていた気分が急降下して、焦るばかりでそれどころじゃなくなってしまったけど……。
「そ、そのくらい、いつでも作りますから」
慌ててそう取り繕うと、脩平は上目遣いにじっとりとした目を私に向けた。
「今日がダメでも、明日でも週末でも、いつだって……」
なぜだか必死な気分で畳みかけると、脩平も強烈な目力を緩めて目を伏せた。
そして、ふっと口角を上げる。
「ついでに、新婚さんゴッコも希望」
「……え?」
一瞬、なにを言われたのかわからなくて、私が聞き返した声はひっくり返った。
「胸元ハート型のエプロン着けてさ。俺が玄関の鍵開けた音に反応して、お玉持ったまま玄関まで走ってくるの。で、『お帰りなさい、あなた! 先にお風呂に入りますか? 食事もすぐに仕度できますよ。あ、それとも……』」
「それ、今時の新婚さんは絶対やってないと思いますけど」
激しい妄想力を、早口でノリノリで披露する脩平を、私は尊敬半分と呆れ半分で遮り、目の下の辺りをヒクッと引き攣らせた。
それを見て、脩平もニヤリと笑う。
「このぐらいの妄想できないようじゃ、クリエイティブな仕事で第一線になんか立てねえよ」
「ごもっとも……」
どこまでも強気な脩平に、呆れより尊敬が上回った。
結局私は小さく吹き出してくすくす笑ってしまう。
脩平も目を細めて、「愛美」と呼びながら私の頭を胸に抱き寄せた。
彼の胸に頬を擦りつけた途端、私の胸はきゅんと疼く。
とても温かい想いがどこからともなく滲み出てきて、じんわりと全身に沁み渡っていく。
「脩平」
彼の胸の鼓動に直接語りかけたくて、私は強く顔を埋めた。
「私は脩平のアシスタントだから、なにがあっても、いつも支え続けるから」
私の声が届いたのか、彼がピクリと身を震わせたのが感じられた。
それでも構わず、私はその先の言葉を続ける。
「社内一の業績を誇る広報マンの郡司脩平に、この先ずっとついていく。憧れ続ける」
「……サンキュ、愛美」
小さなお礼の言葉が、私の耳には掠れて聞こえた。
彼の胸に手を置き、ほんの少し力を入れて、私は顔を上げた。
おずおずと目線を上げると、脩平が優しい目をして私を見下ろしていた。
「俺も、もっともっと頑張って、今以上の広報マンにならないとな。お前の目を、この先もずっと、俺だけに惹きつけておくために」
私としっかり目線を合わせて、彼は明るい笑顔を浮かべた。
その男らしく逞しい言葉に魅せられて、私は一度大きく頷いた。
大丈夫。
なにがあっても、脩平はきっとこうして堂々と胸を張って、素敵な広告を生み出し、世に送り続ける。
彼のすべての言動が、私にそう信じさせてくれる。
心ごと力強く抱きしめてくれる脩平に、私はずっとついていく。
アシスタントとして、彼の一番そばで支える日々が続くことに、私はなんの疑いも抱かなかった。
一瞬の間の後、虚を衝かれて聞き返す私の前で、彼がゆっくり足を解く。
「俺のことを心配してくれてるなら、全然構わないから安心しろ」
脩平は静かに繰り返し、身を前に屈めるようにしてスマホを見つめる。
「か、構わないって。そんな」
「けど、愛美の顔もわりと鮮明に映ってるな……。神尾さんがどういう風にこの写真を晒すつもりかわからないけど、愛美の名前を出されたら、そこは誤魔化しきれないか」
「っ……」
淡々と、抑揚のない声でそう言って、脩平がクッと眉を寄せた。
眉尻が上がるのを見て、私は言葉に詰まってしまう。
なにも言えない私に、彼は横目を向けてくる。
「一人で気に病まずに、俺に相談してほしかった。神尾さんに会いに行くんじゃなくて、俺に、先に」
脩平はそう言ってふっと表情を和らげた。
そして、私の顔を覗き込み、大きな手をポンと頭にのせてくる。
こんな時なのに、胸がきゅんとしてしまう。
「ご、ごめ……」
治まったはずの涙が再びジワッと込み上げてくる。
謝ろうとしたのに、私の声は飲まれてしまう。
涙で滲む視界の中で、脩平は目を細めて笑った。
「大丈夫。俺がなんとかするから、愛美はなにも心配しなくていい」
私の頭を一度強く撫でてから手を離し、脩平は明るくそう言って立ち上がった。
「なんとかって……」
脩平は私に背を向け、頭の上で両肘を抱えながら「んー」と大きく伸びをする。
私は戸惑いを隠しきれず、その背に向かって呟いた。
それを聞き拾った脩平が、そのままの格好で私を肩越しに振り返る。
「俺を誰だと思ってる? 社内一の広報マン・郡司脩平だぞ」
強気にバチッとウィンクを仕掛けてくる脩平に虚を衝かれ、私は涙を引っ込めて瞬きを繰り返した。
「たとえ、一時的に失う物があったとしても、すぐに全部取り戻せるだけの力はつけた。……愛美はなにも心配しなくていい。だから」
脩平は私から目を逸らし、ちょっと早口でそう続けた後、一度言葉を切ってくるっと私を振り返った。
私の前で背を屈め、目線を合わせて瞳の奥まで射貫いてくる。
「とにかく、俺を信じていて」
真っすぐな言葉と強くて優しい笑顔が、私の胸を強く強くときめかせる。
さっきまで、あんなにも不安で堪らなかったのに、彼の明るさと力強い言葉が、私の心を強くしてくれる。
「は、い」
ほんの少し頬の筋肉が強張っていたけれど、私は必死に笑みを浮かべた。
まだ相当ぎこちない笑顔だったはずなのに、脩平もどこかホッとしたように目尻を下げる。
「でも、残念。……食べ損ねた」
脩平はつっと私から目を逸らし、視線を横に流した。
一瞬にして拗ねた様子を見せる脩平に、私はきょとんとして小首を傾げる。
「愛美の手料理。夕食作って待ってるって言っただろ? あれ、楽しみにしてたんだ」
「あ」
そう言われて、今朝そんなことを約束したことを今更思い出した。
忍のメールを見てから、浮かれていた気分が急降下して、焦るばかりでそれどころじゃなくなってしまったけど……。
「そ、そのくらい、いつでも作りますから」
慌ててそう取り繕うと、脩平は上目遣いにじっとりとした目を私に向けた。
「今日がダメでも、明日でも週末でも、いつだって……」
なぜだか必死な気分で畳みかけると、脩平も強烈な目力を緩めて目を伏せた。
そして、ふっと口角を上げる。
「ついでに、新婚さんゴッコも希望」
「……え?」
一瞬、なにを言われたのかわからなくて、私が聞き返した声はひっくり返った。
「胸元ハート型のエプロン着けてさ。俺が玄関の鍵開けた音に反応して、お玉持ったまま玄関まで走ってくるの。で、『お帰りなさい、あなた! 先にお風呂に入りますか? 食事もすぐに仕度できますよ。あ、それとも……』」
「それ、今時の新婚さんは絶対やってないと思いますけど」
激しい妄想力を、早口でノリノリで披露する脩平を、私は尊敬半分と呆れ半分で遮り、目の下の辺りをヒクッと引き攣らせた。
それを見て、脩平もニヤリと笑う。
「このぐらいの妄想できないようじゃ、クリエイティブな仕事で第一線になんか立てねえよ」
「ごもっとも……」
どこまでも強気な脩平に、呆れより尊敬が上回った。
結局私は小さく吹き出してくすくす笑ってしまう。
脩平も目を細めて、「愛美」と呼びながら私の頭を胸に抱き寄せた。
彼の胸に頬を擦りつけた途端、私の胸はきゅんと疼く。
とても温かい想いがどこからともなく滲み出てきて、じんわりと全身に沁み渡っていく。
「脩平」
彼の胸の鼓動に直接語りかけたくて、私は強く顔を埋めた。
「私は脩平のアシスタントだから、なにがあっても、いつも支え続けるから」
私の声が届いたのか、彼がピクリと身を震わせたのが感じられた。
それでも構わず、私はその先の言葉を続ける。
「社内一の業績を誇る広報マンの郡司脩平に、この先ずっとついていく。憧れ続ける」
「……サンキュ、愛美」
小さなお礼の言葉が、私の耳には掠れて聞こえた。
彼の胸に手を置き、ほんの少し力を入れて、私は顔を上げた。
おずおずと目線を上げると、脩平が優しい目をして私を見下ろしていた。
「俺も、もっともっと頑張って、今以上の広報マンにならないとな。お前の目を、この先もずっと、俺だけに惹きつけておくために」
私としっかり目線を合わせて、彼は明るい笑顔を浮かべた。
その男らしく逞しい言葉に魅せられて、私は一度大きく頷いた。
大丈夫。
なにがあっても、脩平はきっとこうして堂々と胸を張って、素敵な広告を生み出し、世に送り続ける。
彼のすべての言動が、私にそう信じさせてくれる。
心ごと力強く抱きしめてくれる脩平に、私はずっとついていく。
アシスタントとして、彼の一番そばで支える日々が続くことに、私はなんの疑いも抱かなかった。
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