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忍者とカタギ~男どうしの濃厚なドロドロセックス~

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 パキュン!と、何かが弾けたような不思議な音がした。音の発生源であると思われる右を見ると、黒づくめの男がペンのようなものを、僕の左の方に向かって構えていた。その左の方を見ると、Tシャツにハーフパンツ姿の黒髪の少年が黒づくめの男を静かに睨んでいる。
 更にパキュン、パキュン!音の度に少年は身をひねり、何かを躱すような動きをした。

「なにこれ」

 パキュン!の音に怯まずに少年は低い姿勢で黒づくめに信じられないスピードで近づくと、パキュン!寸前で体操選手のように高く飛び、空中で身を捻ると着地の時点で黒づくめの背後をとり、目に見えぬ速さで首に手を回し、たやすくひねった。
 この間、一秒あったか。
 こんな道端、目の前で殺人が行われたのであるが、びっくりしすぎて声も出ない。
 少年は無言で倒れた黒づくめを夏草の生い茂る空き地に引きずりこんで、恐らく証拠隠滅をはかっている。
 黒づくめの死体は草に覆われてすっかり見えなくなった。
 少年は黒づくめが持っていたペンを持ち、ためつながめつし、くるくると器用にペン回しをしながらこちらに向かってくる。
 僕ははっと思い至った。
 僕は殺人の目撃者である。ふつうに考えたら犯人に消されるのでは…?
 あっ、逃げなきゃ。と、思ったが、どっちに?走るってどうやるんだっけ?と頭が混乱して、急には体が動かなかった。
 そうこうしているうちに少年が目の前に立っていた。
 目線は少しだけ下だ。切れ長の大きな目、深い黒瞳が僕を見上げてくる。

「おい」
「……はい…」
「人に言うなよ」
「え……」

 僕が呆気に取られていると、じゃあな、と言って少年は背後に歩いて去って行こうとする。
 僕は追いかけた。

「なんだよ」
「僕のこと、こ、殺さないの?」

 ああ、余計なことを。だが、少年は意外にも気さくに応じた。

一般人カタギは殺せない」
「へ、へえ~…そのペンは…何?」
「ペンとしても使えるが銃だ。殺傷能力は低いが、毒が仕掛けられている恐れもあるし」
「なんか…すごい体術だったよね…空手かなんか?」
「いや、忍術だ」
「に……」
「……」
「忍術って言った??つまり、忍者ってこと?」
「そうだ」

 ええー!ええー!ええー!と疑念と驚愕の混じった叫びが僕の頭をぐるぐる駆け回った。

「うちに来るか?」

 と、唐突に言われる。忍者の隠れ家か。

「はあ、じゃあ…」

 と僕は答えて、少年について行った。
 数分歩いてたどりついたのは、めちゃくちゃでかい豪邸だった。平凡な建売の十倍はあるんじゃないか。もっとか?
 ここが家?と驚いていると、少年はすたすた正門を通り過ぎた。
 あ、違うんだ。そうだよな。と思っていると、トッ…と地面を離れ、街路樹を蹴って、塀を飛び越えた。

「ええ」
「ホラ来い」
「いや、無理なんすけど」
「仕方がないな」

 少年は塀の向こう側で呟くと、鎖が塀を飛び越えて垂らされた。
 それでも塀を越えるのは大変だったが、ひっぱりあげてもらって何とか登る。
 少年は建物の裏にまわって行った。

「あそこだ」

 指さした先、建物の裏手の一番上の方。屋根裏だろうか。そのあたりの壁がくりぬかれ、内側から素材の違う板で目隠ししてある。
 よく、バレないな。

 少年はまたしても、トッ、トッ、と塀や植えられている木なんかを蹴って、あっという間にそこまで辿り着き、スッと中へ入った。パルクールみたい。手招きをされるが、無理に決まっている。

「だよな。こういう急な来客を見越して実はこんなものをこさえていた」

 ぶらん、と太い縄が垂らされる。縄には結び目がいくつもついていて瘤になっている。

「アスレチックじゃん。せめて縄梯子とかさあ~」

 ぶつぶつ言いながら、なんとか縄を伝っていく。
 やっとの思いでくりぬかれた穴に入り込むと、意外に明るい部屋があった。屋根裏なんだけど、天井は高い。いや、低いところもある。斜めだ。
 電気がついている。蛍光灯だ。勝手にひっぱって来ているのだろう。
 ものは少ない。布団もない。行李が一つと風呂敷包が一つあるだけ。

「さて、ここまで着いてきたということは何か聞きたいことがあるんだろう」
「おっ…」

 そうそう、聞きたいことはいろいろある。

「さっき、戦ってた黒い服のやつはなんなの?敵の忍者??」
「そうだ。お互いヤー公に雇われていてな。代理戦争をやっている。別の流派のやつだ」
「へー、やくざに雇われてるんだ」
「昔は忍者は武家に雇われていた。戦時中は軍に属していた。戦後はもっぱらやくざのパシリだ。公安に雇われている流派もあるが、うちはコネもない三流だからな」
「へえええ!あ、名前聞いていい?」
「人に名前を聞くときは自分から名乗れ」

 それもそうだ。

「僕は、有村佳一ありむらかいち
「長男か」
「そう」
「俺は風祭空也かざまつりくうや
「…かっこいい名前だね」
「そうか?」

 僕には忍者と聞いて、ダメ元でどうしても教えてもらいたいことがあった。

「あのーそれでですねえ…」
「何?そうだ。マカロン食う?」
「はあ、いただきます」

 突然のマカロン。これは豪邸の主から盗んだものだろう。

「あのですね、もぐもぐ…美味いなあ…忍術の中に房事術ぼうじじゅつというのは、実際あるんでしょうか」
「あるよ」
「マジすか…」

 僕は以前に漫画で、くノ一がハニートラップを仕掛けて敵をほふろうとし、相手の房事術で気持ちよくなってしまい返り討ちに遭うというシーンを見たことがあったのだ。

「出来ましたら、私めにそれをご教授願いたく……!!」
「ああ、いいよ」
「えっ」

 そんな簡単に。土下座しようと思っていた僕は拍子抜けした。
 先週、予備校で女子高生から告白され、人生初の彼女が出来た浪人生の僕である。彼女との初エッチを迎えるにあたり、何か武器が欲しい。そう思っていた。

「し、師匠ー!!!!」
「ふん。任せろ」

 しかし、房事術の講義は思っていたものと違っていた。
 それから十分後、僕は空也の下で女の子のように喘いでいた。

「あん♡あふう…♡いやん…♡あん…♡あん…♡ああ~…ん…♡」
「お前、才能あるな。俺も仕込まれたが、よくなるまで三回ぐらいかかった」
「ああん…っ♡やあん…♡じんじんするぅ…♡あ…っ♡や…っ♡」
「子供の頃は修行だと言ってずいぶんやられまくった。悪くはなかったけど」

 僕は空也の指をアナルに入れられ、初めて前立腺をマッサージされながら、亀頭を愛撫されていた。たまに乳首も愛撫されたり、舐められたりして、快感が全身を支配していく。気持ちよくなることしか考えられない。
 竿は扱かれないで、前立腺と亀頭だけでこんなに気持ちいいなんて…!

「あああ……♡んん…んん……っ♡やあ~…っ♡こんな…はずじゃ…っ!あっ♡」
「俺がなんでお前をうちに招いたと思ってるんだ」
「あん…♡な…んで…!あぁん…っ♡」
「溜まってたから、そろそろ処理したかったんだ。飛んで火にいる夏の虫。俺だってせっかくならかわいい相手の方がいいし。忍者は自己処理を好まない。セックスで気を循環させることによって、気力体力を回復させることに繋がるからな」
「あん♡よく、わかんない…ああ…んんっ♡」
「別にわからなくていい。ああ、挿れるぞ」
「え…!あ……っ♡」

 指が引き抜かれ、アナルにぬるっとして質量のある何かが押し当てられる。それが気持ちよくて、僕は知らず知らず腰を揺らした。
 そのアナルに擦りつけられているものが、中に挿入ってくる。圧迫感よりも、物足りない場所を埋めてもらえる快感が勝った。

「ああ~……♡」
「ああ、いい…!佳一もいいか?」
「いい…っ♡こんなの…初めて…っ♡あう…♡あん…♡」
「背中痛そうだ。D区のアジトにすればよかった…。ここ、座布団ひとつないからな。ほら」

 僕は促されて、上半身を起こして空也の首に手を回した。胡坐をかいた空也の上に乗る形になる。
 空也は片手を後ろについて、もう片方の手で僕のペニスの亀頭だけを愛撫する。

「ああっ♡」

 深く結合する快感。僕はのけぞって喜んだ。
 空也が腰を突き上げてきて、中を擦られる。前立腺も刺激されて、気持ちよさに僕の腰も自然に動いた。

「はっ、はっ、はっ…ああ…っ♡あっ…♡あっ…♡あっ…♡はあ…っ♡」
「ああ、はあ…いい……いいぞ……佳一……いい……」

 じっとりと、汗をかいてくる。
 空也が僕を突き上げ、それに合わせてより深い結合、強い圧迫を求めて僕も体を揺らす。
 どのくらいそうしていただろうか。この上なく気持ちよさそうに空也が呻いた。

「ああ…あ…っ!佳一、出すぞ…う……」
「はっ、はっ……あんっ♡や…っああん…♡もっと…」

 空也が先に果ててしまう事を恐れた僕はかむりを振ったが、空也は腰の動きをいったん止めて、一瞬全身を震わせて僕の中で射精した。それがわかるくらいたっぷりと。

「あ…はあ…はあ…いい……」
「あ…あ……♡」

 心配は杞憂に終わった。空也の精力は底なしだった。すぐに腰の動きを再開させて、激しく突き上げて僕を快感でさいなみ、アナルと亀頭への刺激だけで追い詰めてきた。

「あっ♡あっ♡ああ…っ♡イクッイクッ…♡イキそう…っ♡」
「ああ…はあ……」

 深い快感が波のように押し寄せてきて、僕は絶頂を感じた。肉体の奥の奥からこみあげてくる、たとえようもないほど強く深い気持ちよさ。びくびくと痙攣が起こり、射精なしで僕はオーガズムに達した。

「あっ♡い…♡いい…っ♡ううん…♡ああ……っ♡」

 怖くなるほど気持ちいい。僕は空也にしがみついて、永く永く、たっぷりと快感を堪能した。

「は…あ…♡す、すごく…よ、よ、よかった…♡」

 強い快感はいったんは退いたが、体の中にくすぶっている感じがする。もっとセックスしたい…。
 空也に乳首をペロ、と舐められて、気持ちよさがすぐに甦ってくる。

「ああん♡はあ…ん♡」

 繋がったまま、空也は立ち上がった。なんという膂力りょりょく。僕の方が体重あると思うんだけど。
 天井の高い場所に移動して、駅弁のスタイルで揺さぶられる。

「あん…っ♡あん…っ♡ああ…っ♡いい…っ♡あん…っ♡」
「はあ、はあ……ああ、いい…はあ…」
「ん…あ…っ♡あ…っ♡あ……っ♡」

 僕はまたイッた。快感を感じて…感じて…、射精はしないで、ただ心地よさだけを享受する。
 次は犬の姿勢をとらされる。空也が行李から引っ張り出してきたトレーナーを膝の下に敷いて、腰をつかまれて激しく突かれる。それがうれしい。
 揺さぶられるだけじゃなく、長いストロークで引き抜かれ、突き刺されを繰り返されると、前立腺への刺激が強く、またすぐに絶頂に達してしまった。

「あ…あ……っ♡も…へん…なりそ…♡あん…っ♡いい……っ♡」
「ああ…う……っ!佳一……いい…っ」

 空也が少し遅れて射精する。気持ちよさそうな様子に僕はうっとりした。
 気持ちいい…空也とのセックスは気持ちいい…。
 数十秒だけ休憩して、また体位を変える。空也が仰向けに寝そべり、僕がまたがって騎乗位の姿勢をとる。ゆっくり腰を落としていって、まだギンギンに勃起しているペニスを受け入れていく。入ってくる感触がいやらしく、気持ちいい。

「はあ…ん♡あ……♡あ……っ♡背中……痛くないの?んっ…♡」
「はあ…はあ…俺は平気だ」

 僕は欲望のままに、自分が気持ちいい体勢と動き方を探す。空也の胸に手をついて、前後に動かしたり、こねるようにしたり、和式の便器にまたがるようなかっこうで上下に動いたり。
 どんなかたちでも、ただただ気持ちいい。僕も空也もおこりにかかったように震えて、せわしなく呼吸して、見つめ合って、お互いがお互いに激しく欲情しているのを感じた。

「はあ…あ…っ♡あ…♡」

 後ろに手をつき、それを支えに腰を上下させる。これがすごく具合がよかった。それを続ける。

「あ、ああん♡はあ…♡あん…♡いい…っ♡あん…っ♡あん…っ♡」
「はあ…ああ……いい…っ!ああ…」

 下から空也も突き上げてくれる。深い結合が何度も繰り返され、前立腺が何度も強く圧迫される。
 求めて、求められて、挿入され、絞めつけて、アナルとペニスを擦り合うのを繰り返して、僕はまたオーガズムに近付いていく。

「あ…♡あ…♡いい…っ♡また、気持ちよくなって…!あ…っ♡ああ……っ♡イッ…イクッ……♡」

 また、強烈な快感がどことも知れぬ場所から湧き上がってくる。
 全身を満たす激しく深い性の充足。

「あ…♡あ…♡ああん…♡いい……っ♡ああん……♡」

 僕はのけぞり、全身を痙攣させて、心地よく底知れないオーガズムを甘受した。

「ん…♡んんっ♡んん……っ♡ああ…ん♡はあん…♡ああ……」

 それから更に、壁に手を突いた格好で、空也に後ろから犯され、僕も空也も達して、更にまた対面座位で交わって、何度も何度も愛し合って、解放されたのは夜も更け九時になろうとしたころだった。
 出会ったのが、確か午後四時ごろ。四時間以上はまぐわい続けたことになる。
 心地よい疲労感はあったが、不思議とへばってはいなかった。

「ライン交換して」

 空也がスマホを差し出してきた。

「忍者もラインするんだ…」
「そういうのいいから」

 僕は空也とアドレスを交換した。

「これからは俺が連絡したら、会って」
「わ、わかった…じゃ、じゃあ…」

 縄を伝って下に降り、そうっと闇夜に紛れて豪邸の正面側に回り、塀をどうやって越えようと思案していると、正門からアルファードが入って来た。ばれないように注意しながら、車が去った後、ぎりぎりで門から出る。
 僕は帰途に就いた。
 とんでもない一日だった。
 ……こんなはずじゃなかったんだけど。
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